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あと一歩、その先へ

東海鳴門との練習試合に勝利したあの日――

あれを境に、俺たちのチームは確実に変わり始めた。


あの勝利が、全員の中に「やればできる」「全国にも通用する」という確信を芽生えさせた。


そこから、夏の大阪大会に向けて、練習の温度が一段上がった。


初戦、圧勝。二回戦、粘って逆転勝ち。

気づけばベスト8。


あと一勝で“強豪校との本気の勝負”というところまで来ていた。


だが、相手は――BL(Beautiful Life)学園。


名門中の名門。甲子園出場の常連で、過去にはプロに多数のOBを送り出している。

プロ予備軍とも言える選手層の厚さと、鍛え上げられた「勝ち方」を兼ね備えたチームだった。


0対5――完敗だった。


強豪と呼ばれる相手の“空気”にのまれ、打席でも、守備でも、走塁でも、自分たちの野球が出せなかった。


試合終了の瞬間、スコアボードを見つめていた三宅キャプテンが、ベンチ裏で静かに言った。


「……あとは、頼んだぞ」


その声は、不思議なくらい穏やかだった。


「ほんまに、強くなったよな、お前ら。今日の悔しさを、忘れんなよ」


涙は見せなかった。

でも、全員が分かってた。この人の背中が、どれだけデカかったか。


「三宅キャプテン、俺ら……絶対、甲子園行きます」


「おう。楽しみにしとる」


そう言って笑った三宅の姿は、俺の記憶にずっと焼きついてる。



三年生が引退して、新たなスタートを切った。今度は俺たちが、チームの真ん中に立つ番だった。


秋の大阪大会――チームは着実に力をつけ、ベスト4進出。

冬の間にはトレーニングを強化し、個々のスキルもぐっと伸びた。


勝てるようになってきた。

“強豪”と呼ばれるチームとも、互角以上に戦える試合が増えてきた。


だが――壁はまだ残っていた。


大阪塔䕃。

近年、勉強と野球の両立で急成長を遂げた進学校。

トレンドのデータ野球や理論に強く、選手の野球IQが異常に高い。

ー――そしてその大阪塔䕃には、1回目の人生で上方第一高校を春夏連続で甲子園に導いた男**窪田康友くぼた・やすとも**がいた。


秋の準決勝。塔䕃の緻密な投手リレーと、徹底された配球に打線が封じ込まれ、2対6で敗北。

窪田は7回から登板し、俺たちは誰一人塁に出ることが出来なかった。



冬――基礎から鍛え直した。打撃も守備も、一つひとつ積み上げた。

チームは明らかに変わっていた。誰もが、強くなっていた。


そして迎えた二年生の夏。


一戦一戦、全力で戦い抜き、ついにベスト4。

あとは2つ勝てば、甲子園。


だが、準決勝で立ちはだかったのは、またもBL学園だった。


リベンジを誓った試合。

だが、あの“強さ”は健在だった。


1点が重い展開。ミスは許されない。

そして、ほんの一瞬の綻びを突かれて、2失点。反撃できぬまま試合は終わった。


0対2。




あと一歩。

ほんの少しの差――それだけが、俺たちを甲子園から遠ざけていた。


試合後、誰も言葉を発せなかった。

でも、あのときの悔しさは、全員の中に確かに残った。


その夜、グラウンドに一人で戻ってきて、空を見上げながら呟いた。


「……でも、終わりちゃう。ここからや」


夏が終わり、俺たちは新チームの中心になった。


1年生だったカイトやソウタも、今や主力。

新しい1年生も加わり、上方第一はまた動き出す。


秋――。俺たちが最上級生となったこの代で、絶対に掴む。


(次こそ、甲子園へ)


その想いだけを胸に、俺たちはまた、白球を追い始めた。

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