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25 ビビる2億

 ♢♦♢


~ギルドファクトリー~


 ――ってな具合で今に至る。


「早速海上ギルドの話を始めていいかい?ジル君」

「あ、はい!お願いします」


 トビオさんは何やら沢山の資料をテーブルに広げ、僕達にギルドの説明を始めた。


「ん~、どこから話せばいいか……。ジル君、結論から言うと、海の上にギルドを建てる事は建てられる」

「本当ですか⁉」


 それが聞けただけでとても嬉しいのだが、トビオさんの顔を見る限りそう単純な話では無い様だ。


「ああ。建てる事は問題じゃない。それよりも、建てる場所だね。勿論ジル君の話で海の上ってのは分かるんだけど、問題は、どれぐらい陸から離れた場所かって事なんだ」


 成程。子供でも分かる問題だ。建設するのに当たり前に存在する“足場”が、海の上となると当然無い。


「足場が無いって事ですよね?」

「そう。でも足場は造ればいいだけの話だから大丈夫。それよりも、海の深さが問題。足が浸かるぐらいの深さでいいならまだ大丈夫だけど、船を出すような深さだと正直かなり大変だ。ジル君は海のどこに建てようと思っているんだ?」


 海のどこに……。そうか、そこまでは具体的にイメージしていなかった。でも、何かあった時の為、陸の近くに建てるのに越した事は無い。けどそれだと、欲張って申し訳ないが“インパクト”に欠ける。ギルドは建てて終わりじゃない。そこから安定した仕事を貰って、生きていかなきゃいけないんだ。


 商売として考えるなら何より先ず、1人でも多くの人の気を引く仕掛けが絶対に欲しい。

 海上ギルドと名乗り出すなら、中途半端な所ではなく、僕が捨てられた様に海のど真ん中にドンッ!とギルドを建てたい。我が儘言ってすいません。


「もし出来るなら、陸からでもギリギリ見えるくらいの位置がいいです。すいません……」

「成程~、そうきたか。やっぱり奥の方に建てたいんだよね?」

「はい。凄く申し訳ないのですが……。でも迷惑は掛けたくないので、調子乗って無茶言ってる様でしたらキッパリ断って下さい」


 ホントに図々しい事をお願いしているな。素人の僕でも凄く無茶を言っているのが分かる。話をまともに聞いてくれただけでも有難いよホント。お世話になったトビオさんをこんな困らせてしまうなんて、何をやってるんだ僕は。


「ジル君!悪いけどそれは出来ない。大きな会社ではないが、ここには一流の職人が揃っている。こんな面白い話を簡単には諦めないよ。海上ギルドの話をした時ね、ギルドファクトリ―の皆も流石に驚いていたけど、気付いたら“どうやって建てるか”を楽しそうに話していたんだ」

「トビオさん……」

「だからジル君も、自分が建てたいと思うギルドに妥協しないでほしい。断るなんて以ての外だよ」


 どこまで素敵な人なんだ。トビオさんもギルドファクトリーの皆さんも。これだけで泣けてくるよ。


「泣いてるのジル?」

「そんな暇あったら考えるんだなお頭。シンプルに言っても、相当な金と時間と人手が必要だぜコレ」

「彼の言う通りだよジル君。断るなんて以ての外と言ってしまったけど、問題は建てにくい事以上に、莫大な費用が掛かってしまう事なんだ。もしジル君がウチでいいと言うなら、その時は俺達も全力で造らせてもらうよ」

「あ、ありがとうございます!絶対トビオさん達に造ってもらいたいです!」

「ハハハ。それはこちらこそありがとう。でもどうする?本当に建てるなら、1番はやっぱりお金の問題だ。言いにくいけど、奥さんが稼いできた分だけじゃ到底追いつかない。寧ろ大の大人が一生働いても届く額じゃないかも……」


 想像しただけで恐ろしい。どれ程のお金が掛かるんだ全く。どうしよう。僕が言い出した事だけど、スケールが大き過ぎて1人じゃ対応出来ない挙句、やるとなるとティファ―ナにもディオルドにも迷惑を掛けちゃう。


 僕は本当にそこまでして海上ギルドなんて建てたいのか?

 そもそもそこまでして建てる意味があるのか?

 根拠も理由もないただの思い付き。しかも言い出しっぺの僕が1Gも稼げていない。そんな奴がどの面下げていこんな話をしているんだ。


 やっぱりダメ。止めておこう。

 ティファ―ナにもトビオさん達にも申し訳ないが、これは非現実的過ぎる。


「すいませんトビオさん。やっぱり海上ギルドは……「――建てるよジル!」


 ティファ―ナ……⁉


「今更諦めるなんて私認めないからね。どうせ無理言って申し訳ないとか思ってるんでしょ」


 図星です。


「そう言う事か。急に歯切れが悪くなったから何をグダグダ悩んでるかと思ったが、ビビッたって事か」

「ビビるとかそういう話じゃないだろディオルド」

「じゃあ何だよ。話を聞いてると、お頭が自分で言い出した事なんだろ?コレは。だったら最後までやり遂げるのが筋ってもんだろ。軽い気持ちで言ったのか知らねぇが、皆をその気にさせて自分だけビビッて降りるなんてダセェ真似すんなよ」


 今さっき一緒になったばかりのディオルドに何が分かる……と言いたくなったけど、ど正論過ぎて何も言い返せません。はい。


「そうよ。ビビッてないで攻めるわよジル!」

「ティファ―ナの方が肝っ玉座ってるな。入団試験の時から分かってたけど。どうするんだお頭。嫁はやる気満々だぜ?」

「お金ぐらい私が稼いであげるわ」

「だってよ。頼りになる嫁だな。旦那はヒモでいいってさ。それに、金が心配なら俺も稼いできてやるから安心しろって。お頭に貰った魔力で何故か力が漲ってるからよ」

「いや、でも、いくら2人が頑張ってくれたからって、稼げる額とは限らないし……」

「トビオさん……だっけ?もし海のど真ん中にギルド建てるとなったら、ぶっちゃけいくら掛かる?」


 ディオルドのストレートな質問。慎重で優柔不断な僕とは真逆だ。でも、商売や交渉に時には必要なスキル。僕が持っていないものだ。


「単刀直入に言うよ。出来る限りコストは削減する。ただそれでも、安く見積もって……200,000,000G!」





 2億……………………………………。


 僕の思考回路はここで停止した。


お読みいただき有り難うございます。

もし宜しければ☆評価やフォロー等頂けると嬉しいです!

宜しくお願い致します!


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