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最後の夏、終わりと始まり

大阪大会の決勝から数日後。

蝉の声が遠ざかり、町には少しだけ、静けさが戻っていた。


俺たちは、甲子園へ向けての準備を始めていたけど――

どこか、まだあの試合の余韻が抜けきっていない。


学校のグラウンドで、一人黙々と素振りをしていたとき。

ふと、ベンチに置かれた新聞が目に入った。


《上方第一、劇的サヨナラで甲子園へ!》

《“大阪最強”塔䕃との死闘を制す》

見出しと一緒に、あの瞬間の写真。

打った直後の俺と、崩れ落ちる窪田の姿が並んでいた。


(夢ってのは、誰かの涙の上にあるんだな……)


あのとき、俺が打てなければ泣いていたのは、きっと俺たちだった。


勝つことは、嬉しい。

でも、勝つということは、誰かの“終わり”でもある。


だから、俺は誓ったんだ。


絶対に、あの一打を無駄にしないと。

絶対に、甲子園でも全力でやり切ると。


それが――あの日、窪田が流した涙への、俺なりの返し方だから。


グラウンドに、清瀬とソウタがやってくる。


「まだ振ってんのかよ。休めって言ったろ」

「お前が壊れたら、打線終わるぞー!」


そう言いながら、2人とも笑っていた。

だけど、その目はもう次を見ている。


甲子園。

全国の強豪が集う場所。

ここまで来たからには、もう“挑戦者”じゃない。


俺たちは、もう“本気で優勝を狙う側”だ。


バットを握り直す。

汗が滴る。

でも、気持ちは不思議と軽い。


「さぁ、もう一度いくか。――夢の続きを見に行こうぜ」


夏は、まだ終わっていない。


あの一振りを超える一打を。

あの歓声を超える瞬間を。

そして、あの日の涙を超える景色を――


俺たちは、掴みに行く。


【大阪大会・村瀬 翔平の成績】


打率:.571(28打数16安打)

本塁打:10本(全7試合で本塁打)

打点:25


準々決勝までに8本塁打、

準決勝で逆転3ラン、

決勝でサヨナラホームラン。


大阪中が、そのバットに震えた。


今、最強の“主役”が、甲子園の舞台へ乗り込む。

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