30 漂流したそれ
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~海辺~
「――で、結局する事ねぇからってこんな砂浜に座ってギルドの建設を眺めんのかずっとよ」
あれから僕達は、取り敢えずエデンを目指すのも悪くないと意見は一致したものの、結果何をするのが正解なのかも分からず、話しながらブラブラしている内にトビオさん達が建設している海まで来ていたのだ。
「いくら何でも早過ぎるだろ見るの!まだ全然準備中だそ。ボートにも乗ってねぇ」
僕達の視線の先で、トビオさん達は大量の資材を浜へと運んでいた。
「そんな事言ったって、一旦お金は集まったからやる事ないよ特に。それにティファ―ナもディオルドも、クエスト一杯受けたんだからゆっくりしなよ」
「何を呑気な。気遣ってくれて有難いが、生憎これっぽっちも疲れてねぇんだよな」
「私も同じく」
どんなスタミナしてるんだ君達は。
「何もせずにこのまま待つ気かお頭」
「そういう訳じゃないけどさ。だってエデンを目指すにしても、何をすれば良いか全く分からないでしょディオルドも」
「まぁな。でもギルドのトップに立つんだから、やっぱ戦力は必要だろ。後は金と実績もな」
「まだ完成しないかなぁギルド」
君達2人でほぼクリアしてると思うぞ。寧ろどれだけ戦力とお金と実績を整えればエデンになれるんだ?
そもそもエデンになれる条件って何なんだろう。
「退屈だなぁ。建設手伝うのもアリだが、俺らみたいな素人がいたら却って邪魔になっちまうしな。あ~、何か面白そうな事そこら辺に転がってねぇかな」
ディオルドはいつの間にか寝そべっていた。そんなのどこに落ちてるんだよ。
「あ。何か打ち上げられた」
突如そう言い出したティファ―ナ。
いくら暇だからって適当な事を言うんじゃない。打ち上げられたってどうせ魚か何かでしょ。
「見てよアレ」
ティファ―ナが指差す方を、僕とディオルドは何気なく見た。
静かに寄せては返す波打ち際。波がくる度、“それ”は一瞬海水に包まれるが、また直ぐに波が引くと“それ”が現れる。
2、3度それを繰り返し見ただろうか。言葉を口に出したいが、何と言っていいか分からない。だが、少し離れたここからでも、“それ”が魚でない事は皆が理解していた。ゴミか何かだろうか。いや違う。何故なら魚やゴミとは到底姿が違うのだ。何か少し違う気もするが、恐らくあれは……。
「「「人だ!」」」
僕とティファ―ナとディオルドの3人は、そう同時に言葉を発したのだった。僕達は急いで漂流したであろうその人の元へと向かった。
走って向かえば僅か数秒の距離。だが、この何とも言えない違和感を抱いていたのは僕だけじゃなかった。
「あれ人だよな……?」
「多分。でも何か……」
次の瞬間、その姿を確認した僕達は固まった―。
♢♦♢
~街・とある飯処~
――バクバクバクバクバクバクバクバクッ!
運ばれてくる料理が次々と食べられていく。
テーブルの上は注文された料理がズラリと広げられ、食べ終わったお皿が塔の様に積み重ねられている。最初は少し引いたが、ここまで食べっぷりがいいと逆に気持ちが良くなってきた。
「凄い食欲……」
「私も何か食べたくなってきちゃったから注文しよっと」
「俺も何か食うかな」
ついさっきまで、まだお腹空いていないと言っていたティファ―ナとディオルドだったが、どうやら釣られたらしい。無理もない。僕も何か食べたくなってきちゃったよ。
メニューを見て僕達3人も料理を頼んだ。
その間でも、“君”はずっと美味しそうに料理を食べ続けているね。
15分後―。
「――いや~!ご馳走さん!生き返った《《ケロ》》!」
テーブル一杯にあった料理は綺麗に全て平らげ、お皿の塔が更に高くなっていた。
「ハハハ。それは良かった。でさ……」
本題はここから―。
何せこっちは気になる事だらけなんだもん! 落ち着いたみたいだし、順序良くゆっくり話を進めていこうか。
「ずっと気になってるんだけど、どうしよう。どこから聞けば……?」
「アナタ何者なの?」
やっぱり先ずそこでよね。僕が戸惑っていると、ティファ―ナが単刀直入に聞いてくれた。
「申し遅れた。俺は『バレン・シアフロッガ』 君達のお陰で助かったゲロ。ありがとう」
ダメだ。見た目のインパクトが凄すぎて名前が全然入ってこない。もう忘れた。
「驚いているみたいだな。まぁそんな顔されるのにも慣れてる。ズバリ、俺が“何なのか”を知りたいゲロね」
「全くその通り。お前人間なのか? それともその見た目のまま……」
普段はっきりと物申すディオルドも、若干言葉に詰まっている。無理もない。多種多様な種族がいるこの世界でも、明らかにイレギュラーな存在ですよアナタ!
「そう。ご覧の通り、俺は見たまま“蛙”だ。ただ二足歩行するし言葉も話す。見た目は蛙だがほぼ人間と同じと思ってくれていいケロ」
慣れた様子でそう説明する蛙……じゃなかった。確か、名前はバレンだよね?
きっと彼は、ん? 男でいいんだよな? 俺って言っているし。でも一応確認しておこう。
「あ、あの、バレンさんは……男ですよね?」
「バレンでいいよ。俺は男だ。雄と言うべきケロね」
「お前ずっと蛙なのか? そんな種族見た事ねぇぞ俺」
「私も見た事ない!蛙さんは普段どこで暮らしてるの? 陸? 海?」
「何で漂流してたんだよ」
「好物は何?」
待て待て待て。一気に質問したく気持ちは分かるが、最後のティファ―ナの質問なんて絶対どうでもいいから。
「2人共落ち着きなって。そんな一遍に聞いたら大変だよ」
「ゲロロロ。大丈夫だよ。慣れているしね。先ず俺の1番の好物はハンバーグだケロ」
しかもそこから答えるんか~い。おっと、思わずツッコんでしまった。
それからバレンは、嫌な顔一つせず、僕達の疑問に全て答えてくれた―。




