ー革命の刻ー 風は再び動き出す
「最後の試合までもつれたが、Aクラスにまで上がった。素直に、実力がついてきたってことやろな」
春を待つ静かなグラウンド。乃村克也監督は、ベンチに腰かけながら目を細めた。
すべての記録と数字は、まだ昨季のままホワイトボードに残されている。
だが彼の視線の先には、確かに「次の景色」が見えていた。
新城剛志――球団の顔が、FA権を行使せずに残留を選んだ。
「もう1年、このチームで闘う」とだけ言い残して。
矢乃輝弘は守備の要として成長し、村瀬浩と今丘誠の二遊間もようやく安定してきた。
センターラインが固まってきたのは、大きな進歩だった。
壷井智哉の怪我が軽傷で済んだのは、幸運だった。
だが、新城が来季こそメジャー挑戦に踏み切るのは、ほぼ確実。
ならば――その穴を埋める、俊足の外野手は急務だ。
長打力不足も、少しずつ解消されつつある。
昨シーズンより加入した打点王のタイトル経験者でもある比呂澤克実が、檜山進次郎に刺激を与え、4番の座を巡って火花を散らす。
ピッチャー陣も、ようやく形になってきた。
飯川慶を筆頭に、富士川、小久保と若手が台頭。
彼らの台頭が、矢吹恵一をはじめとするベテラン陣の体力を温存させたのも、大きな収穫だった。
ただ――それでも足りない。
「矢吹、飯川、あともう1枚、軸になるエースがほしい」
そして、富士川と小久保を支える、リリーフの“柱”。
勝ちパターンの確立が、日本一へのラストピースとなる。
だから、今季もやはり最優先は投手陣。
投げて勝てる。守って逃げ切れる。そんな野球を目指して。
2001年。新たな世紀が幕を開ける。
復活を期す関西ジャガーズは、ドラフトで2人の即戦力ルーキーと1人の外国人投手を獲得する。
左腕の技巧派・濃見篤史。
俊足の外野手・紅星憲弘。
そして、元メジャーリーガーのサイドスロー右腕、ジェイムス・ジャンセン、通称 JJ。
チームは次第に、「機動力野球」と「守り勝つ野球」にシフトしていく。




