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4.麗良反撃す!


 「レイラ様本当にお可哀想、わたくしなら立ち直れずに寝込んでしまい、学園にも顔を出せませんわ」


(憐れで惨めな人ね、普通恥ずかしくて学園なんて来れないわ…案外図太いのね?)


「パーティーで同じ様に婚約者をなくしたのに、片やブロワ様はあんなにお幸せになったのだから…さぞ羨ましく思われたでしょう?

でもね…あの方もレイラ様と同じで、元はとても冴えない方だったんですって!ほんと運のいい方っているのよね。

そうだわ!レイラ様も髪型を変えるとか努力をされてみては?ブロワ様と同じ黒髪ですもの、あやかって運が良ければ新しい婚約者様が出来るかもしれませんわよ?フフフ…」


(ブロワ様も所詮が良かっただけよ、でも貴女が羨んでも無駄よ?同じ黒髪でも…何の後ろ盾も無く、冴えない貴女が努力したところで、新しい婚約者なんて見つかるわけ無いわ)


「そうね、ヴェントラー公爵令息様が愛した黒髪の姫君として、ブロワ様の黒髪が一躍有名になったのだから、レイラ様にも何かしらのご利益があるかもしれませんわ!

でも…わたくしはほら、金髪ですから何もしなくても目立ってしまいますの。だから今だけは貴女の黒髪も羨ましく感じますわ。フフッ」


(貴女には地味な黒髪ぐらいしか共通点なんて無いですものね)


「あら、カレン様がレイラ様を羨ましいだなんて!わたくしはカレン様の輝く金髪が羨ましいです。だってどんな装飾品でもお似合いになられますし…あっ、レイラ様の黒髪も勿論落ち着いたお色で素敵ですし、レイラ様の雰囲気にはピッタリだと思いますわ」


「あらあら皆さんったら、わたくしの自慢のこの髪を褒めてくださるのは嬉しいですが、ほら…今日は可哀想なレイラ様を慰めて差し上げなくちゃ、ね!」



この他にも、婚約者の自慢話、家の話、装飾品の話等々…多岐に渡る自慢・・が朝からずっと続いている。

「そうなんですか?」「凄いですね」「羨ましいです」

このローテーションで切り抜けて、相手が気の済むまで好きにさせていた麗良だったが、矛先が元婚約者や家族に向いたのでさすがに黙っているわけにはいかなくなった。


ガタンッと音を立て立ち上がった麗良は、同じテーブルに座っている友人達・・・見下みおろして口を開いたのだった…。


「皆様、わたくしの事を気にかけてくださりありがとうございます。しかしわたくしの今後についてや家族、元婚約者のキリアン・ベイズ子爵令息にまで、あなた方がご心配くださる必要はございませんので、それ以上の干渉は控えていただきたく存じます。

それではわたくしは席を移動しますので、皆様はごゆっくりどうぞ」


「あらレイラ様、わたくし達は貴女が次こそ幸せになれる様にと…()()()と思ってアドバイスしつつお慰めしてるというのに…それを干渉するな!だなんて…まるでわたくし達がお節介だとでも仰りたいのかしら?」


「ええ、その通りです。そこまではっきりとは申しませんでしたが、そのご自覚はあったのですね」


「んなっ!貴女っカレン様に失礼よ!わたくし達だって友人と思えばこそ、可哀想な貴女の気持ちや不満を代弁してあげてましたのよ!」


「フフッフフフ…可哀想という言葉が、お節介や侮辱行為の免罪符になるとでも?生憎とわたくし不幸ではございませんの」


「それこそレイラ様の強がりなのでは?無理をなさっては痛々しいですわよ?貴女はわたくし達に見放されたら…学園でもお一人になってしまうのよ?そんなの可哀想で見てられないわ!ねぇ皆さん、そう思いませんこと?」


「カレン様の仰る通りですわ!カレン様のこの優しさがわからないのかしら?」


「わたくしベイズ子爵令息とは和解の元で婚約解消しましたし、両親もそんなわたくしを責める事なく思い遣ってくれ、政略的な事も、貴族的な事も無理強いせずに今は自由でいいと言ってくれております。

とっても理解があって優しい両親なのです。

なので、わたくしは本当の優しさが何であるかを知っておりますからご心配には及びません。」


「ものは言いようですわ!ご両親も呆れて放置されているのではないの?それに『自由に』だなんて貴族としてはあまりにも無責任としか言わざるを得ませんわね!」


「両親もわたくしも、貴族の責務を放棄するつもりはありませんし、家の為とあらば…この身を捧げる覚悟ぐらい持ち合わせています。

()()心の回復を優先したまでです。


それと、価値観の違いと申しますか…わたくしはキラキラした装飾品を身に着けた時よりも、朝目覚めてキラキラと輝く朝日を浴びる瞬間にこそ幸せを感じます。

髪色だって個性です。それに皮や布を染色する技術があるのですから、その内髪色も自由に変えられる様にきっとなりますわ。そうなれば金髪が特別だとは誰も思わなくなりますわね…。

そして…貴女方に見放されるとの事でしたが、わたくしは今後一人の時間を有意義に使える様になるという事ですね?そうなったら感謝こそすれ、悲観する事はございませんのでどうぞ…よしなに取り計らってくださいませ」



そう言って、一礼した麗良は食堂を後にした…。

その彼女の自称友人達は、淑女らしからぬ表情で…ポカンと口を開けたままであったり、悔しさなのか怒りからなのか、ワナワナと顔を真っ赤にする者、オロオロと視線を泳がせる者達がテーブルに残されていたのであった……。


周囲のテーブルでその様子を窺っていた生徒達は、女同士の喧嘩って怖いな…なんて言う者や、レイラを知っている者は…その変わり様といさぎよさに驚き、またある者は…興味深く麗良の後ろ姿を見つめる者もいた…。


そして当の本人はと言うと…颯爽と足取り軽く、図書館へと向かい…その蔵書の多さに胸をときめかせていた。






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