第3話(現代のえた、ひにん)
ーー数日後。俺の口座に10万円が振り込まれた。慰謝料の一部だ。一括で払えないのか、雑魚な毒親が!
ーー更に数日後。最高裁の日程が決まった。すると、俺の携帯電話が鳴る。
「知らない番号だ。イタズラ電話かな。無視無視」
ビー…………ビー…………。なかなか諦めないな、こいつ。あっ、録音メモになった。国際ロマンス詐欺かな?
『稲葉虎二さんの携帯で間違いないですか? 私、少子化庁の近藤と申します。突然、お電話してすみません。今、忙しいですか? なるべく早く折り返してください』
俺は恐る恐る電話に出た。
「はい」
「ああ、良かった。初めまして。少子化庁の近藤と申します」
「用件は何ですか?」
「テレビ観てます?」
「テレビはあんまり観ないけど」
「今ねえ、稲葉さんの事でワイドショーを賑わせてましてね。毒親成敗だなんて」
「良いことだ」
「ダメですよ~。絶対ダメ」
「何が?」
「少子化庁としてはね、稲葉さんみたいに親に制裁を科すなんて、これから子供を作ろうって人が減ってしまいますよ」
「毒親が全て悪い。俺には関係のないことだ。話しは終わり?」
「いえまだ。単刀直入に言います。告訴を取り下げてほしいのですが。勿論、タダとは言いません」
「いくらくれるの?」
「100万円でどうでしょう? 悪い話じゃないと思いますよ」
「桁が4つ違うよ」
「100円でいいんですか? すぐに支払います」
「ふざけるな! 100億円だ!」
「本当に100億円を貰おうと思ってます?」
「当たり前だ。お前とはもう話さん。二度と電話掛けてくるな」
「知りませんよ? もしっ……」
ピッ。俺は通話を一方的に切った。俺は100億円で贅沢するんだ! 毒親に更なる懲罰を!
ーー俺は不安定な慰謝料が信用出来ず、生活保護を受けることにした。市役所の窓口へ行き、手続きをするが…………。
「あの~。生活保護を受けたいのですが」
「おはようございます。本気ですか?」
「本気だ。月65000円の障害年金じゃ生活出来なくてね」
「カネあるじゃん。働け」
「は?」
「だから、カネ貰ってんじゃん」
なんだこいつ。生活保護を申請すると人間扱いされないのか?
「足りないから申請に来てるんだろ」
「贅沢したいの? 生活保護を受給するような奴は人間じゃないですよ、アハハ」
これが生活保護の実態…………。こいつを殺して楽になるか? いやダメだ。
「精神の障害者手帳一級を持ってるんだけど」
「何、自慢気に言っちゃってんの。人擬きは帰れ」
「次、来るときは…………」
「何度来ても同じだ」
「次、来るときはガソリン持ってお邪魔する」
「警察ーーー! 警察呼んでーーー!」
ーー警察官が数人、駆け付ける。俺は、警察の任意同行に従わなかった。そのため、警察官数人が俺の襟や袖を掴み、壁に体を押し付ける。
「痛い痛い。放せ」
「大丈夫だから。危ないよ危ないよ」
「何が大丈夫だよ!? 痛いって言ってるだろ! 危なくしてるのはお前らだろ!」
「はいはい。騒がないでね~。皆見てるよ~」
俺は一瞬の隙を突き、警察官の1人を小外刈りを転ばす。
「公務執行妨害で現行犯逮捕する!」
「待てよ! お前らから暴力してきたんだろ! ふざけんなよ!」