その78
一般公開されると当然だが一般人もやって来た。 それに加えて日曜日なのでたくさん来る。
え? 学校の文化祭ってこんなに人来るの?? ここだけが凄いのか高校の文化祭はやっぱり少し違うのかもしれない。
俺と亮介は美子達と入れ違いの形で部室に行き今日の予定の説明を受けてからクラスの方へ参加した。
「これください」
おお! 俺のゲームが売れた! こんなとこでも買う奴はやっぱり居るんだな。
「今の玄君持ってきたゲームだよね? やったね玄君」
「ありがと。 遥のはどうだ?」
「…… 私のは全然。 本読む人少ないのかなぁ?」
「遥ちゃんのサインでも表紙にババッと描いちゃえば?」
「ええッ? そんな事したら尚更売れなくなるよ……」
相変わらず美子はいい加減な事ばっかり言って……
「あー! それなら宮野が直接本を携えてグイグイ売りに行ったら誰か買うんじゃね? 男子限定な」
「なるほど」
「なるほどじゃないよ玄君、そんな恥ずかしい事出来ないよ。 それも男の人限定なんて」
「あのー……」
そうこうしていると俺達の目の前にお客さんらしき人が立っていた。
「この本買わせてもらっていいかな?」
見たところ俺達より年上の男の人、大学生くらいかな?
「あ! はいはい! モーマンタイ! 全然大丈夫ですよ、ほら遥ちゃん」
美子モーマンタイって……
「えっとあの…… ど、どうぞ」
「ありがとう」
お金を払って男の人は教室から出て行った。
「やったじゃん遥ちゃん売れたよ!」
「う、うん!」
お昼近くになり俺と美子達はミスコンの開催が13時からあるので早めに休憩に入った。
「ね、ねぇ! とりあえず見て回ろうよ出店とか出店とか出店とか!!」
「はいはい、お前は腹ペコなんだな」
「美子ちゃん息荒いよ……」
腹ペコな美子は出店で買った物をバクバクと口に運んでいると……
「あーら美子、相変わらず食い意地張ってるわね」
「ふえ?」
声の方へ振り向くとそこには意外な人物が居た。
「あんたが恥かくところ見に来てあげたわよ」
「あ、杏樹ちゃん……」
いつぞやの美子の同級生。 この前は美子に酷い事言ってまた余計な事を掘り起こしに来たのか?
「あらら、この前と同じメンツだよね? 隣の可愛い子とフツメン君」
「悪かったなフツメンで。 お前美子と仲悪いくせになんでここに居るの?」
「それ以前にあんたになんで話し掛けられなきゃいけないわけ? 関係ないっしょ、でもまぁそうだね。 友達伝いであんたがこの学校だって知ってさ、何やら美子って今日面白そうな事やるみたいじゃない?」
ミスコンの事か?
「あんたはただの勘違い女だって言ったはずよね? それを懲りずにまた恥をかきたいんだね」
「いやそれはお前が」
「だから言ってるでしょ? あんたの話はどうでもいいの、美子に言ってるんだから」
こいつ…… また美子に精神攻撃をするつもりだ。 美子のミスコンを台無しにする気だ。
「なんとか言いなさいよ美子、それとも今更気付いて恥ずかしくなっちゃった?」
「………… う」
「は? なぁに? 聞こえない」
「杏樹ちゃん来てくれてありがとう!」
「はあッ!?」
「え? 美子ちゃん??」
美子は何を聞いてたのかこともあろうに悪意を向けている相手にお礼を言った。 何考えてんだ美子……
「杏樹ちゃんがどんなに思ってても来てくれたんだよね?」
「あんた話聞いてた? バカなの?」
「だって…… だって私が恥をかくところ見に来てくれたって」
それは確かにそうとも取れるけどちょっと無理やり過ぎないか? でも前ほど美子は杏樹に対して弱気な態度ではない。 予想外の返しに杏樹の方がたじろいでいる。
「それはある意味そうだけど」
「だったら杏樹ちゃんは」
「うるさい! いい? あんたが仮にもし他の子より綺麗だったとしても私は美子に票なんか入れないわ」
「それでもいい、だから見ていってね。 あ! それとこのたこ焼きあげる、美味しいよ」
美子が杏樹の手にたこ焼きが入ったパックを持たせると……
「………… キモッ!! マジでキモい!」
「あッ! 杏樹ちゃん!」
杏樹は怒って俺達の前から去って行った。
「はぁー……」
「大丈夫? 美子ちゃん……」
「うん。 杏樹ちゃんたこ焼き持って行ってくれた」
「いやいや、だから何だって言うんだ? あっちの調子は狂ったみたいだけど」
「これから肝心な時なのにくよくよしてられないなって、それに玄ちゃんも遥ちゃんも居てくれたし。 今ではこんなだけど…… 杏樹ちゃんとも仲直りしたいな」
「仲直りって…… 話聞く限りあいつとお前ってそもそも仲良かったか?」
「だからだよ、杏樹ちゃんとは離れちゃったけどもしやり直せるなら…… ってあれ? 琴音から電話が」
「玄君、美子ちゃん時間! 時間が!!」
あ、そっか。 これから美子達のドレスの着付けや化粧の時間なんだった。




