近畿大会・準決勝
vs 大阪塔䕃高校
決勝進出がかかった一戦。
だが相手は、去年から何度も跳ね返されてきた――
大阪塔䕃高校。その中心にいるのが、エース・**窪田康友**だった。
180cmを超える長身から投げ下ろされるストレートは、最速151km/h。
それにスライダー、カットボール、フォーク、シュート、チェンジアップ――
どれもが精密に、コーナーを突いてくる。
「うちの誰が相手でも、ゾーンで勝負できるんや」
試合前、塔䕃の監督がそう話していた。
絶対的な信頼を受ける、その本格派右腕。
その日、彼の球はいつも以上にキレていた。
■1回裏:静かな立ち上がり
先攻・上方第一は三者凡退。
カイトのバットが空を切り、水科の打球はセカンド正面。
俺の打席も、スライダーを引っかけてショートゴロ。
「全部、低めに集められてるな……」
水科がつぶやくと、ベンチも静かになった。
その裏、清瀬は落ち着いた立ち上がりで0点に抑える。
が、どこか――ピンと張り詰めた空気が漂っていた。
■3回裏:先制は塔䕃
ヒットとバントで1アウト2塁の場面。
2番打者が放った打球は、サードの頭上をライナーで越えていく。
ユウマが跳びつくも届かず。
「……クソッ」
センター前へのタイムリーで、塔䕃が1-0で先制。
だが清瀬も崩れず、続く4番・南條をフォークで空振り三振に仕留める。
最小失点で踏みとどまった。
■5回表:1点をもぎ取る
先頭のナオキが、粘って四球。
ユウマのバントが絶妙で、無死2塁。
そして清瀬の打席――フルカウント。
窪田のストレートを強振すると、打球はライト前へ!
ナオキが一気に生還し、同点・1-1。
「ナイスバッティン!!」
ベンチが盛り上がるが、窪田はまったく表情を崩さない。
直後、カイト、水科、俺が立て続けに凡退。
ここでもまた、窪田の制球力が上を行った。
■7回裏:1球のミス
1-1で迎えた終盤。
2アウトから、塔䕃の5番打者がフルスイング。
高めに浮いたストレートを完璧に捉え、打球はレフトスタンドに消えた。
2-1。勝ち越し。
「痛恨やったな……」
清瀬がグラブをぎゅっと握る。
でも、あの1球以外、完璧だった。それが野球の厳しさだった。
■9回表:最後の攻撃
2-1で迎えた最終回。
先頭・リキヤがライト前ヒットで出塁。
代走・佐野が送りバントで、1アウト2塁。
ベンチ全体が祈る中――
打席には、リュウスケ。
「……打て、リュウスケ」
フルカウントから――
窪田のカットボールを引っ張った打球は、一塁線へ。
が、ファーストの横っ飛び!!
「抜けない……かよ……!」
強烈な打球だった。
でも――塔䕃の守備は、隙を見せなかった。
2アウト2塁。
最後の打者は、ソウタ。
打った。詰まりながらもセンター方向へフライ。
少し伸びた。でも――伸びきらない。
グラブに収まった瞬間、試合終了のコールが響いた。
上方第一 1 - 2 大阪塔䕃
敗戦――それでも、全力を出し切った結果だった。
■試合後
ベンチに戻ると、水科がつぶやいた。
「勝ちたかったな。あと一本……」
カイトが、泥だらけのユニフォームで静かに頷いた。
「でも、弱くなかった。今日はそう思えた」
窪田はマウンドの上から、帽子を取ってこちらを見た。
目は合わなかったけれど――その所作は、確かに「敬意」だった。
センバツ出場は、この時点でほぼ確実だった。けれど、まだ何かが足りなかった。
勝てなかった悔しさ。
あと一歩の届かなさ。
それは、冬の練習を熱くする燃料になる。
「まだ足りない。でも――必ず、届く」
それが、この試合の答えだった。




