世代最強投手
◆準々決勝 横浜学園vs BL学園(大阪1位)
高校球界を代表する2人の怪物――
神重聡と、松永大輔。
世代最強投手とも呼ばれる2人の直接対決は、この準々決勝でついに実現した。
神重はBL学園のエース。最速153kmの伸びる直球と鋭いフォークを武器に、すでにプロ数球団がドラフト1位候補に挙げる逸材だ。
試合は序盤から投手戦。
神重の前に横浜打線は沈黙し、松永もBLの強力打線・中西や平井を切って捨てる投球で応戦する。
5回、一転して試合が動き始める。
まず、BLが平井のタイムリーで先制。
だが6回、松永自らのバットで同点打を放ち、試合は再び振り出しに戻る。
そして9回を終えて 1-1。
延長に突入した両エースは、まるで魂を削るように投げ続けた。
神重はフォーク、松永は160kmに迫るストレート――
打者は打ち崩せず、時間だけが進む。
延長17回、ついに均衡が崩れる。
横浜の4番・石堂が神重の150kmストレートを捉え、左中間を破る二塁打。
その直後、送りバントと犠牲フライでついに勝ち越し。
神重は力尽き、ベンチで崩れるように倒れた。
試合終了。横浜学園 2 - 1 BL学園(延長17回)
神重聡の執念に満ちた投球が、最後に静かに甲子園の空に溶けていった。
◆準決勝 横浜学園vs 仙台鳴翔(宮城)
準決勝では、松永を温存。
登板した控え左腕・冨田とサイドスローの安東が粘り強く投げ、5-3で勝利。
「松永に頼らずとも勝てる」
横浜学園の選手層の厚さが浮き彫りになった一戦だった。
◆決勝戦 横浜学園vs 大阪塔䕃(大阪3位)
窪田康友との怪物対決
いよいよ決勝戦。
相手は、窪田康友(大阪塔䕃)――
右の本格派、最速151kmの直球に、多彩な変化球を織り交ぜ、コーナーを突く正確無比な制球力を誇る。
プロのスカウトたちは、スタンドで固唾を飲んだ。
「今大会、最も完成度の高い投手は窪田」
そう囁かれるほどの実力者だった。
そして――試合は、決勝戦にふさわしい、真っ向勝負の投手戦となる。
【1回表】
横浜学園、先頭打者の宮路が粘って四球。
続く2番が送りバントで進塁。
ここで3番・高瀬のレフト前タイムリー!
横浜学園が、試合開始早々に1点をもぎ取る。
「窪田が初回に失点……?」
甲子園全体がざわめいた。
しかしその後、窪田は完全に立ち直る。
変化球を低めに集め、横浜打線に追加点を許さない。
【2回以降】
松永は、今大会で最もギアを上げてきた。
常時155km台。
勝負所では、160kmの剛球がキャッチャーのミットを弾くような音を響かせる。
5回、窪田が自らのツーベースでチャンスを作るも、松永は4番を160kmで空振り三振に仕留める。
唸るストレート。打者は反応すらできない。
「もはや高校生の球じゃない……」
スタンドのプロスカウトの一人が思わず漏らす。
【9回裏】
スコアは1-0のまま。
マウンドには松永大輔。
最後の打者は、塔䕃の4番・北園。
カウント2-2――
松永は首を横に振り、キャッチャーに合図。
選んだのは、160kmのど真ん中ストレート。
「来いよ……!」
投げた瞬間、球場が静まり返った。
バットが空を切る。
――空振り三振。
試合終了。
横浜学園、1-0で優勝。
◆大会総括
大会MVPは、当然のように松永大輔。
防御率0.33、奪三振率13.8、最速160km。
圧巻の投球で「世代最強」の称号を確固たるものにした。
試合後、窪田は松永に歩み寄り、言った。
「俺も、ここから上がる。夏、また会おうや」
松永はただ、少しだけ笑って頷いた。
世代最強投手・松永大輔。
その名は、春の甲子園に深く刻まれた。




