勇者の正体
「それは………」
俺の言葉にユリウスは言いづらそうにする。
「言いづらい事ならいいよ」
「そういう事でもないんだが」
この事は言ってもいいのかとユリウスはリーナに確認を取るように視線を送る。
するとリーナは微笑んだ。
「いいですよ、私はあまり気にしていないので」
「リーナがそう言うなら」
そう言うとユリウスが俺の方を向き直る。
「リーナは本当の娘じゃないんだ」
「本当の娘じゃない?」
「話は変わるが神人、お主、すべての魔眼の頂点の《能力 神眼》を持っているだろう」
「‥‥‥‥なんでそう思うの?」
「我も鑑定眼がある。見てみたが凄いな…………神人のステータス」
ユリウスは俺のステータスを本当に見たようで若干引き攣った笑みを浮かべる。
俺もそれにつられて苦笑いをする。
「それでリーナを鑑定してみよ。そこに琴絵がある」
「分かった。じゃ、鑑定させてもらうよ、リーナ」
「はいっ」
俺は彼女に《能力 神眼》を使った。
【名前】リーナ サーティン【女】【17才】
【種族】ハーフエルフ 【レベル】32
【称号】魔王に拾われし者、幼く親を失った者
【体力】 800
【魔力】 500
【攻撃力】110
【防御力】580
【瞬発力】900
【固有能力】空間魔法
【能力】水魔法、雷魔法、風魔法、地魔法、光魔法
【加護】精霊神の加護
「ハーフエルフ?」
俺はリーナの種族に引っかかりを覚える。
すると、ユリウスが丁寧に説明してくれた。
「そう、リーナはハーフエルフだ。森に一人でいた所を我が保護した。リーナから聞いた話だと魔物に襲われて親を殺されたらしい。そこからリーナだけが逃げ延びたようだ」
森で親を殺され、さまよっているところでタブスに出会ったのか。
俺は幼い時に親を亡くしたリーナの話を聞いてどうすればいいのか分からなくなった。
とりあいずお礼を言わないと。
「教えてくれてありがとう」
「別に我にとってはなんでもない話だ。お礼を言うならリーナに言え」
「こんな辛いことを教えてくれてありがとう」
俺はリーナに向いてもう一度お礼を言った。
「そんなお礼なんていいです。神人さんだから教えたんです」
笑顔でリーナが言う。
そんな彼女を見て俺も自然に笑顔になる。
(なんていい人なんだ。絶対この人たち守るぞ)
俺は静かに決意する。
「ねぇ、もう一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「勇者の顔って分からないの?」
俺は聞いてみた。顔が分かればスムーズに事が進むと思ったからだ。
「分かるぞ。ちょっと待っておれ」
ユリウスがお広間出て行ってすぐに水晶玉みたいなのを持ってきた。
「これを覗いて見ろ。勇者の顔が見えるぞ」
「分かった」
俺はその水晶玉を覗いた。
衝撃の人物達が目に飛び込んでくる。
(なんで健達がいるんだ?)
確か半年前に勇者が召喚されたって話だったけどその勇者が健達ってこと?召喚される数分前まで健と話していた。召喚された時期が違っただけなのか?今はその事を置いておこうかな。
「真ん中にいる奴が光の勇者だ。そのロングヘアの子が剣姫、おさげの子が賢者、ショートヘアの子が忍者と人間たちの中では呼ばれているらしい」
一応説明しとくけど光の勇者が健、剣姫が薫、賢者が未尋、忍者が優香だ。
なぜ、優香だけ忍者というなんとも微妙な役職なのか。
「ねぇ、光の勇者以外に勇者っているの?」
「いるぞ。異世界人ではないが闇以外の炎、水、雷、風、地のそれぞれの勇者が存在する。そういえば、そいつらが我に挑んできた事があったなぁ。まぁ、すべて返り討ちにしてやったが…………」
「この世界の人じゃ魔王に敵わないから異界いかいから勇者を召喚したんでしょうね。迷惑な話です」
ユリウスの言葉に重ねるようにリーナが言った。
「ありがとう。なんとなくは事情を把握した」
俺は二人お礼を言った。
「別に当然の事をしただけだ」
「そうです」
「俺は部屋に戻るね。おやすみ」
「「おやすみ(なさい)」」
俺は部屋に戻った。
いや、戻る前にナルさんにご飯が出来ていると言われて食べてお風呂に入って部屋に戻った。
戻って来てベットに寝転がった。
「今日は濃厚な一日だったな」
魔王に召喚されるわ、魔王の部下と戦うわ、魔王の娘さんに敬語使わないでって言われるわ、今日で数日分ではないかと思う程の一日だった。
おっとマナに聞きたいことがあったんだ。
「マナ」
『なんでしょう?』
「なんで俺や健たちがこの世界に呼び出されただろう?」
『分かりません。戦神サタンに聞くか、創造神カルナに聞くしか』
「サタンは健達を召喚した本人だよね。カルナって誰?」
『カルナとは一回あった事はありますよ。ユリウスに召喚される際に』
「あの神様ね」
言われてみればそんなような名前だった気がする。
「そういえばカルナが妙な事を言ってたな」
『妙な事?』
『「またね」って』
『そういう事ですか。神人さまがいつか神の領域を達して自分に会いに来ると確信して言ったのでしょう』
「神の領域って何?」
『簡単に言えば神になることです。普通の人間ならば神になる事は不可能です。しかし、神人さまは人間離れしているので神の領域に達するのは容易だと思います』
「俺、普通の人間じゃないだぁ。まぁ、知ってたけど」
『あの子、お気に入りだからってこんなチートステータスを与えないでよ。人間かどうか曖昧になっているじゃない』
少しマナの本音が聞こえた。
「もしかしてカルナの事知っているの?」
『はい。だって私、神ですもん』
「えっ、まじで」
『はい。叡智神って呼ばれています』
「だったらなんでその神が俺の能力になってるわけ?」
『能力になってる訳ではなく、ただ能力で意思疎通が出来るようになっただけです。カルナにサポートしてと頼まれて…………………それもこれも神人様が《能力 創造》で叡智を作ってくれたお陰です』
「おい、もし俺が《能力 創造》で作らなかったたらどうしたんだよ」
『カルナが無理やり神人様のステータスに追加するそうです』
「神って何でもありだな」
それを聞いた俺は苦笑まじりに呟いた。
『ああ、言い忘れていました。私、しばらく忙しいので会話は出来ません。何か知りたい事があったら本で調べてください。後は神の領域に達したいなら神山って言う神か人間の領域を越えた者が行ける場所があります、そこに行ってください。後、このイメージを。それでは』
「おい」
マナがくれたイメージは神がかった山のイメージだ。何に使えば。まぁ、明日考えるか。
俺は意識を落とした。
少しでも
「この作品面白い」
「続きが気になる」
「早く更新して欲しい」
と、そう思ってくれましたら
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