打ち砕け、限界
高校野球・夏の大阪大会が、ついに幕を開けた。
全国屈指の激戦区――“魔境”と称されるこのトーナメントで、俺たちの最後の夏が始まった。
目指すのはただ一つ。
甲子園出場、そして日本一。
そのために、俺はバットにすべてを懸けると決めていた。
初戦――第1打席。
インハイのストレートを完璧に捉えた打球は、高々と舞い上がりレフトスタンド中段へ。
「うおおっ!」
「初打席初ホームランやぞ!」
いきなりの先制アーチ。そこから俺の快進撃が始まった。
2回戦では、センターへ一直線の弾道と、逆方向へのライナー弾で2本塁打。
どちらも、バットから離れた瞬間に確信した一撃だった。
3回戦の相手は、春の大阪ベスト4に入った強豪・桜ヶ丘。
左腕エースのキレのあるスライダーに苦しめられたが、6回表、我慢して待った内角の甘いカーブを振り抜いた。
打球は低い弾道のままライトスタンドに突き刺さった。
4回戦では、変則フォームの右サイドハンドから繰り出されるスプリットを見極め、フルカウントから左中間スタンドへ。
ここでも相手バッテリーは四球を挟みながら慎重に攻めてきたが、一球のミスが命取りになった。
準々決勝の相手は、今年急成長を遂げた大体附属。
投手力・守備力に優れた堅実なチームだったが、試合終盤、1点リードの場面で回ってきた打席。
内角高めのストレートをフルスイングすると、打球は豪快な放物線を描いてライトポール際へ。
スリーラン。勝負あり。
この時点で、5試合でホームラン8本、打率.600。
打球速度、飛距離、弾道――どれも高校生の枠を超えていた。
スタンドのスカウトが色めき立ち、相手ベンチが警戒心をむき出しにしてくる。
それでも俺は、“打つべき球”を確実に仕留めてきた。
小柄な巧打者――そう言われていた俺はもういない。
3番に座る今の俺は、誰よりも“決定的な場面”を打ち抜くスラッガーだ。
だが――ここからが、本当の勝負。
準決勝、そして決勝。
この3年間、乗り越えられなかった“二つの壁”が、最後の前に立ちはだかる。
次なる相手は、あの男が待つBL学園。
覚悟の先にしか、甲子園はない。




