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52 勝ったもん勝ち

~ブロッサム大聖堂~


 翌日。


 色々あった昨日から一夜明け、ロマン街の宿に泊まった僕達は朝から大賢者探しと行く前に、もう1つの大事な約束を見守るべく、ブロッサム大聖堂へと来ていた。


「――ったくよ。大賢者探してるかと思いきや、何をまた人の事に首突っ込んでるんだよお頭は」

「ハハハ……」

「大丈夫だよディオルド! ロセリーヌは勝つから!」

「いや、そういう事じゃねぇティファーナ。昨日大体の成り行きは聞いたけどよ、そもそも誰なんだそのロセリーヌって。そして何で朝からこんな所に来ているんだ?」


 ディオルドが文句を言うのも無理はない。これは僕達にとっても予想外過ぎた展開だからね。


「それも昨日ジルが話していただろ。今日そのロセリーヌっていう人がイジメっ子と戦うんだケロよ」

「戦うかは分からないけど……」

「絶対ロセリーヌが勝つわ! 負けても私が勝つからいいの!」

「言ってる事が滅茶苦茶だ。それは絶対に止めてくれよティファーナ」


 昨日ロセリーヌさんとは一応ここで待ち合わせをした。シスターが朝退院をしてそのままブロッサム大聖堂に帰ると言っていたからね。きっともうそろそろ……。


「あ、来た。おーいロセリーヌ~! シスタ~!」


 道の向こうからロセリーヌさんとシスターが歩いてきた。何はともあれ、無事に退院出来たみたいで一安心だ。


「朝っぱらから元気過ぎるよアンタは」

「おはようございますティファーナちゃん。ジル君」


 今日も綺麗だなロセリーヌさんは。


「アンタもアンタで少しは視線を隠しな“ジル坊”。若いからしょうがないか。アッハッハッ」

「い、いや、そんなつもりで見ていた訳じゃないですから!」


 ロセリーヌさんを見る僕の視線を見ていたシスター。


 恥ずかしくて頭が上がらないよ。


「こっちの子達はアンタの仲間かい?」


 シスターはディオルドとバレンを見てそう言った。


「そうです。こっちがディオルド、こっちがバレン。2人共僕の仲間です」

「こんな大きいカエルを飼っているとは珍しいね」

「ペットみたいに言わないでくれゲロ」

「わッ⁉ カエル……さんが喋った……!」


 やはりバレンの存在は珍しいのか、ロセリーヌさんもシスターも物珍しそうに見ている。


「アッハッハッハッ! おまけに喋るのかい。益々珍獣だねアンタは」

「婆さんに凄げぇ笑われてるな」

「とても入院していたとは思えない程元気だケロよ」

「“転生”してカエル人間とは、まぁ何とも面白い人生だね。私も経験してみたいもんだ」


 転生という言葉に反応を示したのは僕とディオルドとバレン。


 シスターにはバレンの事を話していないのに、まるで分かっていたかの様に言い当てた。


 昨日初めて会った時から何となく感じていたけれど、シスターはやはり何かオーラみたいなものがある。それはブロッサム大聖堂という由緒ある場所でシスターをやっているから……というのも勿論だけど、それ以上にシスターは何か雰囲気を感じるんだよな。


 ティファーナの人魚もバレンの転生も見抜いたし。


「――さぁて、それじゃあ早速ケリを着けようかね」

「そうそう! エンビアをぶっ飛ばしに行くよロセリーヌ!」


 言葉がどんどん乱暴になっている。


 そして僕達はシスターとロセリーヌさんの後に続く様に、大聖堂へと入って行った。


 すると、そこには待ってましたと言わんばかりに、ブロッサム大聖堂に仕える多くの聖女達がシスター達を待ち受けていた。


「シスター!」

「お帰りなさいませ!」

「お身体は大丈夫ですか⁉」

「シスターお帰りなさい!」

「「シスター!!」」


 うわぁ、凄いなやっぱり。

 単純に人も多いけど、皆のシスターに対する熱量がとても伝わってくる。本当に人望がある人じゃなければこうはならいないだろうな……。


「アッハッハッハッ! 大袈裟だよアンタ達。うるさいから静かにしな。これじゃまた病院へ逆戻りだ」


 シスターがそう言うも、皆やはり帰って来てくれたのが嬉しいのか賑わいが続いている。そんな賑わいが暫く続いた後、遂にシスターが動いた。


「――よし。丁度皆集まっているから手間が省けた!話があるから皆聞きな!」


 聖堂にいる全員が聞こえる程の大声。シスターの一言で賑わっていた場が一瞬で静かになった。


「ロセリーヌ、エンビア! 2人は前に出な!」


 突然のシスターの行動に困惑する聖女達。戸惑いながらも、シスターに名を呼ばれたロセリーヌさんとエンビアが皆の前に出てきた。


「何ですかシスター。急に皆の前で呼び出して」

「あ、あの……シスター……」

「いいかい皆ッ!」


 2人が前に出た所で再びシスターは大声で話し始めた。


「単刀直入に言う!話は他でもない、次期シスターについてだ!」

「「……⁉」」

「皆も知っている様に、私はここにいるロセリーヌを次期シスターに任命した! だが……今日に至るまで、ロセリーヌがシスターになる事を認めていない者が数多くいる! そしてそんなロセリーヌよりもエンビアが支持を集めている事も当然私は知っている!」


 シスターの言葉が続く事に、聖女達のザワつきも増している。それと同時に、俗に言う“エンビア派”であろう聖女達がシスターの言葉に反応を示し始めた。


「その通りですシスター!」

「私達は次のシスターの後継はロセリーヌよりもエンビアを推します」

「ロセリーヌはシスターには向いていません!」

「エンビアさんの方が聖女としての実力があると思います」


 ロセリーヌさんが言っていた通り、確かに反対している人の方が多いな……。それ程までにエンビアという子が凄いのだろうか?


 僕がそう思っていると、ザワつき出したこの場を鎮めるかの如くシスターは言い放った。


「アンタ達の言い分はよく分かった! こうなってはやはり解決策は1つ……。

ロセリーヌ! エンビア! アンタ達の直接対決といこうじゃないか! 恨みっこなし。勝ったもん勝ちだよッ!!」



 




 やはりこれは大変な事になりそうだ――。



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