その76
放課後美子が速水達のクラスで何か作っていた。
「何してんの?」
「え? 見てわからない?」
わからんから聞いてるんだっつーの。
「琴音と葎花のクラスのお手伝い! あっちは飲食店やるらしくて大変なんだって」
はぁー、なるほど。 速水は仮にもミスコンでライバルになるってのに優しい奴だな。
「いやー助かるわ美子! 思ったより手間取っちゃってさ」
「ふふふ、私に任せときなさい!」
胸をドンと叩いてドヤッているが……
「美子、平仮名とカタカナがちぐはぐになってる」
「ええ!? あ、ほんとだ、たこ焼きにしたつもりがたコ焼きになってる……」
なんという変な間違い方……
「あははッ、流石美子」
手伝いに来て逆に足を引っ張るという可哀想な結果に。
「ご、ごめん、すぐに作り直すね!」
美子は用紙を取りに教室から出て行った。
「まったく美子は……」
速水が美子を見送り溜め息を吐きフッと微笑んだ。
「あらぁ〜、琴ったらどうしたの? ミスコンで勝ち難くなっちゃった?」
「そもそもウチが美子に勝てるとも思ってないしそれ以前にミスコン部にはずっと綺麗な先輩達もいるわ、そう上手く行くわけないじゃない」
「またまた謙遜しちゃって!」
「ていうか美子って用紙をもらいに行ったようだけどちゃんと貰えるとこわかってるのかしら? 美子だと心配ね、由比ヶ浜ちょっと付き合いなさいよ」
「へ?」
急に速水に連れ出された。 まぁ確かに美子だと場所がわからなくてとかなりそうではあるが速水は人気のない階段の踊り場に俺を連れて行った。
どう見てもここって用紙を取りに来たって感じじゃないし美子を迎えに行くつもりもないよな?
「こんなとこに連れ出して来て悪かったわね」
「何か別件か?」
「ええ、美子ってミスコンで1番になったら由比ヶ浜に何かお願い事頼むつもりだったわよね?」
「ああ、うん。 そのようだけど」
「さっきも言ったようにいくら美子でもあの中から1番になるってとても厳しいと思うの、だからって個人的感情で先輩達に美子を勝たせてなんて事も言えないし……」
確かにそんな事頼めるわけないよな、美子はもちろん可愛いけどミスコン部って名乗ってるだけあって先輩達も異常に可愛い、そんな中で1番になったらなんて直前になって思ってみると物凄く難題だぞ?
「例えそれでもし手心加えて1番になったなんて知ったらあの子どう思うかしら。 きっと凄く落ち込むと思うわ」
「まぁ美子ならそんな事してもらいたくないって思うかもな」
「ね、どうしたらいいかな?」
どうしたらって俺がその答えをわかると思うか?
「うーん…… ていうか」
「何よ?」
「いやお前もなんだかんだで美子に負けないくらいお人好しだなって。 そこまで美子の事心配してんだな」
「うッ…… ウチの事はどうでもいいでしょ!? ウチは今美子の事を話してるんだからそれ以外は受け付けないわ!」
「はいはい…… つってもこればっかりはどうしようもないんじゃないか?」
「…… まぁそうよね。 ウチがあーだこーだ言っても何もならないわよね、ごめんわかった。 美子を迎えに行きましょ?」
なんかモヤモヤするけど仕方ない。 速水の予想通り美子はどこで用紙を貰うのかわからず教室の方へ戻ろうとしていた所を見つけた。
「あーん琴音〜! どこで貰うかわからなかったよぉー!」
「そうだと思った、まったく美子は考えなしに行動するんだから。 また葎花にやっぱり美子はって言われるからウチらと一緒に取りにいきましょ」
「ありがとー! あれ? ところで玄ちゃんも一緒なの?」
「あ、ええと、美子のところに行くなら由比ヶ浜も一緒に行きたいだろうなって思って誘ったの」
「え?」
そう聞いて美子は少し頬を赤らめて俺を見てうふふと微笑んだ。
「そんな事は一言も……」
「黙りなさい」
なんとなく恥ずかしくなったので否定しようとすると速水に遮られた。
代わりの用紙を受け取って教室に戻ると木村に遅いと怒られるが亮介と一緒にイチャイチャしてるようだしいいじゃないか。
てかこの2人本当にカップルみたいだな、カップルなんだけど未だに信じられない。
「この文化祭で何組のカップルが誕生するだろねぇ」
「文化祭ってカップル発生イベントなのか?」
「当たり前じゃん! 中学の時よりも高校のがいい感じの文化祭だと思うから尚更ね! 特に〜……」
木村がチラリと美子を見ると美子はハッとして隣の壁を見た。 なんなんだそのリアクション……
「今更聞く事でもないけど美子ってどんな男の子がタイプ?」
「わ、私!? え、ええと…… 例えば牛丼で」
仮にもその質問で例えば牛丼ってなんだよ?
「特盛を私にサッと渡してくれる人にときめく!」
そんな奴が如何程いるだろうか?
「あははッ! 何それ〜? それと何由比ヶ浜の事見ながら言ってんの?」
「え!? 見てない見てない! あ! これは眼中にないとかそういう意味とかじゃないからね!」
「いやそんなフォローしなくていいから。 へぇ、でもそんな人がいいんだねぇ。 由比ヶ浜」
木村が今度は俺を見て悪戯っぽい顔で言う。 ああもう、文化祭の準備するんじゃなかったのか?




