1/57
プロローグ
目に飛び込んできたのは、呪いの色だった。
震えながら目を瞬くと、真白な絨毯に赤黒く染み込んだそれは、目に焼き付いたまま、瞼の裏でも禍々しく己を主張する。
からからに乾いた口を開いても、意味のある言葉が出てこない。
ぼんやりしていうちに、氷のハンマーで下腹部を殴打されているような、ズキズキとした痛みが、硬い蕾のような体をじわじわと浸食し始める。
言葉を探して視線を彷徨わせ、無意識のうちに足元に視線を戻す。どろりと散った赤黒い花に、絶望の息を吐いた。
この瞬間、運命は決まってしまった。破滅へ向かって、ゆっくりと歯車が動き出したような気がした。
――自分はもう、女という呪縛から、逃れることはできないのだ。