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その9


「カラオケか、てっきり漫喫かと思った」

「なんでみんな揃って漫喫に行かなきゃなんないのよぉ〜?」

「そんなんだから篠田は篠田なのよ」

「おい速水それどういう意味だ!?」

「私は行ってみても良かったけどなぁ」

「流石七瀬! 話がわかる」

「行った事ないのか美子は?」

「美子…… ねぇ〜?」



木村が何か意味ありげな顔で俺を覗き込む。 やっぱそんなに違和感あるか?



「葎花そんなに見つめられたら穴が空いちゃうよぉ〜って…… 何かな?」



今度は美子を見つめ木村は唸っている。



「う〜ん…… なんかよくわかんない!」

「まぁ美子だから仕方ないよ」

「え? え!? 私の何が仕方ないの? ねぇ、ねぇ!!?」

「さぁ行こ行こッ!」

「ちょっと葎花〜!」

「まったく…… 由比ヶ浜達はどうするの、ウチらと行く? 行かない?」

「行く行く! なあ玄!?」

「あ? ああ…… 宮野はどうする?」

「行く…… かな」



ガシッと亮介に肩を組まれた、そしてヒソヒソと俺に話す。



「お前良かったじゃん? あの速水と一緒じゃん、てか最近お前に女寄ってき過ぎじゃね? そんな奴じゃなかったのにズルいぞ! せめて木村は俺に渡せよ?」

「はぁ? そんなの俺がどうこう出来る事じゃないだろ」



まぁでも確かに美子と仲良くなったらこいつの言う通り速水まで付いてきた。 でも速水が付いてきたところで速水は俺を好きになるなんて事はあるはずがないんだけどな。 俺あいつが男子と喧嘩してる時見てるだけだったし。



「玄ちゃん!」

「うわッ!」

「2人で何コソコソしてるの?」

「七瀬、これは男同士の秘密の」

「え…… ?」



美子の顔が曇った。



「男同士で…… 秘密のアレ……」

「違うだろ! お前の考えてるのは!」

「なあ、今までキラキラしていて気付かなかったけど七瀬って結構天然か?」

「ああ、変なとこ抜けてるよな」

「え? 変なとこってどんなとこ?」

「いや、ほら行くんだろ?」

「待って玄君!」

「ふッ、玄にここまで差を付けられるとは。 ガーン……」



カラオケに着き部屋を借りて亮介の隣に座った。 男は亮介しか居ないので自然とそうなり向かいには美子達が座る。 そして若干離れた所に宮野は怯えたように座っていた。



「遥ちゃんもっとこっち来ようよ」

「わッ!」



そんな時に美子は宮野の両手を掴んで自分の方へ引き寄せるが宮野は美子の肩に手をやり離れようとする。



「え!? い、嫌だった?」

「はぁー美子、遥は前からそういう子なの。 ウチはこうなりそうってなんとなくわかってたけどね」

「そうそう、まぁ遥もそれなりに歌っちゃってよ! 歌わないと思うけど」

「ええ〜? それじゃつまんないよ、私だって遥ちゃんと同じ人間だから何も変わんないよ、ね? 遥ちゃん怖くない怖くない!」



美子は小動物を愛でるように宮野をよしよしした。 それがなんともシュールというか美子の雰囲気がそうさせているのだろう。



「ほら、美子だってこんなに変わった奴なんだからさ、宮野もリラックスしろよ」

「え!? わ、私至って真面目にしてるのに??」

「あははッ! 由比ヶ浜わかってんじゃん。 うん、美子はこの通りの子だからさ」



速水が俺の言った言葉に反応した、なんか美子と同じく遠巻きから見てる存在の奴からこんなに笑顔で返されると少し照れ臭い感じがする。



「この通りってどの通りなの〜? さっきから葎花にも揶揄われるし琴音までなんて酷いよぉー!」

「ありゃー? でもアタシそんな美子の事好きなんだからいいじゃない〜?」

「まぁそういう事、だから揶揄ってるけどバカにしてるわけじゃないからね」

「あ、なーんだ! 私も琴音と葎花の事好きだよ!」



相変わらずチョロい、まぁ美子のそんなとこが速水達はいいのかもしれないな。



というか歌う気配ないなこいつら…… お喋りばっかしてるし。 まぁ女子の前で歌うとか今となっちゃ恥ずかしい。



お喋りが止むと速水は携帯弄り出したし木村は鏡を置いて顔をチェックしている。 そして美子は楽しそうにデンモク操作しているが曲を入れる気配はない。 まとまりねぇなこいつら!



ん? 速水の奴携帯で何見てんだ? 



速水にしては携帯を見ながら緩い表情を見せていた。 …… と、俺の視線に気付いたのか携帯を見ていた時とは打って変わって睨み殺すような視線を俺に向けた。



「琴〜」

「ん!?」



そこから速水は急に隣に居た木村に呼び掛けられたので携帯をパッと膝に置いた。 なんなんだ?



宮野は宮野でその3人の様子をチラチラと見てソワソワしているがそんな様子を見てしまったこっちとしてもなんだかソワソワしてくる。



「なあ玄、これってどうすればいい? 俺ら歌った方いいか? アニソン入れても引かれないか?」

「いや俺に聞くなよ、てかこいつらの前でアニソン入れる気なのか?」

「だってあいつらお喋りしてたと思ったらひとりひとり個人プレーし始めるし俺らが仲良くお喋りしてても絵的にキモいし同級生の女子とカラオケなんてなかったし、しかも七瀬達だろ、迂闊に動けねぇ……」

「まぁそれもわかるがなんで迂闊に動けねぇ中でアニソンの選択肢が入るんだ?」



すると美子はソワソワしている宮野に話し掛けた。



「ねぇ遥ちゃん、何歌う〜?」

「えっと…… 私はッ」

「これなんかどうかなぁ? アニソンなんだけど大丈夫?」

「え? あ、その……」

「ねえ玄ちゃん、アニソンなんだけど大丈夫?」

「俺?! まぁいいんじゃね?」



いきなり俺に振るなよな! でもなんだ、美子はアニソンも大丈夫なのか。 考えてみれば弟が居るから弟大好きな美子は一緒にアニメとかも観てそうでその辺もわかるのかもしれない。 



「例えばこれとかさぁ〜……」



美子は俺の隣に来てデンモクを見せた、どれどれと見てみると何これ? 絶対弟なんかと観てないようなアニソンのチョイス…… つうかこれ美子が歌うところ想像出来ないんだが? 



「お前歌えるの?」

「え? 玄ちゃんのだよ?」

「…………」



俺のかよ!! 何勝手に選んでんだよ便利万歳……



「うーん、ピンと来ないかぁー。 ダメだった宮野さん」



再び美子は宮野のところへと戻って行った。



ま、まぁそれはそれとして美子の奴ちゃんと宮野の事気遣ってるんだな。 だが……



「わ、私ちょっとトイレに」

「へ? あ、うん」



宮野は居たたまれないという感じに部屋から出て行ってしまった。



「あ〜。 遥ったら恥ずかしくなっちゃって出てったよ」

「そうなの? 緊張を解そうとしたのに……」

「だからそういう子なのよ。 カラオケは遥にしたらやっぱレベル高かったかぁ、よく見れば可愛い顔してるのにあんなリアクションじゃあねぇ」

「うぐぐ…… 私もトイレ!」

「はーい、行ってら!」



美子もトイレに行ってしまった。 




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