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88/95

その88


少し経ったある日の事……




「あれ!? み、美子!!?」

「うん、何?」

「あんたどうしたのよその髪ッ……」



あわわと速水が美子に尋ねた。 そう、美子は髪をバッサリと切ってしまったのだ、首に掛かるくらいのショートに。



「由比ヶ浜、あんたまさか美子と別れたんじゃ?」

「美子と一緒に居るのになんでそうなる……」



速水がギロリとこちらを睨んでドスをきかせた声で言う。 



「そんなんじゃないよ、前から思ってたんだけど食べる時髪長いと邪魔だから切っただけだって」

「は?」

「アタシはそんな事だろうと思ったよー? それに美子って由比ヶ浜にぞっこんなんだからそうそう別れるわけないじゃん? 由比ヶ浜は知らんけど」

「その通り! 葎花流石ぁー! って今最後に不穏な事言ったよね!? 玄ちゃんそうなの!!?」

「どう見てもお前がからかわれてるだけだろ?」



それでも不安に思ったのか美子は俺の肩を両手でギュッと掴んだ。



「美子怯えさせてどうすんのよ!」

「いたッ! 琴にゲンコツされたじゃーん、美子のバカぁ〜!」

「あははッ、ごめん葎花」



平和だ、こんな風にこれから美子と高校生活を続けていくんだろうなぁ。



「そういえばもうすぐクリスマスだね!」

「そうだけど?」

「じゃあお祝いしよう!」



美子が突拍子もなしに言ってきた。 まさか今日とかじゃないよな?



「今日だよ! 私クリスマスに予定あるからさ」

「え!?」

「やっぱり……」

「だと思った、美子がいきなりクリスマスの話振るから。 予定って何かなぁ〜?」

「あ〜! 遥ちゃんも誘わなきゃ!」



木村に問い詰められた美子はクラスに戻って行った。 そして木村にドンと胸を叩かれた。



「やるじゃん美子も! 予定ってあんたと過ごす予定の事でしょ?」

「なんも聞いてないし。 てか美子って仮にそんな予定あっても直前で言ってくる奴だろ」

「まぁ良かったじゃない美子とクリスマス祝えてさ」

「あらら〜? 琴も由比ヶ浜と美子の間に入りたかった?」

「なんでウチが2人の間に入らなきゃいけないのよ!? 由比ヶ浜はさておき美子が幸せそうなんだから邪魔するわけないっしょ」



そんなこんなでいきなりクリスマスっぽい事をする事になった、言い出しっぺの美子の家で。



遥も来て木村が亮介も連れて来て何気に人が多いがいきなりだから何も用意はしてない。



「へぇー、ここが七瀬の家なんだ」

「亮介、ジロジロ見るんじゃない!」

「いやそんなジロジロ見てないだろ!」

「はいはい、イチャこかなくていいから」

「あー、琴ったら美子には過保護なくせにアタシには辛辣〜!」

「玄君美子ちゃん、私も来て良かったの?」

「当たり前じゃん!」



美子は遥に抱き付いた。 



「あっちもイチャついてますけど?」

「遥だからいいわ」

「遥だといいのかよ! 由比ヶ浜妬いちゃいやーよ〜」

「んなわけないだろが」

「………… 美子ちゃん?」

「ん? 何?」

「あ、ううん…… なんでもない」



美子の部屋の近くまで行くと何やら話し声が聞こえてきた。 それは直也の部屋からで俺達の声が聞こえたのか顔を出した。



「あ、姉ちゃん達だ!! お! 玄兄ちゃんも居るー!」

「あれ? ナオちゃんデート中?」

「姉ちゃんには関係ないもんねぇー!」

「あーら、直也久しぶり」

「こんにちは直也」

「あー、琴音と葎花か。 それと遥」



偉そうな態度、速水と木村は怒らないのかと思い見てみると至って普通。 速水は凄くニコニコしているけど。 そうか、もう知ってるんだもんな。 亮介はポカンとしているが。



「とにかく邪魔すんなよ!」



そしてバタンとドアを閉められた。



「ううッ…… 最近ナオちゃんお姉ちゃん離れが進んで悲しい」

「なあ、七瀬の弟って七瀬に凄いそっくりだな?」



初見の亮介が俺にコソッと言うが……



「性格はあっちはクソ生意気だけどねぇー。 5年後が楽しみだわ」

「こら葎花! 美子の弟なのよ!」



んん? そんな事言いながら速水はニヤニヤ。 美子にそっくり…… ああそうか! このまま行けば直也って正に速水の好みのタイプになりそうな。



いやいや、美子の弟なんだし流石に手を出すわけないよな、直也にはませた事に彼女もいるし。



そうして美子のいきなりのクリスマスパーティもみんなで集まって美子の父さんが帰って来るまで続いた。



美子は父さんに俺と付き合っていると言ったらしく前よりも更に風当たりが強くなったけど美子が俺を選んだのならと物凄く渋々だが納得はしてくれたようだ。 いやまぁ刺すような視線は感じるけど。



速水達が帰り俺もそろそろ帰ろうかと思った時……



「待って!」

「ん?」



美子に力強く抱きしめられた。 



………… ? いつまで抱きしめてんだ? 2、3分くらい無言で。



「美子?」

「玄ちゃん大好き」

「え? うん」

「大好き…… 大好き!!」



なんなんだろう? 







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