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04 出会って話せば皆

 なんでも……まず驚いたことに、ティファ―ナは僕と同じ16歳と言うじゃないか。驚いたと言うのは、勿論胸の成長具合もそうなのだが、人魚にも年齢があってしかも僕と同じ歳という事。しかも人間と感覚がかなり近く、人魚の方が少しだけ寿命が長い。


 そしてここから更に驚きの連続なのだが、まず根本的に彼女はちょっと変わっている。いや、大分かな。まぁそれは何となく察していたけど。


 ティファ―ナは人間の男性、それも10歳以上年上の人と婚約をしていたらしい。その“元”婚約者は貿易関係の仕事をしていて、彼の乗った船と海でたまたま出会いそのまま恋に落ちたそうだ。人魚の恋は何ともロマンチックだなぁ~と思ったのも束の間。


 よく話を聞いてみると(彼女が勝手にどんどん話したのだが)、ティファ―ナとその元婚約者が会ったのは全部で3回。


 1回目は出会った時で、ティファ―ナを偶然見かけた彼が話しかけた所から始まったみたい。


 2回目は、そこから2ヵ月程経って彼がまた船に乗って会いに来たとの事。そして3回目はついさっき。2回目から再び数か月経ち、彼がまた船に乗って会いに来た時だ。


 そう。僕がリヴァイアサンに食べられそうになる少し前だったと言う―。


 ふ~ん、成程ね。

 聞けば聞く程可笑しな話だ。僕もこの話は“1回”じゃ理解出来なかったよ。


 だって普通に聞いている分では、確かに会う回数が少なくて結婚までが早いなとは思うけど、本当に運命の相手と出会ったのなら別に可笑しくないよね。結婚まで早い人達なんて他にも当然いるし。


 でもね、問題はそこじゃない。

 じゃあ何が問題でこの話が可笑しいかって?



 それはこの話が彼女……ティファ―ナの“妄想”だからだよ!


 妄想と言うと、まるで全てが嘘に聞こえてしまうがそうではない。実際にその元婚約者は実在するし、会話もして何度も会っていると言うのも事実だ。


 ただ、ここで彼女が根本的に変わっている理由が判明した―。


 そう。彼女は余程人間の世界や結婚に憧れがあるのか、どういう教育を受けてきたのかは分からないが、ティファ―ナはどうやら“人間と会って会話をした時点で婚約者”という認識になるらしい。


 何とも恐ろしい事実―。

 誰であっても確実にここから話が嚙み合わなくなるだろう。そりゃそうだ。会って話したら婚約なんて誰が想像するもんか。まぁ確かに見た目は可愛いから万が一の可能性もあるけどね。


 これさえ理解出来れば後はいとも簡単に話を飲み込めた。


 彼女が勝手に言っていた“婚約破棄”は、きっと彼女と彼の間で結婚の話になったのだろう。そこで当然、「人間と会って話した時点で婚約者」という強制イベントが発動している事を知らない彼は話を断る。彼からすれば当たり前の話。


 でも彼女の妄想の中では、彼はもう婚約者。結婚の話を断られたのならそれは婚約破棄となるのだ。


 そしてその話し合いの末に、一方的に婚約破棄されたと思った彼女は激怒、渾身の魔法で彼を攻撃した彼女は魔力が無くなり、帰ろうとしていた時に僕を見つけたと言う。


 お分かり頂けただろうか……?


 この「人間と会って話した時点で婚約者」という強制イベントの今の対象は……僕。僕なのです! はい。これで全ての謎が解決しましたね。


 しかもそこから推測するに、会っただけで婚約レベルならば、僕の様に“触れて”しまった場合はどうなる?


 そうです。それはさっき彼女の口からも出ましたが、触れた事なのか一緒にリヴァイアサンを倒した事なのか条件は明確ではないが、そのどちらかの過程が彼女にとっては“結婚”という認識だそうです。


 僕達は快晴の空の下、そして広大な海の上で今日結婚しました―。



「――って、そんな訳あるかッッ!!」


 冗談じゃなく、これを本気で言っているティファ―ナが怖いというか最早心配だ。


「急に大声出してどうしたのジル」


 大声でツッコミたくもなるよ。話がぶっ飛び過ぎてる。でも……。


 確かにティファ―ナは可愛くて僕のタイプだ。ラミアと違って胸もある。さっきから話の途中でも、胸に乗った数滴の海水がティファ―ナの谷間に吸い込まれていくのを2回見た。


 結婚したとなれば二人は夫婦。そうなってくると、当然そういう行為もアリだ。それにあのおっ〇いは僕のという事にもなるし、ただ眺めているだけでなく今考えうる事全て実行可能だ。


 結婚もアリか……。



「――っと……。……ちょッ……ば!…………ねぇ!ちょっと大丈夫ってば!」

「え?……あ、ああ。うん!だ……大丈夫大丈夫っ!」

「本当に?」


 危ない危ない。スケベな事を考えてぼ~っとしてしまった。でも人魚って下半身は魚だし、一体どうやって……。


「またぼ~っとしてるよジル!どこか悪いの?」

「え?あ、違う違う!ちょっと疲れたなと思って」


 ダメだダメだ。また変な事考えるとこだった。


「そうだよね。人魚と違ってずっと海じゃ疲れちゃうか。じゃあ捕まって!陸まで連れてってあげる!」


 ティファ―ナは捕まってと、自分の肩をポンポンと叩いた。ただ浮いているだけだが、人間の僕では手足を水の中で動かすだけでも結構体力を使う。


 ティファ―ナの話が驚愕過ぎてそれどころではなかったが、ふと冷静になってきたら体が凄いキツイ。僕はお言葉に甘えティファ―ナの肩に捕まり、そのまま陸へと運んでもらう事にした。近くの陸でも少々距離があったが、ティファ―ナにとっては大した距離では無いだろう。


 僕に合わせてゆっくり進んでくれたこともあり、1時間程で近くの陸へと辿り着くことが出来た。


 僕はその移動中、ティファ―ナがまた魔力を使い切る程暴れない様に、ティファ―ナの気持ちを尊重する事は勿論、それとなくティファ―ナのその考え方は“ユニークだね”と気付かせてあげ、婚約や結婚、理想や価値観、人魚と人間の違い……そして今後の僕達の事についてまで、しっかり丁寧に説明したのは言うまでもない――。



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