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そして、物語は続いていく【高校野球編・完結】
試合終了後、歓喜の輪から少し離れたベンチ裏。
俺は誰にも気づかれないように、ひとり腰を下ろしていた。
壁にもたれ、帽子を目深に被る。
汗と土のにおい。呼吸の音だけが、静かに響く。
2度目の人生をやり直して、8年間。
長かったのか、短かったのかも分からない。
あの頃の自分が、ここまで届くと信じていたのか。
あるいは――届いてしまった今、もう戻れない場所を見ている気がした。
(終わったんやな)
そう呟いても、返事はない。
けれど、どこか胸の奥で、何かが静かに手を振っている気がした。
振り返らずに立ち上がる。
声のする方へ、歓喜の輪の中心へ、ゆっくりと歩き出す。
何かを終わらせた背中には、確かに、新しい何かが宿っていた。




