45 噂の大賢者
ティファ―ナの言葉でハッとした。
そうだ。
元々山にすらいないのならそこで話は終わりだけど、バレンは人が住んでいる様な小屋を見つけたんだ。しかもメイリーン山の山頂というあり得ない辺境に。
「確かに。噂通り山頂に小屋があったなら、そこに住んでいる人がいる筈だよね」
「その可能性は十分ある。小屋は明かりも付いていたし、明らかに人が住んでいる感じだったケロ」
「お頭のビビりが功を奏したかも知れねぇな。探してみようぜ」
僕のビビりが初めて役に立ったかも。ディオルドはニヤニヤしながらこっちを見ているが結果オーライだ。このロマン街にいるならまたとないチャンス。
「よし。それっぽい人を探しに行こう!」
「急に仕切り出したな。一緒に動いても効率悪いからよ、二手に分かれよう」
ディオルドの提案で、僕とティファ―ナ、ディオルドとバレンという組み合わせで別れて探すことにした。
取り敢えずざっくりとこのロマン街を分割し、東側半分を僕とティファ―ナ、西側半分をディオルドとバレンが探すという事で話がまとまった。
「じゃあ、お互いもし見つけたら直ぐに知らせよう」
「分かったケロ」
「あ! あんまり派手に動き回らないでね。特にディオルド」
「どういう事だよ。人探すだけで俺が問題を起こすとでも思ってるのか」
今のは僕だけじゃなくバレンも心配になったよね?
ティファ―ナは全然気に留めていないけど。
「頼むよバレン」
「任せてくれゲロ」
「おい、何してるんだ。早く行くぞ」
こうして僕達は、この花の街で噂の大賢者を探し始めた――。
♢♦♢
~ロマン街・東側~
「――うわぁ! やっぱ花が綺麗だねジル」
街の東側を探している僕とティファ―ナ。流石、観光でも有名なロマン街。ただ歩いてるだけでも色々見られてたのしいな。ティファ―ナの言う通り、特に花に興味がある訳ではない僕でも、この街の至る所に咲き誇っている花々はとても綺麗だと思える。
そしてそんな花を見ている君も何とも美しい。……って、今の発言はヤバい。マジでヤバい。街の雰囲気に流されて一瞬ジェントルマンを気取ってしまった。恥ずかしい。口に出さなかったのがせめてもの救いだ。
「ねぇジル何してるのよ。大丈夫?」
「え、あ……うん、大丈夫! それより、何処から探そうか」
「そうね。でもやっぱりこの街の人に聞いた方が確実よね」
「うん。近くのお店やここに住んでいる人達に聞いてみよう。何か分かるかもしれない」
「ねぇ! ついでにあそことあそことあっちも行ってみたい!」
うん。完全に観光気分だ。でもまぁ良いでしょう。特別急いでいる訳じゃないからね。でも観光の前に探さないと、もしその大賢者なんて人がいたとしたらまた山に戻っちゃう可能性があるからな。そもそもその人がいるかも定かじゃないけど。
「分かった。それは後で全部行く事にしよう」
「ホント? やったー!」
「だから先に大賢者を探そう」
「分かった」
それから僕達は、近くのお店やこの街に住んでいる人達に大賢者の事を聞いたが、やはり噂程度にしか聞いたことが無いと何人かが言っていた。それ以上に有力な情報は特に得られなかった。
そう簡単には見つかる筈がないか。そんなレベルだったらもうとっくに沢山の人が見つけてるよな。せめて本当にいるのかいないのかだけでも分かれば……。欲をかくなら性別とか見た目ぐらい分かると全然違うんだけど。
「中々見つからないね」
「そうだね。でも、何となく“いそうな気がする”んだよな。勘だけど」
「何だかんだ探しながら観光出来てるから私は楽しい」
「確かに楽しそうだね。連絡がこないって事は、ディオルド達もまだ見つかっていないのかな」
「ジル! あそこの綺麗な建物行ってみよう! 何だろうあれ」
ティファ―ナが指差した先には、確かに綺麗でどことなく神聖な雰囲気が感じられる建物だった。1番上の屋根の近くには十字架の装飾が施されている。恐らく教会とか聖堂じゃないかなあれは。
僕がそんな事を思っていると、気が付いたらティファ―ナはそこ目掛けて歩き出していた。
取り敢えず行ってみよう。他に行く当てもないし。教会とかなら人も集まりそうだ。そこで何か聞いてみよう。
~ロマン街・大聖堂~
「――ここも綺麗~!」
「凄いな」
歩いて十数分。ついさっき離れた所で見た時も雰囲気あるなと思ったが、近くで見ると大きくてより迫力がある。建物自体の造りもお洒落だし上品さも感じられる。
それに何より、真っ先に目に飛び込んでくるこの圧巻の桜の花達。落ち着いた色合いの建物とは真逆に、これでもかと濃いピンクが周辺一帯を桜色に染めていた。これは凄く綺麗。いやホントに。
建物近くに立てられた案内板には“ブロッサム大聖堂”と書かれていた。
ここがブロッサム大聖堂か。何かの本で読んだ覚えがあったけど、まさかこのロマン街にあったとは。有名な観光地だよねここも確か。人も結構いるし。もっと早く気付けよ僕も。
「ねぇジル見て! ずーっと綺麗なピンク!」
「これは圧巻だね。本当に綺麗だ!」
ブロッサム大聖堂を囲う様に桜が咲き誇り、近くにいる人達も皆桜の木を見上げている。
「正面行こうよ」
「そうだね」
僕とティファ―ナは大聖堂の丁度真横辺りにいた。正面を目指していたつもりだったが、思いの外ここに来るまでの道がややこしくて、気が付いたらここの道に出ていたのだ。まぁ着いたから問題ないけどね。
それに、今思えばここに出た事がある意味“運命”だったのかも知れない――。




