39 お節介
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今日の朝。
まだ僕の頭がどんちゃん騒ぎの真っ只中。ギリギリ思い出せる最後の会話―。
「あ゛ぁ~~~~……」
「近くにいたら呪われそうケロ」
「ハッハッハッ! こりゃ1日動けねぇなお頭!」
「どうしたのジル? 具合悪いそうだけど」
この段階では確か僕は“痛い”しか思っていなかった。
「完全に二日酔いだゲロな」
「酒弱かったのかお頭は。ティファ―ナはいいのか?」
「何が?」
「どうやらティファ―ナは強いみたいだお頭。まぁこカチればっかりはしょうがねぇな」
「二日酔いって何? ジル大丈夫なの? 私も一緒に寝てあげようか」
そうだ。僕のいやらしい妄想を掻き立てる刺激の強い事をティファ―ナが言ったんだ。
願わくば一緒に寝てほしかった。
いや、この時はホントにそれどころじゃなかったし、一緒にいなかったお陰で吐くところも見られずに済んだから結果オーライだ。
でも……いかんいかん! 今はムフフな妄想をしてる場合じゃない。
「どうする? お頭がダウンだ。特にすることもねぇしよ、村の手伝いしようぜ俺達も」
「それいいわね。賛成」
「それは助かるケロ。ありがとうな」
「こんな美味い酒ご馳走してもらったら当然だよな。それじゃお頭、俺達行ってくるからよ。気にせず兎に角休んでろよ。治まるまで待つしかねぇから」
覚えてる限りではここが最後だな。この会話をして皆が部屋から出て行ったとこまで覚えてる。そして気が付いたら吐いてたもんな。よし。記憶は正常だ。バレンの話の続きを聞こう。
どうやらその後、ティファ―ナ、ディオルド、バレンの3人は、早速村の修繕を始めようと外に出た所、思いがけない方向に話が進んで行ったらしい。
「さて。壊れまくってるから順番にいくとしよう」
「そうね。お酒も料理もご馳走してもらったからその分頑張らないと」
「ゲロロロ。そんなに気を遣わなくてもいいケロよ」
「そうはいかねぇよ。一宿一飯の恩を返せないなんて筋が通らないからよ」
「私も何か力になりたいの!バレンやこの村の為にね」
「ありがとうケロ」
早速やろうかと3人が動き始めた所、急にティファ―ナがふと何かを見つけたみたい。
スコッチ村の近くには海があった。林の木々の間から海が確認出来る程近い距離。
「――ねぇ、アレもしかして“トビオさん”じゃない?」
「ん? 見間違いだろ。何でこんな所にトビオさんが……って、いるじゃんよ」
「ほらね。やっぱりトビオさんだ!」
「トビオさん? 誰ケロ?」
驚いた。何でこんな所にトビオさんがといるんだと僕も思ったが、状況を把握すればシンプルな答えだった。
そう。ティファ―ナがトビオさんの姿を確認したのは“海の上”。つまり、僕達の海上ギルドの建設場所から、このスコッチ村が結構近かったのだ。気が付かなかった。
トビオさんの他にもギルドファクトリーの皆さんがいたらしく、皆船に乗り作業をしていたそうだ。
ティファ―ナが林を抜けてトビオさん達に声を掛けると、向こうも一瞬驚いたが、直ぐに楽しそうに会話を始めたらしい。
「おーい!トビオさーん!」
「――! あれは……ティファ―ナちゃん! どうしてこんな所に」
ティファ―ナはその勢いのまま海に飛び込んで、トビオさん達の所まで泳いでいったそう。
そうだね。君は人魚だから本来は海にいるのが自然だよね。人間の姿が馴染んでたから忘れかけていたよ。
ティファ―ナがかくかくしかじかトビオさん達に事情を話すと、なんとスコッチ村の修繕を請け負ってくれると言ってくれたそうだ。本当にいい人だよトビオさん。
「そんな事があったのか。それは大変だなぁ」
「でも大丈夫! 私達も今から手伝うから」
「分かった。俺が何とかしよう。スコッチ村の酒は、俺達職人には欠かせないからね。なぁ皆!」
「「おぉ!!」」
そう言ってトビオさん達が手伝ってくれる事になったそう。でもギルドファクトリーの皆は、僕達の海上ギルドで手が離せなかったので、代わりに信頼出来る他の業者さんを手配するよと言って、直ぐに手配してくれたらしい。
それから数十分後、思いがけない早さでその業者さん達が集まってくれたらしく、皆そこからずっと作業をしてくれていそうだ。
流石プロの職人さん達。あれだけ荒らされ壊されていた村1つを、いくら小さな村だからと言って僅か1日でここまで修復するとは。凄いな。僕が呑気に寝てる間にずっと作業していたんだ。朝から日が沈みかけてる今この時間まで。
「本当にジル達には助けてもらってばかりケロ。村まで直してもらって却って申し訳ないよ」
「そんな事ないよ。って、僕が言えることじゃないんだけどね。今の今までダウンしていたし」
「凄い助かったよ。でも初めは断ったケロ」
「え、どうして?」
「色々してもらって申し訳なくてね。それに、立派な職人さん達に村ごと修繕依頼なんて、とても俺1人で決められる事じゃないし、当然金銭面でも返せる額じゃないケロ。だから気持ちは本当に有り難かったけど、断らせてもらったんだ」
そうだったんだね。そりゃ確かに1人でどうこう決められる事じゃないよね。村の人達の事だってあるし。
ん? でも今作業してるって事は、結果的に頼んだって事? 村の皆で決めたのかな?
僕がそんな事を考えていると、バレンはその続きを話した。
「でもな、俺がそう言って断ったら、またお節介な2人が意見も聞かずに動き出したんだケロ」
「お節介な2人ってもしかして……」
「うん。ティファ―ナとディオルドだケロ。俺が断ったのに納得いかなかったディオルドが、村の皆に修繕の許可を聞きに行ったんだケロ」
バレンが言ったのに何故ディオルドが納得いかないんだ。だけど君のそういう所を僕は尊敬する。強引だけどそこがディオルドの良いとこだと僕は思ってるよ。
「そこからはまた早かったケロ。せっかちなディオルドが村の皆を集めるや否や、“俺がこの村を直してやるから待ってろ!”とか言って直ぐにこっちに戻って来たかと思いきや、そのままトビオさんに頼んで修繕依頼をどんどん進めたケロ」
おいおい。村の皆に許可を取りに行くつもりじゃなかったのか? それはもう只の宣誓だぞ。誰の意見も聞いてないじゃないか。先を聞くのが怖くなってきたが、ここまで聞いたら全部聞くしかない。
「一応聞くけど、ちなみにその後は……?」
「ああ。俺もまた止めたんだけどな、小さい村でも全部直すのに素人だけじゃ無理だと。どっちみち業者に頼まないといけないなら知り合いのトビオさんに頼んだ方が信頼出来る。だからもう頼むって。それで、“金は俺が全部用意してやるよ”って言ってどっかに行ったきりまだ帰って来ていないケロよ」
何だそれは。確かにディオルドなら直ぐにお金は稼げるけど、そんなに時間掛かるかな?
「そういえばティファ―ナは?」
「ティファ―ナも、“私も稼いでくるわね!”って言って勢いよく2人で村を出て行ったケロ。そうしてティファ―ナもまだ帰って来てないないケロ」
よし。取り敢えずあの2人は放っておいて大丈夫だ。
「バレン。僕にも何か手伝わせてよ!」




