1.「異世界転生きたーー!え?ざまぁ終了?私モブ?」
初めましての方も、捨幼拾イケ(すておさひろいけ)からの方も、この度は…この作品を選んでいただきありがとうございます。
後書きにて、このお話のちょっとした裏話を書いてありますので…よろしければ最後までお付き合いください。
(異世界転生きたーーーーーー!!!)
(ええっ!マ?(マジ?)えっ?さすがに夢だよね?こんなの漫画とか小説でしか見た事ない……っていうか有り得ないよねぇ、……やっぱり夢だな…うんうん。
たまに夢の中で夢だって認識する事ってあるし、それにこんな滅多な事そうそう起こるわけないかっ……無い無い!やっぱ無いわ〜。
ふぅ……でも綺麗な世界…とても広いし、みんなドレスとか着てるし…ここお城なのかな?
あらら…喧嘩?…にしても華やかな顔してるわ、ザッ主人公って感じ……。はっ!待って…この状況って、世に言う『ザマァ』ってやつなんじゃ…。うっわ臨場感パない!ヤッバ!間近で体験とか、なんだか得した気分だな…フフ。でもこういうのって大抵ヒロインとか悪役令嬢とかになるのがお約束なんじゃ…でもあっち側になったらなったで苦労しそうだし…。
でもでも…どうせ夢ならモブより王道ストーリーに翻弄されてもよかったかな、夢の中でもモブなんてつまんない…。
ん?何この男の人…ジロジロ見てきて、やっぱり私浮いてる?どこかおかしいのかな…?)
「大丈夫かい?顔色が悪いけど……少し休む?」
(わわっ!話しかけられちゃった、知り合いかな?
言葉は分かるけど…言葉使いなんて分かんないし、知り合いだとしても、会話とか合わせられないから黙ってた方がいいかな?でも心配してくれてるみたいだし…怪しまれちゃうかな…どうしよう)
「あの…大丈夫なので、お気遣いなく」
「いや…少し休もう。何か飲み物を…」
「いえ、本当にお構いなく…。一人で大丈夫なので…」
「君は…これまでの俺の態度に怒っているのだな…」
「ん?あっいえ…私にはなんの事か…」
「いや…結ばれたあのお二人の仲睦まじい様子を見て、君が俺を責めたくなる気持ちも分かる。俺はこれまで、君に対してあまりにも不誠実だった…。反省している」
「あの〜、確かにあそこの中央にいるお二人はとっても綺麗で素敵だなぁって思いますけど、だからと言って…それであなたに対して何かを思う事は無いですよ?」
「ああ…そうか…、義務的な態度しかとってこなかった俺になど、関心すらも無いという事か…」
「あのぉ…さっきから私には本当になんの事か…」
「すまなかった。この通りだ…これからは婚約者として君を大切にする!だから…もう一度チャンスをくれ」
「こっこっ…婚約者ですってぇーーー!そんなっ何を言っているんですか?無理です!ちょっとやめてください!近寄らないでっ!」
(何?何?この人今婚約者って言った?なんで腰を引き寄せるのよっ!やめてってば、近い近い近い!)
「どうしたんだそんな大きな声を出して、やめてくれっ!無理ってどういう事だ?まさかっ……!」
「そっちこそ!いいからちょっと離れてください!それに婚約者だなんて…急にそんな事言われても…」
「レイラ!…レイラ・クロシタン…俺と君は確かに互いに愛し合う様な間柄でもなく、大切に思い合う事も無かったかもしれない…。しかし共に婚約者として過ごしてきた時間が…ある。…そう…だろう?」
「そんな事言われても知りません。私…私は……!やめてっ触らないでっ!……私…あっ!……そん…な…」
「レイラッ!どうしたんだ!レイラっ!おいっ」
(な…に?何なのこの記憶…誰?…やめて頭が痛いの…あぁでもこれで夢から覚めるかも…)
学生同士の華やかなパーティーで行われた断罪劇。
断罪された側は…惨めな姿で会場を追いやられ、反対に断罪した側の二人は今も会場中央の輪の中で、パーティーの主役としてスポットライトが当てられているかのごとく、幸せそうに光り輝いていた。
しかし時を同じく…その会場の輪を少し外れた場所で、新たに三組目のカップルが修羅場を迎えていた。
…その小さな騒ぎに気付いた者達は…なんだ?なんだ?と『好奇の目』を向ける者達や、あの二組に触発でもされたのか?と『奇異の目』で窺う者達もいた。そして高位の者ほど…めでたい席で騒ぎを起こすなと言わんばかりの『白い目』でその二人を傍観していたのだった…。
黒下 麗良 ド底辺女子高生 17歳 性格・温厚無害
レイラ・クロシタン子爵令嬢 17歳 性格・温厚無害
転生?転移?先で、驚異のシンクロ率を引き当ててしまった 黒下 麗良 (17)。彼女は夢現に我が身を任せていたが…その世界の名、レイラ・クロシタンと何度もその名を呼ばれた事で、意識の同調が完了した…してしまったのであった…。
そして…いつもと様子の違った婚約者が、自分達の婚約を否定するかの発言をし…そのまま意識を失った事で、焦りと動揺を隠せないベイズ子爵家の次男…キリアン・ベイズ子爵令息は、彼女を医務室へと運ぶ為…心配そうに彼女の名を何度も呼び掛けながら会場を後にした。
今宵断罪された当事者の男女…マルコム・ハンセン伯爵令息とソフィー・バネット子爵令嬢は、キリアンの友人でもあったのだが、今の彼にはその憐れな友人二人の心配をする余裕すらも無いのであった……。
前作の「貴方が望んだ事ですよ?〜捨てる幼馴染あれば、拾うイケメンあり〜」 が、お陰様で沢山の方に読んでいただき…ランキングではブロンズの王冠まで被らせていただきました。
…皆様からいただいた感想を読み返しては、上記の作品に想いを馳せ、幸せな気持ちにどっぷり浸かっていたのですが、ランキング入りから十日経ち…作者が遊び心でポイっと紛れ込ませていた『モブ転生者』に反応してくださった方達がいらっしゃいまして、その後のストーリーもご要望いただきました。
きっと遊び心に遊び心のノリでの事だったのかもしれませんが…想像したら止まらなくて…ほとんど勢いで書いてしまった作品がこちらなのです。
もし興味を持っていただけたならば、最後までお付き合いいただけると幸いです( ˙꒳˙ )ノ 雪原の白猫