表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界線で君を待つ  作者: 柏井猫好
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/57

田舎町のクリスマス3

 翌朝も早朝に目が覚めてしまったが、スーザンが起床するまで、おとなしく寝室で待機した。この日は昼に親戚の家へ集まって食事会が行われる。かなりの大人数になるため、各家庭で一品料理を作って持ち寄る形式をとるらしい。スーザンも朝から仕込みで忙しかった。


 ヘイグランド家は何代か前、スウェーデンから移住してきたため、クリスマスにはスウェーデンの伝統料理を食べる習慣があるそうだ。スーザンは毎年、ルートフィスクという、干した魚を灰汁に漬けたものを使って、クリームシチューのような料理を作っている。朋も慶も仕込みを手伝った。


 途中で恵瑠が来たので、作業を一旦中止し、皆でクリスマスツリーの下に置いてあったプレゼントを開ける。

 朋と慶はお金を出し合って、スーザンには寿司柄の毛布を、恵瑠にはマフラーをあげた。スーザンは寿司が大好きなので、とても気に入ってくれた。

 孫二人にそれぞれプレゼントを用意していたスーザンだったが、笑顔で朋にも箱を差し出す。


「メリークリスマス、朋!」

「えっ、あたしにも?」

 箱の中には水色の蝶がついた陶器製のオルゴールが入っていた。

「うわ、きれいだな! ありがとう、スーザン! メリークリスマス!」


 宿泊させてもらっているうえに、プレゼントまで用意させてしまった。何だか申し訳ない気がするが、好意は素直に受け取っておくのが礼儀だろう。


 恵瑠から朋と慶へは、夏にモデルをしていたファッションブランドのバッグだった。中性的でカジュアルなデザインで、使い勝手が良さそうだ。同じデザインだが、慶のは黒、朋のは黄色だった。

 朋から慶へは、ワイヤレスイヤホンをあげた。

「この前、落として失くしたって言ってただろ?」

「うん。ありがとう」


 慶からのプレゼントはスマホケースだった。以前一緒に買い物に行った時に、朋が気に入ってしばらく見ていたが、手持ちのお金が少なくて諦めたものだった。

「お! ありがとう! めっちゃ嬉しい!」

 朋の反応に、慶は満足げに頷いた。


 二人を呆れたように見ていた恵瑠が「まったく、色気がない贈り物ね」と呟いたような気がしたが、聞こえなかったことにする。


 昼前にはスーザンの兄であり、慶たちの大伯父の家に出かけた。

 スーザンの家から車で十分程度の距離だ。広大な土地にぽつんと家が建ち、敷地内には大きな風車がある。かつて豚を飼育していた柵もあったが、現在は使われていない。


「メリークリスマス!!」

「慶、帰ってたのね! ちょっと見ないうちに大きくなって!」


 室内にはすでに、三十人ほどの親戚が集まっていた。親戚だけでも多いのに、やれその恋人だの、婚約者だのと、親戚以外の参加者も多いので、正直、紹介されても誰が誰なのか分からなかった。ほとんど全員が縦にも横にも大柄で、こんなに密集して、床が抜けやしないかと冷や冷やした。


 一階のキッチンには、皆が持ち寄った料理が、ところ狭しと並べられていた。スーザンも、持ってきたルートフィスクをそこへ置く。


「おっ、待ってました! クリスマスといえば、ルートフィスクだよな!」

「うえええ、気持ち悪い……」


 それを見て喜んだのは、スーザンの兄弟たち祖父母世代で、反対に顔を顰めたのが親世代と子世代だった。この地域では魚を食べる習慣があまりない。そのため、ドロドロして魚臭いルートフィスクは食べてもらえないことが多いらしい。

 子世代に蛇蝎のごとく嫌われるルートフィスクだが、恵瑠と慶は、日本育ちで魚に何の抵抗もない。そのため、二人が喜んで食べてくれることが、スーザンにとっては嬉しくて仕方ないらしい。


 地下室は、朋の家の一階と二階全てを併せたよりも広く、簡易テーブルと折りたたみ椅子が並べられていた。そこへ全員で集まり、円形に並んで食前のお祈りをささげた後、順番に一階へ食事をよそいに行く。


「すげえ色々あるな」

「あれがミートボール、あっちはハム。ハニーマスタードのソースをつけて食べるのよ。マッシュポテト、インゲンと揚げた玉ねぎのキャセロール」

「キャセロール?」

「説明が難しいけど、深皿とか鍋に入ってて、オーブンで焼いてあるものよ。ちょっとグラタンに近いかも」


 他にも、茹で卵を半分に割って、黄身をマヨネーズなどで和えて絞ったデビルドエッグというものや、マカロニチーズ、パンなどがある。全体的に野菜が少ない印象だ。


「あのゼリーみたいなのは?」

「あれはマシュマロとフルーツのサラダ」

「……サラダ??」


 缶詰のフルーツと、ピンクとオレンジの中間のような色をしたムースと混ぜたようなものを、しげしげと眺めた。サラダというと、生野菜にドレッシングをかけて食べるものを想像するが、これはどう見てもデザートである。


「何でか知らないけど、あれもサラダって呼ぶのよね」

 恵瑠の説明に、そういうものかと頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ