突破口
大阪ベスト4――
あと一歩が、どうしても届かなかった。
春も、秋も。自分たちはいつもその壁に跳ね返されてきた。
その理由は、わかっている。
まず一つは、チームの主力を担う選手たちが、まだ“成長の途中”だったこと。
水科、カイト、ソウタ――彼らは1年の頃から試合に出ていた。技術的なポテンシャルは高かったが、身体が追いついていなかった。
特に2年生の春までは、フィジカルの差で相手に押し負ける場面が少なくなかった。
しかし今――
最上級生として迎えるこの秋には、全員が一回り大きくなり、体がしっかりと仕上がってきた。
夏の間に徹底して取り組んだウェイトトレーニングと体幹強化が、確かな結果として現れ始めている。
スイングスピード、投球のキレ、打球の質――どれも昨年とは明らかに違った。
「やっと、“勝負できる体”になってきたな」
トレーナーの佐久間さんが、そう評価してくれた。
次に大きかったのは、投手陣の層の問題だ。
これまでは、技巧派エースの清瀬と、右の本格派・リュウスケの2人に大きく依存していた。
リュウスケは元々中学時代に全国大会出場も経験した実力派で、上背とスピードがあり、エース格として申し分ない存在だったが、逆に言えば彼が崩れたときの選択肢が乏しかった。
そこに今、新しい風が吹いている。
2年の左腕、**若月**が急成長してきた。
球速はすでに130キロ後半に達し、クロスファイアの角度とスライダーのキレは上級生をも翻弄している。
先日の練習試合では、選抜ベスト8の熊本文徳高校を相手に、5回無失点。左打者から連続三振を奪う場面もあった。
加えて、もう一人。
サイドスローの**大迫**が、右のワンポイントとして頭角を現してきた。
見た目は地味だが、リリースが見づらく、右打者へのスライダーとツーシームのコンビネーションが光る。
大迫の登板で、試合の流れが変わることが増えてきている。
投手陣の層が厚くなったことで、試合終盤でも余裕を持って継投策を取れるようになった。これはチームにとって大きな進歩だった。
さらに、チーム全体にとって重要だったのは――
「負けを知っている」という経験値だと思う。
これまでの敗戦。その一つひとつの悔しさを胸に、選手たちは自分を律してきた。
練習の質も変わった。
ただ体を動かすのではなく、プレーの一つひとつに「意図」を持つようになった。
打席では狙い球を明確にし、守備では配球に応じたポジショニングを取る。
試合形式のノックやシート打撃では、緊張感が自然と生まれるようになってきている。
監督も言っていた。
「完成度ではまだ届かない部分がある。でも、自分の頭で考え、勝つために工夫できるチームは、そう多くない」
その言葉の通りだった。
特に印象的だったのは、直前に行われた練習試合だ。
相手は長崎の海星高校。ここ数年、甲子園でもベスト8入りするような実力校で、徹底した守備とカット打ちを武器にするいやらしいチームだった。
結果は、5対3の勝利。
点差以上に、中身の濃い試合だった。
継投がハマり、バントやエンドランも狙い通り決まった。守備でも1つのミスもなかった。
「強豪校相手にも、うちらの野球が通用する」
チーム全体に、そんな実感が湧いた試合だった。
今なら言える。
ようやく、勝てる準備が整った。
「あと一歩」を越えるための力が、少しずつ、だが確実に揃ってきている。
それでも――慢心はない。
BL学園、塔䕃、全国の強豪たち。
まだ越えるべき壁は多い。
けれど、その先に――甲子園がある。
「次こそ、必ず超える」
そう心に誓いながら、俺たちは白球を追い続けている。




