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54 ロセリーヌの真価

 シスターの言葉により、決意を固めたロセリーヌさんがブロッサム大聖堂を出た。


 それに続く様にシスターと僕達……それから聖女の皆も次々に外へと移動をする。


 僕達の前方にはメイリーン山とギガノキア。まだロマン街から距離はあるが、奴の大きさを考慮すれば、ここに辿り着く時間ももう僅かだろう。


 ギガノキアに気付いた街の人が1人2人3人4人……。あんな大きなものを隠す方が難しい。街が混乱に包まれるのに、そこまで時間は掛からなかった。


「おい、何だアレは……」

「もしかして街に向かっている……⁉」

「バカなッ……!そんな訳ないだろう」

「一体何なんだあの化け物はッ!」


 本当に大丈夫なのか……⁉

 次期シスターの座をかけた勝負がまさかこんな大事になるなんて。シスターもシスターで何を考えているんだ! いつの間にか街の人達まで困惑しているじゃないか。


「頑張ってロセリーヌ!」


 ティファーナが声援を送る先にはロセリーヌさんの姿が。


「ありがとうティファーナちゃん。私には到底ギガノキアを止める力なんてない……。でも、シスターの言う思いの力は私も信じている」


 そう言うと、ロセリーヌさんは両手を組み祈りを始めた。


「無理よ! そんなもので止められる筈がないわ!」

「シスター、 直ぐにあれを止めて下さい!」

「私達まで本当に死んじゃいます!」

「シスターッ!」


 外に出た聖女達がまたもやパニックになった。


 無理もない。目の前には伝説のギガノキアがいるんだから。それもこちらに向かって来るのだから余計に恐怖だ。


 僕からも切実にお願いします……。


 シスター! 早くギガノキアを止めてくれぇぇぇッ!


「だからうるさいって何度も言ってるだろうがバカ者達がッ!」


 シスターの一喝。

 その圧で瞬く間に皆が静かになった。


「いいから見てな。“コレ”がロセリーヌの本当の力さ――」

『バヴゥゥゥッ……⁉』


 突如、ゆっくりと歩みを進めていたギガノキアの動きが止まった。


「へぇー。やるじゃねぇかよあの女」

「凄い魔力ケロね」

「いけいけロセリーヌ!」


 また僕だけが分かっていない。今度は何が起こっているんだ……?


「――万物に感謝し全ての生命に幸あれ……全ての生命の苦しみを解き、全ての生命に……」


 ロセリーヌさんが祈りを唱えている。


 まさかギガノキアが止まっているのはロセリーヌさんの力……⁉ 噓でしょ⁉


 だけどそれ以外に考えられない。ティファーナ達の反応もそれで合点がいく。

 

 ロセリーヌさん……貴方はとんでもない人だった――。


「凄い……」

「本当にロセリーヌが……?」


 他の聖女達も信じられないといった表情でロセリーヌさんを見ていた。


 僕が驚くのは当然の事だか、彼女達までもが驚いているという事は、皆ロセリーヌさんの力を知らなかったという事なのか……?


「こ、これは一体……⁉」


 聖女の皆が驚いているところまではまだ分かる。


 だがロセリーヌさん……。

 僕の見間違いでなければ貴方も驚いている様子です。何故貴方まで……?


 こうなってくるとまた話が分からない方向に傾きますけど……。


「――やっと“自覚”したかい、ロセリーヌや」


 たった今意味深な台詞がシスターの口からでました。はい。これ以上驚くのは疲れます。なので僕が察した予想をシスターに聞きます。


「シスター! 間違っていたら申し訳ないですけど、ひょっとしてロセリーヌさんはあのギガノキアを鎮められるほどの祈りを持った聖女であるにも関わらず、そんな力がある事はまるで無自覚。

勿論その事を知っていたシスターはロセリーヌさんを次期シスターに任命し、そしてエンビアを含めたほぼ9割の反対派を納得させる且つ、本人や周りの人達にもロセリーヌさん本来の力を知らしめる為に今日のこの勝負に至ったと――。

そういう事でしょうか?だからずっとシスターは自信があって何処か楽しんでいる様子でもあったんですか?」


 僕が思っていたことを全部聞いた。


 そして、シスターは豪快に笑うのであった。


「アッハッハッハッハッハッ! アンタにしては察しが良いじゃないかジル坊。 そうさ、全くもってその通りだよ。昨日も言っただろう?任命したのは贔屓じゃなく実力があるからだと」


 僕にそう言ったシスター。すると今度はそのまま聖女達に向かって叫んだ。


「全員聞きな! ブロッサム大聖堂のシスターというのは当然の如く、シスターとしての資質が誰よりも備わっていなくちゃならない!

それとブロッサム大聖堂のシスターにはもう1つ、ある特別な使命が課せられている。それが奴、伝説の巨人族……ギガノキアの“封印”さ――」

「「……⁉」」


 ギガノキアの……封印?


「いいかい? メイリーン山は大昔から、聖女の祈りの効果を高める場所だと言い伝えられてきた。私がシスターになったのは今から80年前……20歳の時だった」


 え……って事はシスター100歳って事……?


 ええぇぇぇ⁉ だとしたら若いよ!元気過ぎるでしょ! いや、勿論いい事なんだけどさ。


「私の前のシスターもその前のシスターも。長きに渡ってギガノキアを封印してきた。そしてそれはこの先も変わらない。だから次のシスターはこの使命を果たす実力があるかどうかが1番重要なのさ。エンビアにカリスマ性や強さがある事は私も認めている。

だが、聖女としての力量はロセリーヌが圧倒的に上なんだよ。その証拠に、肝心のエンビアは“大聖堂からも”出て来られていない――。

シスターは誰よりも気持ちが強くなくちゃ務まらないんだ」


 もう誰も何も言わなかった。

 あれだけ反対していたロセリーヌさんの実力を、皆が認めた瞬間だった。


 ギガノキアは変わらず動きをとめられている様子。


『ヴオォォォォッ!』

「シ、シスター! 私ここからどうすれば……⁉」

「慌てるんじゃないよロセリーヌ。何も特別な事をする必要はない。普段通り……ただただ大聖堂で祈っている時と同じでいいんだ。アンタ達が毎日行っている祈りは、自然とギガノキアの封印にも役立っていたんだよ。ずっとね」

「「――!」」

「これで皆もよーく分かったかい? 下らないいがみ合いは止めて、これからはもっと立派な聖女を目指しな。自分も人も助けられる、そんな聖女にね」


 

 やはりシスターの存在は凄い。


 これは誰も敵わないや。 













「――フッ。まさか“お前”が聖女を語る日が来るとはな……えぇ、『アグネス』よ」



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