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26 一世一代の勝負

「――2億か。お頭、ティファ―ナは1人でいくら稼いだ?」

「………………」

「ん? お頭?」

「………………」

「おーい! なぁお頭ってば! 大丈夫か?」

「……えっ、あ……うん! だ、大丈夫大丈夫!」


 いけない。完全に意識が飛んだ。


「だからティファ―ナが稼いだ額はって」

「えっと、1週間で約1千万Gだよ」

「思ったより“少ない”な」


 いやいや、異常な額だよ!何を言ってるんだディオルド。


「ティファ―ナって冒険者ランク何?」

「先日Bになったとこかな」

「そう言う事か。じゃあやっぱり楽勝だな。お頭、俺とティファ―ナが2億……いや、それ以上稼ぐからよ、スパッと決めてくれ。建てようじゃねぇか、その海上ギルドってやつを」


 ディオルドは自信ある顔でそう言い放った。

 こんなにも非現実的な無茶な話をしているのに、不思議とディオルドの言葉には説得力があるんだよな。


「賛成!ジル。これでもうお金の心配ないでしょ?私とディオルドが直ぐ稼いでくるわ」

「また頼もしい仲間を連れて来たねジル君」

「さぁお頭!後はアンタが決断するだッ……「そんな簡単に決められない!!」


 自分でもビックリした。まさかこんなに声を張ってしまうとは。予想外だ。


「ジル?」

「どうした急に」


 何で皆が僕を心配そうな目で見てるんだよ……違うだろ……そうじゃなくて……。


「僕の決断が、2人を危険な目に遭わせてしまう。それが分かってて、そんな簡単に決められる訳ない」


 ティファ―ナもディオルドも凄く軽く言ってるけど、そんな簡単な問題じゃないだろ。


「そりゃビビるさ。2億なんて大金、一生働いても稼げるか分からない。海上ギルドがそんな大金を掛けてまでやる事なのかも分からないし、先の見えないこんな事で、ティファ―ナとディオルドを危険な目に遭わせるのは僕は嫌だ!

しかも言い出した張本人が1番無力で何も出来ない。ギルドを建てられるのはトビオさん達、その資金を稼ぐのはティファ―ナとディオルド。皆に頼りっぱなしで、結局僕は何もしていないじゃないか!」


 言葉が止まらなかった。


 今まで溜め込んでいた自分の情けなさや不安が一気に溢れ出してしまった。八つ当たりもいいとこだね。自分の無力さを主張して何の意味があるだよ。


 でもね、出来る人ばかりじゃない。僕みたいに無力な人間だっているんだ。

 本当に情けなくて惨めで自分にイライラする。ティファ―ナ達みたいに、自分にあれだけの魔力が与えられたら、真っ先に自分をぶっ飛ばしてやる絶対。


 ……ふぅ。

 いきなり僕が取り乱しちゃったから皆も困惑してるな。どこまで迷惑を掛けるんだ僕は。皆気を遣って、僕が落ち着くのを待ってくれているじゃないか。


 よし。もう大丈夫。先ずは皆に謝らなっ……「泣き言は終わったかよ、お頭」


 ん??

 ちょっと思っていたのと違っ……「出来ねぇ事は出来ねぇ。割り切れよ。無力の主張なんてしてる暇ないぜ」


 ディオルドの言ってる事が正しいんだけどさ、先ずは僕に謝らせて……「気が済んだらササっとやり始め……「うるさいなディオルド!」


 先に僕に謝らせてくれよと思っていたけどもういい!


「そんなに言うならやってみせてくれ!心配してる僕が馬鹿みたいだ!もういい、こうなったら出たとこ勝負だ!僕は海上ギルドを建てる!もうこのまま皆を巻き込んでとことんやってやる!誰にも文句は言わせないぞ!」


 ジル・インフィニート。一世一代の大勝負だ―。


「「「おおぉぉぉ!!」」」


 皆は拍手で盛り上げてくれた。


「やっとその気になったか」

「格好いいジル!私も頑張っちゃう」

「ジル君らしくない良い啖呵を切ったね!」

「あ、ごめんなさい、調子に乗って……」

「いや、最高の返事を聞いたよ」

「流石お頭だな。誰にも文句は言わせないって、駄々こねてたの自分なのによ。ハハハ」


 冷静に言われると恥ずかしいじゃないか!


「お、何か盛り上がってるな」

「何かあったんですかトビオさん」

「おお。お前達」


 僕達がワイワイガヤガヤやっていた声が聞こえたのか、トビオさんの仕事仲間の人達が奥から出てきた。

 するとトビオさんが、仲間に向かってこう言った。


「皆! 決まったぞコレ。ギルドファクトリー総員でいくぞ!」


 トビオさんが海上ギルドの事が書かれた紙を上に掲げると、それが合図かの様に、その場にいた全員が拳を上げて更なる盛り上がりを見せた―。


 勢いで言っちゃったけど大丈夫かな……?


「また悩んでる訳じゃないよなお頭」

「ディオルド」

「大丈夫。上手くいくさ。それにお頭は無力じゃない。ティファ―ナにも俺にも特別な力を与えてくれたじゃねぇかよ」

「そう思ってくれてるなら助かるけどね」

「まぁこの魔力について、詳しい事が分からないってのが1番気になるけどな。何なんだこの力?」


 やっぱりディオルドも不思議に思うよなそりゃ。まさかまた起こるなんて僕も思わなかった。それにあの時見た“紋章”……。あれティファ―ナと同じだったな。やっぱり僕の魔力と関係してるのかな?


「それは僕が聞きたいぐらい。自分の力なのに理由も出し方も分からないんだ」

「そっか。魔力商人なんて聞いたことねぇもんな」

「そういえばディオルドって何の職種なの?」

「俺? 俺は【侍】だ」


侍ね。だから剣じゃなくて刀なんだ。


「ディオルドのその体質? っていつからなの?」

「ああコレか。生まれつきだな。10歳の職種適正の前にはもう変異体質だと分かっていたよ。酔うって事もガキの頃に経験出来たしな」

「それは大変だったね……。本当にその刀じゃないとダメなんだ」

「笑えるだろ。ありとあらゆる武器と方法を試した結果がコレだ。まぁ無駄に魔力も使えないお陰で剣術だけは誰にも負けねぇけどな。他に“くだらない技”も身に着いたけどよ」


 ディオルドも苦労してきたんだな。強い人って初めから強いと思ってたけどそうじゃないよな。皆それぞれ努力してるんだ。


「こんなつまらない話はもう終えてよ、そろそろ行こうぜ」


 ディオルドがそう言い、僕達は一旦ギルドファクトリーを後にした。


 そして、資金を稼ぐ為、僕達は冒険者ギルドへと向かった―。

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