その77
そして文化祭当日、一緒に学校行こうと美子に言われたから待ってるんだけど美子の奴余裕だな。 思えば今までミスコンの事なんてまるで不安に思ってないような感じだった。
公園の近くまで行くと人影が見える、美子のようだ。 俺結構早めに出て来たんだけどあいつはいつからあそこに居たんだろう? 時間もまだあるし趣味が悪いがこっそり見てみよう。
美子は初めはキョロキョロと辺りを見渡していたが、少しすると歩道の手すりに腰掛け鼻歌を歌い始めた。
なんていうか音痴だな……
そうしていると今度はニヤニヤし始める。 おいおい、誰かに見られたら変な人だぞお前。 覗き見している俺が言えた事じゃないけど。
ていうか緊張感まったくないなあいつは! 今日は大事な日だと思うんだが見ていてこっちが心配になってくるわ。
「うふ、うふふッ」
「おい」
「うわぁああああッ! げ、玄ちゃん!? いつの間に私の背後に?」
「声デカい、俺までビックリしたじゃねぇか! お前が怪しい笑いをしてる時にだよ」
「え!! どこからどこまで見てたの?」
「お前が辺りをキョロキョロして変な鼻歌を奏でてたのも見てたわ」
「何から何まで…… ヤバい、顔から火が出そう」
うーん…… いつにも増していつもの美子だ。
「美子、お前今日自信あるの?」
「え、何が?」
「はぁー、ミスコンだよ」
「あー…… うん」
え、なんだ? さっきまで明るい表情だったのにミスコンの話題になると美子の笑顔が若干曇った。
まさかな…… まだ時間があったし今日の今日まであまり深く考えないようにしてていざ直前になって俺からその事を言われて不安になってきたとかか?
「ううん! 違うよ!! 自信は…… あるかないかと言われれば後者よりの前者になると思うけど」
「めちゃくちゃ不安なんだろ?」
「ふ、不安は自信の裏返し!!」
………… ダメだ、こいつの言ってる事がもうわからん。
「今日は天気も良いし絶好のミスコン日和だしね!」
つーか体育館でやるから天気とかはまったく関係ないぞ。
「美子…… 無理しなくていいんだぞ? 別に1番とかじゃなくても」
「が、頑張るから!!」
「お、おお…… わかった」
これってなんか逆に美子を緊張させてしまってるかも。 こいつは行き当たりばったりの方が上手く行くのかもしれない、そんな事なかったような気もするけど……
「そういえば文化祭になるといろんな出店も出るだろうし美味しいもの食べれるかもな」
「うんうん! 実は私もちょっと期待してるんだぁ」
「ちょっとじゃなくてかなりだろ?」
「それじゃ私食べ物の事しか考えてないみたいじゃん」
こいつはプンスカして言ったが食べ物ばかりにいつも比重を傾けてるじゃないか。
そんな感じであまりミスコンの事には触れないように学校へ向かう。 こんな調子で大丈夫なのだろうか?
学校へ着くと一般公開もあるのでその準備にてんやわんやだ。 10時から始まるのでみんな準備に追われている。
「うわぁー、凄いねぇ」
「凄いねって呑気に言ってないで俺達もボケッとしてないでとっとと行くぞ」
「はぁーい! 頑張るぞッ! っと玄ちゃんは教室行ってて。 私部室に一旦行かなくちゃいけないから」
「ああ、そっか。 俺と亮介も後で呼ばれてたんだったわ」
教室へ行くと前日に持ち込んでいた品が並んでいる。 まぁぶっちゃけこっちはもうやる事大分済んでるんだけどな。 昨日レイアウトしてたし俺が持ってきたゲームもちゃんと並んでいる、売れるのだろうか?
「おーい玄」
振り向くと英二だった。
「亮介達のクラスたこ焼き食ってるぞ」
「あれ? 外で作ってるんじゃ……」
「味見だってさ、俺らも貰おうぜ!」
「図々しくないか? でも亮介も居るしな」
亮介のクラスへ行くと木村がこっちへ来てたこ焼きを俺達にもくれた。
「由比ヶ浜達暇そうだね、やる事ないの?」
「まぁうちのクラスは大体終わってるからな」
「由比ヶ浜は今日ドキドキだね! 一般人もミスコン投票出来るみたいだし毎年恒例でそれが楽しみで来てる人も居るみたいだよ」
「らしいな、でも俺より美子のが緊張してるだろ」
「あはは、だね! 琴も今部室に行ってるみたいだしバチバチしてるんじゃない? 琴と遥の晴れ姿も見れるし目が離せませんなー、このスケベ!」
そして一般公開も始まりいよいよ始まってしまった。




