その8
終業式の日…………
「なぁ玄〜、これ終わったら俺の家で遊ばね?」
「ん? いいけど」
すると斜め後ろからグサっと刺さる様な物凄い視線を感じた。
「宮野?」
「うあッ! あ…… あの…… なんでもない、です……」
「宮野? なんで宮野を?」
「あ、いや、この前こいつに生徒手帳落としたところ届けてもらってさ」
「いッ!? と、当然の事だから!」
慌てたように宮野がそう言うと亮介は俺の肩を掴んで隅っこに連れられた。
「お、お前! いつの間に宮野と!?」
「いつの間にって…… だから落とし物届けてくれたって言っただろ?」
「まぁ…… それはいい。 けどあの反応お前に脈ありなんじゃねぇの?」
「はぁ?」
「バカ! あれは絶対そうだぞ!? いやぁ、宮野ってあんま友達とか居ないし昔から根暗でちょっと…… って思ってたけどさ、今のあいつの顔よく見たらなかなかイケるんじゃないか?」
「イケるってお前…… 俺そんな目であいつの事見た事ねぇしお前の憶測で俺の事好きかどうかって言われてもなぁ」
「あ、あの……」
「うおッ!!」
コソコソと話していると宮野が背後に居た。
「ごめんなさい、やっぱりなんでもなくない玄君」
「げ、玄君……」
「なんか用あるのか?」
「私も…… 私もご一緒していい…… かな?」
「ご一緒って…… 俺の家に宮野も来るってことか?」
亮介の問いに宮野はコクンと頷いた。 まさかこのまま宮野も亮介と一緒に遊ぼうってのか?
今までの宮野からは想像もつかない行動だ。 てか俺の事好きだって? 俺の事好きになる奴なんて居たのか? いやまぁ俺もいいなって思った奴は居たけどさ、心の中だけでそう思っていて大体小中と付き合ってきた連中にそういうのってちょっと恥ずかしいって感情もあったし……
「おーい玄?」
「え?」
「お前さては俺の言った事でいろいろ想像してたろ?」
「は!?」
亮介は宮野から少し離れて俺を連れ小声で話し出した。
「にしても困ったなぁ、宮野の奴絶対無理してるわ。 お前もわかんだろ?」
「わかるけどさ〜。 んー…… じゃあ俺お前の家に行くのやめるから宮野の事よろしく頼んでいいか?」
「な、なんだと!?」
あーあ、亮介の奴余計な事言いやがって。 これじゃあ宮野がそうであってもそうじゃなくても変にソワソワしちまうじゃねぇかよ俺が!
「あ! ねぇー玄ちゃん!」
すると美子が俺の方へ来た。 木村と、しかも速水まで……
「おい、なんか七瀬達来た!」
「んなもん見ればわかるっての」
美子達が来ると宮野は俺と亮介の後ろに隠れた。 俺は速水に視線を向けられたので顔を伏せた。
「美子ー、なんで由比ヶ浜のとこ行くわけ? ウチら以外に誘いたいのって由比ヶ浜達の事?」
「うん! 多い方が楽しいかなって思って」
「まぁこの面子とは今まで遊んだ事はなかったけどさ、いーんじゃない?」
速水 琴音と木村 葎花だ。 速水は俺が密かにいいなって思ってた子だ、今言った通り所詮はいいな止まりだがまさかこんな展開が待っていたとは……
速水…… 美子と同じくロングな髪だが栗色で少し釣り上がった目は気が強そうな印象なのだがまぁその通りで小学生の頃はよく男子と喧嘩していた。 今はすっかり女の子っぽくなった、美子に負けないくらい美人だ。
もう1人の方の木村はショートカットで女子では運動神経抜群だがギャルっぽい。 3人の中では1番派手で性格は大らか、細かい事はあんまり気にしないタイプ、速水の友達だけど美子が来てから速水と美子が仲良くなって自然に木村も…… という感じだ。
何にしても3人とも見た目レベルが高い、俺とは縁がない美人トリオだな。 と思ってた。
「ん? 由比ヶ浜と篠田の後ろに居るのは…… やっぱ遥か」
速水が俺の横から宮野を覗き込んだ。
「ひゃッ!」
「ひゃッ! だって、ウケる! あはは〜」
「こら葎花。 相変わらずねぇ遥は。 ん? もしかして遥って2人と遊ぶ予定だったとか?」
「あ!」
「え? 適当に言ったのにまさかの図星?」
「いいじゃんいいじゃん! 多い方が楽しいって」
「美子さっきからそればっかりね…… まあいっか。 由比ヶ浜達と遊ぶのも初めてなんだし遥も来なよ?」
え? もう行く感じなのか?
「わ、私が行っていい……」
「はーい! じゃあ遥もアタシらと一緒って事で」
「うん決定! 玄ちゃんと仲良いって事は私らとも仲良し!」
美子の奴適当な事言いやがって。 この面子でどこに行くんだ??