第5話(ボディーガード)
ーーその日から、神子さんの部屋でtoto英才教育が始まった。
「今日は何曜日か分かる?」
「土曜日です。それが何ですか?」
「土曜日はtotoにとって熱い日なのよ。しかも午前中だけ。なぜだか分かる?」
「当たりやすいとか」
「その通り! 筋が良いかもね、虎二君」
俺は、イケイケ女子と話した事すらなかった。幼少期から避けていた。しかし、神子さんはとても親身になってくれる。これも生まれ育って環境が似てるせいか。
「ありがとうございます」
「今10時ね。買いに行くよ」
「もうですか? まだ心の準備が…………」
「初陣は誰だって緊張するもの。虎二君はまず、totoゴール3を買いなさい。これに書いて。申し込みカードよ」
神子さんから1枚の紙を手渡された。totoゴール3と書かれてる。
「どうやって書くんですか? マークシートみたいですけど」
「ランダムチャンスって所を塗りつぶして」
今度はボールペンを渡される。
「ランダムチャンスって何ですか?」
「ナンバーズでいうクイックピックよ。つまり運任せ」
「そんなんで当たるんですか?」
「意外とイケるのよ、これが。ビキナーズラックを信じなさい。おっと聞き忘れてた」
「何ですか?」
「一週間にいくら投資出来る? 最低1万円は要るよ」
「資金はそれなりにあります」
「そう。じゃあ、ダブルの6つ、6400円にマークして。これで50パーセントはカバー出来るよ」
「分かりました」
俺は、神子さんに言われた通りにマークシートを塗りつぶす。
「オッケーオッケー。じゃあ、くじ売り場に行こう。車は出してあげるから」
「ありがとうございます。しかし、totoってコンビニでも買えませんでしたっけ」
「ネットでも買えるわよ。でも、くじ売り場が一番なのよ」
「そうなんですかー」
「くじ売り場のおばちゃんが笑顔でニコニコしてる、感じの良い所が狙い目よ」
俺は半信半疑で、神子さんのSUVに乗せてもらい、近くの宝くじ売り場に着く。まずは神子さんから買う。toto6400円とビッグ8口を買った。次は俺の番だ。俺は、totoゴール3と100円ビッグというやつを30口買う。
俺と神子さんは宝くじ売り場から駐車場に向かって歩いてると。
「言おうと思ったんだけどさ」
「どうしたんですか?」
「100円ビッグは今、キャリーオーバーしてないから微妙よ」
「そうなんですか。まずったな」
「まあ、横取り40万が居なければ1億円よ」
「凄いですね。億ですか」
「まあ、ビッグ系は運任せの極みだけどね」
帰り道。神子さんの運転でアパートに帰る。
「ありがとうございました、神子さん」
「どういたしまして。話変わるけど、虎二君は格闘技やってる?」
「毒親の教育虐待で散々、柔道やらされましたよ」
「ねえ。totoが当たってからでいいから、私のボディーガードになってくれない?」
「DV夫から護る訳ですね? 任せて下さい」
「ありがとう。頼りにしてるからね」