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41 バレンの願い

 バレンと出会ってから1ヵ月が経った。

 新しく大幅にリニューアルされたスコッチ村は、あれから当然モンスター等の被害も無く、村の人達も快適に暮らしている様だ。村を直してくれたトビオさんの知り合いの職人さん、名前はバールさんというらしい。トビオさんがまだ駆け出しの頃にお世話になったと言っていた。


 スコッチ村の件から、僕達とバールさん、それからバールさんの所で働く職人さん達と話が弾み、トビオさんから聞いていた海上ギルドの依頼主が僕達だと分かると、是非自分達にも協力させてくれないかと言われ、全く断る理由も無くなんとバールさん達も手伝ってくれる事になった。


 お陰で人手も効率も上がり、気が付けば大勢の職人さんが僕達の海上ギルドに携わってくれて遂に完成間近のとこまできていた。



「――お~い。戻ったケロよ」

「お帰りなさいバレン。どうだった? “スマイル・ベット”!」

「ああ。見事クリアしてきたゲロ!」

「やったー!」


 ティファ―ナとバレンはハイタッチを交わして喜んでいた。


「また化け物認定が増えてしまった……」

「ん? ジル今何か言ったかケロ?」

「え、ううん、何でもないよ! ハハハハ」


 おっとっと。心の声が漏れてた。 

 そうなんだ。あれからバレンは僕達の仲間になったんだよ。

 偶然にも、海上ギルトとスコッチ村が近い距離にあってね。バレンはずっと村にいるつもりだったんだけど、カイト君や村の人達が、今度は僕達の助けになってあげてほしいとバレンに言っていた。


 それで決心したバレンは僕達の仲間となって一緒に行動する事になったんだ。

 でも、最初バレンは、カイト君や村の人達が心配だから村を離れられないと言った。勿論僕達も無理して同行なんてしてほしくない。バレンがここに残るのは当たり前の事だから。せっかく出会って仲良くなれたから少し寂しいけどね。まぁ別にこれが最後の別れでもないし、いつでも会いに来られる。


 そう思っていたんだけど、よくよく考えてみたら、僕達の海上ギルトとスコッチ村が近い事に気付き、しかもどうせ建てるならと豪快に大きく建てたギルドが、まさかの形で役に立った。


 なんと海上ギルトの一部である展望台から、スコッチ村が見えるのだ。これなら何時でも見えるし村に行く事もカイト君と遊ぶ事も出来る。


 心配がなくなったバレンは改めて僕達に申し出てくれて、晴れて正式な仲間となったのだ。

 そしてティファ―ナとディオルド同様、魔力が有り余っているバレンもクエストを受け始め、これまたティファ―ナとディオルド同様、恐ろしいスピードでランクがAランクまで上がったかと思いきや、たった今“スマイル・ベット”という単語まで聞こえてきた始末だ。


 人っていくら驚く事が起きても、やはり慣れというものが生まれるらしい。

 僕にもその慣れが生まれたのか、はたまた驚くのを止めた効果か、バレンの現状もスムーズに受け入れる事が出来たんだ。これが良いのか悪いのかは分からないけどね。


「お頭! かなり出来上がってきたな、ギルド」

「そうだね。陸からでもバッチリ見えるし、何より思った以上にデカい」

「デカい方がいいじゃねぇかよ。“エデン”を目指すなら、デカさも強さも見た目のお洒落さも1番じゃなきゃなやっぱ」


 それもそうだね。闇雲にデカい訳じゃない。なんたってトビオさんにバールさん、それに多くの職人さん達が最高のギルドを造ってくれているんだから。


 ディオルドはエデンの事をトビオさん達にも話したが、当然皆の反応は驚き。まだ誰も真剣には受け止めていないだろうが、ディオルドは至って大真面目。その単語を口にする度に、徐々に皆意識はしていると思う。まぁそれでもやっぱり現実味は無いから、頭の片隅にぼんやりとエデンという存在が置かれている程度かな。


「俺はディオルドに聞いて初めてそのエデンとやらを知ったケロ。俄に信じ難いが、本当に存在するものなのか?」

「それを確かめる為にエデンを目指すんだよ。今のうちに願い決めておけよバレンも」

「もしそれが本当なら、そうだなぁー。悩むゲロ」

「何だ? 元の異世界に戻りたいんじゃないのかよ」

「そりゃ戻りたいと言えば戻りたいな。でも、あの時事故で死ぬのが俺の運命だったんだ。こっちに来た時は帰りたいと思っていたけど、住めば都ケロ。こっちの世界も悪くないから強いて言えば、元の世界の家族に、蛙になったけど俺は元気に暮らしていると伝えたいな」


 バレンが何気なく言った事に、僕は少し胸が苦しくなった。そうだよな。僕はバレンと出会えて良かったと思っているし、皆と過ごす毎日も楽しくて好きだ。それはきっとティファ―ナとディオルドもそうだし、バレンも本当に今の自分の現状を受け入れているからそう思えるんだ。


 でも確かに、バレンは元の異世界に家族がいたんだ。勿論友達も。突然の別れなんて、絶対に皆悲しかっただろうな。バレンの元の異世界の人達は、当然今バレンがこんな形で生きていると知らないんだから。

 

 エデンがあるかどうかはともかく、バレンのその思いがいつか届けばいいな。


「ジルは何をお願いするケロ?」

「お頭はダメだ。欲がねぇ。前に聞いた時も結局思い浮かばなかったからよ」

「無い訳じゃないけど、いざ何でも1つだけ叶えてもらうとなると、う~ん……やっぱり悩むな」

「いい加減その優柔不断なとこ直した方がいいぜお頭」


 自分でも思うよ。ティファ―ナやディオルドそしてバレンの様に、自信を持って決断したいとね。そんな事は昔から僕が1番よく分かっているさ。


「よし。願いはそのうち考えるとして、その前にまずエデンを目指さなきゃね!」

「如何にもいい事言ってる風でまとめたけどよ、ただ思い浮かばねぇだけだろ」

「ゔ……」

「まぁそれは置いといて、お頭が今言った事だけは正しいな。具体的には分からねぇが、取り敢えず次は“Sランク”でも目指そうか――」


 また何かが起きそうな事を言うディオルドだった。

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