第2話(判決)
ーー第1回口頭弁論が終わったその夜。家で毒親は夫婦喧嘩をする。
「お前が足りなく産んだのが悪いんだからな! 世間体を考えろ!」
「何よ! あなたの両親がいとこ同士の結婚だからおかしくなったのよ?」
「父さんと母さんの悪口を言うな!」
「何が母さんよ。中学生になっても一緒にお風呂入ってたマザコン」
「何だと!?」
ガシャン! 毒親同士が瀬戸物の食器を投げ付け合う。救いようのないバカどもだ。
ーー数日後。2回目の裁判が始まった。
俺は、毒親の弁護士から証言台で尋問を受ける。左手が震える。怖い。
「そろそろ許しませんか」
「許す? 誰を?」
「勿論、ご両親ですよ。育ててもらった恩を仇で返しちゃいけない」
「毒親は極刑だ。最高裁まで戦ってやる」
「でもねー。100億円が欲しい訳でしょ? そんな法外なおカネをどうやって払うの? 無理を前提に要求してるでしょ」
「前回の事忘れたの? それとも、お前は発達障害? 今からガーファを超えろ」
「普通に考えて、不可能だよね。ご両親には借金もあるのだし」
「何をもって普通という? カーネルサンダースは千回も営業に失敗した。ウォルト・ディズニーは7回も自己破産してディズニー・ワールド完成前に亡くなった。それに比べたら楽勝だろ」
「だーかーら! 普通に考えて不可能でしょ」
「不可能だなんて誰が決めた? 一生身を粉にして、俺のために働け」
この弁護士。何をモジモジし出してんだ。負けを認めたかな?
「以上で尋問を終わります」
ーーその後も何度か裁判が開かれ、その度に俺は思いの丈をぶちまけた。そして、判決の日。検察は毒親2匹に2年6ヶ月の懲役を求刑していた。
「それでは、判決を言い渡します。ですが、その前に。被告人の二人はよく聞いてください。あなた達は子供を虐待したのに、ケロっとしている。反省の色も見えず、甚だしい態度だ。極刑を言い渡したいのは山々だ。しかし、裁判官が感情的になるのも如何なものかと思う。…………判決を言い渡しますーー」
毒親がゴクリと息を呑む。
「ーー主文。有罪、懲役1年、執行猶予3年に処します」
俺は怒りがこみ上げてきた。軽すぎる。
「極刑にしろよ! 100億円は!?」
「原告人。上告したければ、どうぞ」
「すぐにでも上告します!」
ーー俺は民事裁判でも戦うために、検察官に加え、弁護士を雇った。民事訴訟の判決は……?
「判決を言い渡します。慰謝料400万円」
負けた。民事裁判でも負けた。100億円か死刑じゃなきゃ嫌!
俺が自殺してれば、もっと重い罪に出来たのか? 苦しい…………苦しい…………。待てよ? 俺が毒親2匹殺しても情状酌量? いや、あんな連中のために俺がブタ箱に行くことない。