表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/22

3.学園にて〜


 長期休暇を終え、いよいよ学園生活が再開される。

レイラはこの学園で一年以上を過ごしていたが、麗良は初めての場所となるので、少し緊張していたが…心は驚くほど凪いでいた。


(レイラが真面目だったお陰ね、私も頑張らなきゃ)


学園内は、久し振りに顔を合わせる学生達が至る所で話に夢中になっている。

やはりその内容は、あの断罪パーティー後に結ばれた二人が正式な婚約を結び、幸せの真っ只中だという話が主な内容で、他には隣国ラファールまでの新道が出来るらしいとの噂や、その影響からかラファールの商品を扱う人気店のウェンティーナが2号店を出すらしいとの噂。

そしてなんと…そのウェンティーナの経営者が今話題の人であるクリスティーナ・ブロワ伯爵令嬢であった事など、盛り上がる為の情報は尽きない様だ…。


麗良は教室で静かに、同級生達の噂話を聞いていたが…クリスティーナ・ブロワ伯爵令嬢の名前を聞いた時に『チクリ』と胸が痛んだ。


ん?と思った麗良だったが…彼女がその話題の人だとの事でやっと思い当たる。


(あぁ…レイラは彼女を、羨んでしまったのね…。)


麗良がこの世界に来て、最初に目に飛び込んできたもの…それは、断罪劇からの告白のシーン…。

麗しの美青年に跪かれ愛を乞われていた美少女、その美少女こそがクリスティーナ・ブロワ伯爵令嬢だったのだ。


(あの時はちっとも気付かなかったけど…そっか…レイラは好きだった婚約者のキリアンの言葉を聞いて…)


レイラのその時の感情が鮮明に蘇ってくる…。

自分の事を、友人達に紹介すらしてくれないキリアン、交流も月に一度の顔合わせだけで、パーティーでのエスコートも最初と最後のみ…。婚約者と呼ぶのさえ憚られる様な間柄だった。


しかし、ブロワ伯爵令嬢も自分と変わらない…いや自分よりも酷い扱いをされており、自分はまだマシだと…そう思えていたのに、彼女の婚約者には天罰が下り、彼女は幸せそうに微笑んでいた。


そんな状況を隣で見ていた婚約者のキリアンは、「自業自得だ」と堕ちた友人に向かって呟いていた…自分の事は棚に上げてだ。


結局のところ、ブロワ伯爵令嬢と断罪されたキリアンの友人は婚約者では無かったらしいし、彼女は幸せになれる事が約束された。

では……自分は?……『私は、幸せになれるの?』




隣に立つ婚約者のキリアンは、自分が同類だとは思ってもいないのか…、悪びれもせず友人を冷めた目で見ていたのだ、まだ若いレイラが己の状況や先の未来を絶望視してしまっても、それは仕方のない事なのかもしれない…。

現実から目を背け、未来を忌避した瞬間……


(私がレイラになったのね…辛かったね、レイラ)


麗良はレイラの苦悩を知り、自分の胸に手を当て慰めの言葉を呟いた。そして、


(でもねレイラ、彼は貴女にきちんと謝ったのよ…貴女と婚約を続けたい、と。これまでの事も反省して態度も改めるからととても焦っていたわ。

貴女は嫌われてなんかいなかったの…。貴女に聞いて欲しかった、ごめんね私が聞いちゃって…。婚約も解消しちゃって…。)


麗良がやるせない思いで俯いていると、声が掛けられた。


「レイラ様?どうなさったの?気分でもお悪いの?」


「まぁ!皆さんお久しぶりですわね、私なら大丈夫です!心配してくださってありがとうございます」


麗良が友人達に笑顔でそう答えると、声を掛けてきた友人達もあから様にホッとした顔で話を続けてきた。

パーティーでの事、婚約者の事、新しい婚約者は?今後は?彼女達の話を聞きながら、失礼にならない程度に相槌を打ち、当たり障り無い返事を返しつつ会話を続けていた麗良は思った。


(これがレイラの立ち位置ってわけね…同情?ううんあわれみ半分、さげすみ半分ってとこかしら?興味本位と明らかなマウンティング…レイラはこんなのにいつも付き合ってたの?

はぁ…レイラ?こういうのは友人と言わないわ、まぁ貴女も分かっていても言えなかったのよね…)


麗良は目の前の彼女達の話を右から左に聞き流しながら、初日だし…一通り話せば満足するだろうと、この場をやり過ごした。


しかし彼女らはレイラの大人しい反応が面白く無かったのか、それとも加虐かぎゃく心がくすぐられたのか…昼食の食堂でもそれは繰り広げられた。


婚約者を無くした友人を気遣う体で…その実、塞がりかけた傷口をこじ開け…塩を塗る所業を善人顔で押し売る行為…。己の善行・・を広めたいのか人の集まる場所でのパフォーマンスに、レイラはまさに適役なのだろう、解放するつもりは無さそうだ…。


(格上の同級生に黙ってなぶられて、悲しそうな顔で相手を満足させるのが、レイラの処世術だったとは言え…これが貴族の常識なんてどうかしてるわ!愛のない結婚しかり、こんな茶番ももう沢山)


ガタンッと音を立て立ち上がった麗良は、同じテーブルに座っている友人達・・・見下みおろして口を開いたのだった…。





次回、

「扇子を剣に!麗良、女の戦地に立つ」…的な内容になると思われます。


麗良どんな風に言い返すの?と思われた方はブクマを!

麗良頑張れ負けるなと応援してくださる方はいいねを!

愛のない結婚、女のマウント許すまじの方は評価星を!


「ついでだ作者も頑張れ」と応援くださると喜びます!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ