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その75


「うわぁー、琴音綺麗!」

「そう?」



部室に行ってみると速水がドレス姿で居た、なんとなく速水のイメージにピッタリな青いドレスだ。 つーかドレスにも色々種類があるんだな、俺なんかウェディングドレスくらいしか思い浮かばないぞ。



ドレスだからと言ってひらひらしているわけでもなく速水が着ているから知らんがとても上品に感じる。



「あらあら、玄君ったらそんなに琴音ちゃんをマジマジと見ちゃって。 やっぱり綺麗だから見惚れちゃった?」

「げ……」



出雲先輩が速水を見ている俺にそんな事を言った。



ば、ばかやろー! なんでそんな恥ずかしい事言っちゃうんだ!? いやまぁその通りだったんだけどこんちくしょう! 



速水も何か警戒して出雲先輩の後ろに隠れるから尚更傷付く。 デカいから隠れられてないけどな!



「そうなの玄ちゃん?」

「あ、いや、速水の着てるドレスってなんていうのかなぁって……」

「うふふ、これはフィッシュテールってドレスよ、琴音ちゃんモデル体系だから狙い通りにちゃんと着こなしてくれたわね!」

「いや、別にウチはそこまでしてもらいたくは…… 美子と遥も自分のやつ見に来たんでしょ?」

「あ、ええと…… そうだったっけ?」



それが目的で来たはずなんだが美子は少し困っているような素振りだ。 急に腹でも減ったのか?



「や、やっぱりまた別の機会でもいいかな! ほら、琴音の邪魔になるし、ね? 遥ちゃん」

「え? あ、うん……」

「ウチがあんたらを邪魔にするとおも…… あ!! ていうかウチ用事思い出した、葎花に呼ばれてたんだった」

「琴音ちゃん着た記念に写真撮らせて〜!」

「ええッ? い、今ですか?」



速水が急に焦り出した、何事だ? 着たばっかりならもう少しその格好で部室に居ればいいのに。



「んん?」



出雲先輩が速水と美子の事をチラチラと見た。



「あ、ふぅーん、なるほどねぇ」



と言い静かに微笑む。



「え!! なるほどって何がなるほどなんですか!?」

「えー? なんだろうねぇ」



異様に食いつく美子に出雲先輩はなんだか微笑ましそうだ。



「遥ちゃん、私達もクラスの文化祭の準備あったから戻ろう」

「うん…… いいの美子ちゃん?」

「いい…… よ」



心なしか…… というか少ししょぼんとした美子は遥の手を取って部室から出て行った、つーか俺はどうしたらいいんだ? 速水を見ればサーッと青ざめた表情。



「あはは、青春だねぇ」

「何がです?」

「もぉー、玄君は疎いなぁ。 あれはね、ドレス着た琴音ちゃんがあんまり綺麗だから自信なくしちゃったんだよ」

「へ? 自信をなくした?」

「だから琴音ちゃんもちょっと気不味くなったんだよねぇ?」

「はぁー、ウチなんか気にしなくていいのに美子ったら。 ウチからすれば美子のが可愛いと思ってるのに。 ていうかフォローして下さいよ先輩も」

「だって面白かったから、ごめんね! さぁー、それより記念に撮っちゃおうね琴音ちゃん!」

「お、お手柔らかに…… ていうか由比ヶ浜はさっさと美子を励ましに行け!」



部室から追い出されてしまった。 励ましに行けって言われても…… そういうデリケートな事はデリカシーがあまり備わってない俺が言ってなんとかなるのか?



というか杏室に戻ってみると美子と遥は居なかった、どこ行ったんだか。 まさかなと思い売店に行ってみると……



「お前何やってんだ?」

「むぐッ!! ゲホッゲホッ、げ、○×☆*$−=」

「え? え?」

「み、美子ちゃんお水!」

「ん〜〜〜ッ!!」



受け取った水を勢いよく喉に流し込んで遥に背中をさすられ美子は胸に手を当てながらゼェゼェと悶えてた。



こ、こいつ…… あろうことかヤケ食いしてやがった!



「美子ちゃん大丈夫?」

「ふぅ〜、死ぬかと思った。 ありがとう遥ちゃん」

「おい美子」

「うん? うんッ!?」



美子は詰まったものが取れてスッキリして微笑んだ顔から俺を見て気不味いような表情になった。



「あ、あの…… 玄ちゃんごめん」

「何が?」

「私よくわかんなくなって部室から玄ちゃん置いて出て行っちゃったりして」

「なんだそんな事か、全然気にしてないよ。 つーかお前大丈夫?」

「わ、私は元気いっぱいだよ、この通り!」

「食欲はあるみたいだけど…… てか美子のドレス着たとこ見てみたかったのにな」

「え?」



うわぁあああッ! 俺はなんて恥ずかしい事言ってんだ? キモいだろ? 絶対俺キモい顔して言ったような気がする。



恐る恐る遥に目をやるとナイス俺みたいな表情してるけど美子は……



パァアアッと一割増しくらいの笑顔になっていた。



「見たい? 見たいの!?」



前のめりになり俺に迫りそう言う、浮き沈み激しいなおい! そんな風に言われると俺ががっついているみたいで遠慮してしまう。



「いやそこまでは……」

「そ、そこまでは……」

「玄君!?」



ヤバッ、これじゃ逆に落ち込ませてる。 何しに来たんだ俺?



「ええと、楽しみは後に取っておくタイプだから当日楽しみにしてるから」

「ふえ? 楽しみ? そんなに楽しみなの? ははーん」



くッ、なんかムカつく…… こいつ情緒不安定か!?



「楽しみと言われちゃしょうがないなぁ」

「そうだね、玄君楽しみにしてるみたいだし」



遥があたふたとフォローを入れてなんとか美子の機嫌は直った? みたいだ。 



「そっかぁー、そんなに楽しみかぁ。 じゃあ本番まで取っておこうかな?」



おおん!? なんか打って変わって今度はしたり顔になってきたぞ! 励ましに来たのに謎の敗北感を感じた。





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