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56 旅は道連れ

「ちょ、ちょッ……ちょ~~といいですかッ⁉」


 僕は混乱する思考回路を必死で正常に保ち、話を止めた。


 落ち着け……。

 今確かにシスターに言ったよね……?


 “大賢者”って――。


「ねぇオジさん! 本当に大賢者なの⁉」


 まさに僕達が今聞きたい事を、ティファーナがどストレートに聞いた。


「ん? あ~、まぁ何と言うか……勝手にそう呼ばれているみたいではあるね。勿論自分から名乗った事はないが……」

「「――いたッ!!」」


 僕達は声を揃えて言った。


「マジで? オジさんが噂の大賢者なのかよ!」

「本物ゲロか⁉ メイリーン山の山頂にあったあの家は……」

「ほぉ~こりゃ珍しい。別の世界から転生してきたカエル人間とは驚いた。初めて見たよ。 それに君達メイリーン山に登ったのかい? “私の家”を知っているなんて」


 やっぱり本物だ――。


「本当にいた! あの大賢者が!」

「やったねジル!」


 僕達は喜んでいるが、当然シスター達は事情を知らない。


「何やら喜んでくれている様だが……私に何か用かね?」

「あ、はい! 実は丁度今話していたSランクの事で……」


 僕は大賢者のオジさん……改め、イェルメスさんに事の経緯を話した。


 すると……。


「――アッハッハッハッ! まさかジル坊がそんな面白い冒険をしているとはねぇ。いいだろう! アンタ達全員がSランクになれる様に、このジジイからドラゴンの居場所を聞くといいさ!」


 僕の話に対する返答はまさかのイェルメスさんじゃなくてシスターだった。


「私ではなく何故お前が答える、アグネス」

「何を言ってるんだいイェルメス。お前だって既にジル坊の話が“気になっている”んだろう?私には分かるよ」

「やったー!って事はやっぱりドラゴンの居場所知ってるんだねイェルメスは」

「まぁそれはね」


 凄い。イェルメスさんはやはりドラゴンの居場所が分かるのか……。って、相変わらずティファーナの人との距離の詰め方が異常だ。もうイェルメスさんと友達の様に話しているじゃないか。


「まぁそういう事だからねジル坊、アンタのギルドでロセリーヌとこのジジイを“預かって”おくれ」

「え……⁉ 僕達のギルドで?」

「シスター?」


 また驚きの発言をしたシスター。皆シスターの勢いに戸惑っているよ。ロセリーヌさんもね。


「人として成長する為に、旅に出たいんだろうロセリーヌ」

「うん。自分がなりたいシスターになる為に」

「旅をするのは勿論構わないが、実力のないアンタは直ぐ死ぬのがオチだ。だったらこの子達と一緒に行きな。まだ私より全然弱いが、アンタ1人よりは100倍安全だよ。それにこんな面白い旅は中々経験出来ないからねぇ」

「シスター……」

「うん、それがいい。絶対それがいいよロセリーヌ! 私もロセリーヌと一緒に冒険したいからさ、おいでよ。私達のギルドに!」

「そ、そんな突然……! 私なんかがいたら皆の迷惑になってしまいますよティファーナちゃん……!」

「そんな事無いよ。ね、ジル!」

「うん、勿論さ!ロセリーヌさんが嫌じゃなければ僕達は全然大丈夫!」


 寧ろウェルカムです。こんな綺麗で優しい女神の様な聖女なんて……。溜まりません。


「え、 本当に私が宜しいのですか……?皆さんのところにお邪魔しちゃって……」

「だから良いって言ってるでしょ」

「ディオルドもバレンもいいよね?」

「勿論ゲロ。カエルが嫌いじゃなければ」

「俺も別に構わねぇぞ。つうかお頭のギルドなんだから好きにしろよ。いちいち許可なんか取るなよ面倒くせぇ」

「ありがとう。って事で、僕達は是非ロセリーヌさんを迎え入れたいんですけど、どうですか?」

「あのなぁお頭。どう見てもこの子控え目タイプだろうがよ。そういう時は“どうですか?”なんて聞かずに、一緒に来いって言えばいいんだ。話が終わらねぇだろ」

「アッハッハッ!赤髪坊やの言う通りさジル坊。アンタそんなんじゃ一生女にモテないよ!」

「大丈夫!ジルには私がいるから」


 それはフォローになっていないよティファーナ。


「ジル君、ティファーナちゃん。それから赤髪の方とカエルさんも……。突然で迷惑かと思うけど、情けない話……私1人では心細かったの。だから、皆さんの仲間に入れて頂いて宜しいでしょうか……?」

「「勿論!」」


 ロセリーヌさんの申し出に、僕達は皆喜んで答えた。


「――まだ終わってないよジル坊!」

「え……シスター?」

「ずっと勢いある婆さんだな」


 まだ何かあるのか……? 色んな意味でやっぱ凄いなこの人……。


「ロセリーヌとついでに……“イェルメス”も連れて行きな」

「「……⁉」」

「え? 何で俺?」


 僕達が驚くのは当たり前だが、イェルメスさんも当然の如く驚いている。と言うより不思議そうだ。


 確かにドラゴンの居場所を知りたいんだけどさ……。それってわざわざ僕達と一緒に来る必要あるのか?


 シスター以外の全員が何故?と言った顔つきだったが、その疑問は直ぐに氷解した。


「イェルメス、アンタは私にまだ借りが1つ残っていたね」

「そうだったか? 仮にあったとしても何時の話だよ……」

「ハッハッハッ。男ってのは都合の悪い事は忘れるからね。でも私はちゃんと覚えているよ。60年前のスマイルベットでの事さ、グリフォンを討伐した」

「あー……。そういやそんな事あったかもな……」


 またさらっと凄い会話だった。

 グリフォンって、滅多に見つけられない珍しいモンスターじゃないか。しかも当然の如く強いらしいし。


「だからその借りを今返してくれ」

「それは別に構わないが、何故私まで一緒に行く必要があるのだ」

「そりゃあ勿論ロセリーヌの成長見届け係としてさ」

「なんだそれは……」

「ロセリーヌは大切な次期シスターだ。万が一の事がない様に、アンタが責任もって守りな」

「無茶苦茶な事言ってるぞアグネス」


 ハハハ、これはイェルメスさんが困るのも無理ないや。


「それに、この子達はドラゴンの居場所も知りたいみたいだが……それ以上にもっと面白い事があるだろう、なぁイェルメス。アンタもジル坊の“力”が気になっている筈さ。それはまたジル坊本人もね」


 僕の力……? それってまさか――。


「え、イェルメスさん! もしかして僕のこの力の事何か知っているんですか⁉」


 そう。

 イェルメスさんを探していたのはドラゴンの情報ともう1つ……。僕達に起こっているこの不思議な力の正体。


「どうなんだいイェルメス。私はアンタみたいに本を読むのが好きじゃないから知らないが、今のジル坊の話と“よく似た話”を昔にしていなかったかねぇ?」

「ああ……確かにしたな。正直私もかなり気になっているし、もし君のその力が私の知るものだとすれば……」


 今まで優しくて温和な感じだったイェルメスさんの雰囲気が、何処となく重くなった気がした。




「この世界が“滅びる”危険性にある――」


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