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37 スコッチ村の酒

 ♢♦♢


~スコッチ村~



「――皆大丈夫ケロか!」


 バレンとカイト君は走って村の様子を見に行く。


「おお。カイトにバレン!お前達も無事だったか!」

「おーい!カイト達が戻ったぞぉ!」

「ありがとうバレン!カイトを助けてくれて」


 ポルゴス達の襲撃を受けた村は、家や物や畑が酷く荒らされていたが、どうやら村人達は皆無事な様だ。

 良かった。安心したよ。


「取り敢えず一件落着だな」

「今回もとんでもない奴が出てきたお陰で、どっと疲れが押し寄せて来たよ」

「豚さん達悪者で残念だったわ」

「皆が皆そうじゃないと思うよティファ―ナ」


 ポルゴスを倒した僕達は、バレンとカイト君が暮らすスコッチ村へと足を運んでいた。

 バレンの攻撃で完全に戦闘不能となったポルゴスと他のオーク達は、僕達が騎士団に通報し、騎士団の人達が王都へと連行していった。もう2度と同じ様な悪さをしない様にね。


 騎士団がポルゴス達を連行していくのを他所に、バレンが村が心配だと言ったので、そのまま皆でこのスコッチ村に来たんだ。村の人達もカイト君とバレンを心配していただろうから、2人が戻って皆喜んでいるのが伺えた。何はともあれ無事で本当に良かった。


 村の人達の安全を確認し終え一旦落ち着いたのか、少ししてバレンが僕達の所に来た。 


「ジル、ティファ―ナ、ディオルド。今日は本当にありがとうケロ! 3人に会っていなかったら今頃どうなっていた事か」

「僕達は大した事してないよ。カイト君も村の人達も無事でよかった。バレンもね」

「ああ。村に帰る途中でも聞いたけど、ジルも“この力”が一体何なのか分からないんだよな? 不思議な力ケロね」

「そうなんだよね。僕もまだ分からない事の方が多いんだけど、少なくともこの力のお陰で皆と出会えた事は確かだからね」

 

 結局今回も何故この力が起きたのかは分からない。だけど、いつもみたいに少しでいいからバレンの力になりたい、カイト君を助けたいと思った瞬間に、あの魔力が出てきた事は間違いない。それが何でこうなるかって言うのは分からないんだけどね。僕も毎回不思議。


 不確定な要素が多い中でも、今日唯一違ったのはやっぱり、直接触れなくても魔力を渡せたって事。これ自体にそもそも意味があるのかないのかも分からないけど、今はどんな些細な事でも1つずつ情報を集めていくしかないと思ってる。


「―そんなクセェ台詞言ってる場合じゃねぇぞお頭」

「ディ、ディオルド」


 そんなつもりなかったけど、そう言われると恥ずかしくなるから止めてくれよ。


「お頭の青クセェ言葉とは違ってよ、さっきから“上質な匂い”がして気になってしょうがねぇ」

「上質な匂い? 何か匂いしてる? 私分からないけど」


 ティファ―ナがくんくんと匂いを嗅いでいるが、何の匂いか分かっていない様子。僕もディオルドが何の匂いを言ってるのか分からない。ティファ―ナと同じく、匂いを嗅ごうと思い切り空気を吸い込んでみたがさっぱりだ。


「お子様には分からねぇかティファ―ナ」

「凄い嗅覚してるケロなディオルド」


 ディオルドが何か勘違いして言ってる可能性もあったが、それは今のバレンの発言によって消えた。その匂いの正体は不明だが、バレンが驚きながら言った様子から察するに、匂いの元である“何か”が存在する事は間違いないだろう。まぁそれが何なのかが全くもって分からないんだけど。ヒントもないし。理解不能な会話だ。


 僕がそう思っていると、遂にディオルドとバレンの口から匂いの正体が明かされた。


「俺の好物だからよ」

「そうなのか。でもだからってここから匂いを嗅ぎつけるなんて異常ケロ」

「驚いたぜ。こんな王都から離れた村からまさか“酒”の匂いがするとはよ」

「スコッチ村は確かに小さな村だが、酒が有名で美味いと評判ケロ。酒場には人が多く訪れる」


 匂いの正体はお酒だったのか。って、匂いの正体が分かっても全然お酒の匂いなんかしないぞ。どうやって匂いに気付いたんだこの男。


「ほぉ、そうだったのか。どうりで上質な匂いがすると思ったぜ。安っぽい酒の匂いじゃねぇ」

「ホントに好きなんだな。俺は造ってないが、村の事を褒められると嬉しいケロ。でもやっぱりこの距離から匂いを察知するのは人間じゃないゲロ。ディオルド、助けてもらって難だけど……お前もしかして重度のアルコール依存症とかじゃないよな?」

「そんな訳ねぇだろ。人より鼻が良いだけだ」


 絶対そういうレベルじゃないぞディオルド。バレンも驚いているじゃないか。匂いが強いお酒だってあるのかもしれないけど、僕達のいる場所から1番近い家だって10mは離れてるよ。バレンの言った酒場って、村の奥にあるアレじゃないのかな? 家や建物もオーク達のせいで壊されている所もあるけど、普通の家とはちょっと造りが違うし、入り口に看板みたいなの立ってるし。


「ねぇバレン。ちなみに酒場って奥のあの建物?」

「そうケロ。酒はあの酒場とすぐ横の建物で作ってるからな。こんな所で匂いに気付くなんて有り得ないケロ」

「全く同感だ」


 人間は余程の好物なら察知出来るのだろうか。


「何コソコソ話してるんだ? 酒場は一部壊されている様だが、“酒も無事”みたいだ。早く行こうぜ」


 酒の安否まで嗅ぎ分けられるとかどういう事なの?? 君の前世は鼻のいい動物か何かですねきっと。


「私もお酒飲んでみたい!」

「俺も少し飲もうかなゲロ」

「よっしゃ!皆で勝利の宴と行こうぜお頭!」

「いやいや、僕まだお酒飲んじゃダメな歳だよ。ティファ―ナとバレンはいいの?」


 この世界ではお酒は17歳から。 他の種族は知らないけど、人間はそういう決まり。


「人魚族にそんな決まりはありませーん」

「俺もこの世界に転生した時は16だが、もう2年経って18歳ケロ。それに少し前からもう飲んでる」

「だってよお頭! 景気よくパァっと飲もうぜ」

「ダメダメ! 絶対ダメだって!」



 その数十分後、僕は酔っ払った。


 僕とティファ―ナとディオルドとバレン。それから酒場の店主さんと5人で飲み始めたけど、気が付けば村の人達が皆集まって大宴会になっていた。


 今日は皆にとって大変な日だった。今日ぐらい皆でワイワイ羽目を外してもいいよね。僕は既に頭がぼ~っとしている。何かよく分からないけどとても心地良い。段々瞼も重くなって眠気が凄いな。もうこのまま寝てしまおう。


「この村の酒は最高だな!」

「赤髪の兄ちゃん若いのに酒が分かってるじゃねぇか!」

「美味しーい!おかわり頂戴!」

「お嬢ちゃん強いねぇ~!」

「酒も皆も無事で何よりだ! じゃんじゃん飲もうぜ皆」

「やっぱこの村は最高ケロ!」


 皆が楽しそうに話している。

 僕はこの、賑やかながらも落ち着く声を子守歌に眠りについた―。


 酔っぱらってからの事は全然覚えていない。いつ眠ってしまったのかもね。でも僕は、ぼんやりと見た夢の中で思った事がある。


 1つは皆に出会えて本当に良かったという事。もう1つは皆が無事で本当に良かったという事。そしてもう1つは、誰に言ってるのか分からないけど、お酒は決まった年齢になってからじゃないと絶対にダメだという事。


 こんな僕を見てる人がいたら絶対に真似しないでほしい。この世界に限らず、どんな異世界でどんな種族でも、決まりがあるならばそれは絶対に守らないとダメだよ。こんな僕が言っても説得力が無いのは十分分かってる。それでも聞いてほしい。羽目を外した僕からの助言だ。僕は飲んでしまった事をとても後悔して猛反省しているんだ。


 何故そんな必死に訴え掛けているかって?




 それは今、《《起きてから》》人生で味わった事の無いとんでもない……それはもうとんでもない“頭痛”に襲われているからだ――!



 飲酒は決まった年齢になってから!


お読みいただき有り難うございます。

飲酒の描写がございますが、こちらは決してお酒を進めるものではありません。物語上のフィクションです。

飲酒は20歳になってからでお願い致します。


もし宜しければ☆評価やフォロー等頂けると嬉しいです!

宜しくお願い致します!

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