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その73


「おーい亮介、あッ……」



亮介のクラスに行って名前を呼んだ瞬間気付いた、あいつは木村と付き合ってるんだから邪魔しない方がいいよなと。



「なんだよ玄?」

「あ、なんでもなかったわ」

「呼んどいてなんでもなかったはねぇだろ? あ、そっかぁ、もしかして俺が葎花と付き合ったもんだからお前遠慮してんだな俺に」

「うるせぇな、せっかく人が気を利かしてやろうかと思ったのに」

「んな事する必要ねぇよ、お前にもじもじされるとキモいから」

「じゃあ遠慮しねぇけどさ」

「でも今日は遠慮しといてくれ」

「は?」

「俺と葎花放課後デートだからさ」

「結局どっちだし。 まぁいいや、じゃあ精々仲良くな」



今日の帰りは亮介の家に行って遊ぼうかと思ったがデートなら仕方ないな。 亮介がデートとは……



中学の冬休みに3人に当たって砕けろで告白したあいつが今は木村と付き合ってるなんてな。



更に月日は流れて10月になっていた。 美子と遥と接していて俺の気持ちにも若干変化があった、それは俺の中で美子への想いが大きくなっているって事だ。



俺は今になって凄く美子に惹かれている。 美子の笑った顔、いじけてる顔、失言をしてテンパってる顔、どれも吸い込まれそうになる。



そんな風に振り返っていると後ろから視線を感じた。



「あ…… 玄君」

「どした?」

「あの、もしかして1人かな?」



遥がそう尋ねる、美子は速水のドレス見に行ったしまぁ今日は1人で帰るつもりだ。



「…… 玄君さえ良かったら一緒に帰らない?」

「いいよ」

「ッ! ありがとう」



遥と一緒に下校する。 美子トリオの時もそうなのだが遥も遥で可愛いので周りの他の生徒の目を引く。 まぁ遥しか見てないんだろうけど釣り合ってないんじゃないか? 的な目で見てる奴もいると思う。



「ねぇ玄君…… 最近どうかな?」



え? 何がどうなんだ? 範囲が広過ぎてわからん。 美子との関係の事か…… ただ単にテストの事だったら目も当てられない。



「あ、ごめん。 見ててわかるんだけど美子ちゃんと順調なのかなって思って」

「あ、ああ、それか。 まぁ上手くやってるよ、もちろん遥ともな…… ってこれ俺凄く行ったり来たりな奴だな」

「あははッ、そんな事ないよ。 聞いてみただけだから」



そして少しシーンと間があく。 俺がハッキリしないから遥だってハッキリ出来ない、だから言わなきゃいけない、俺は美子の事を好きだってわかったのだから。



「あのさ遥」

「うん?」

「俺…… 美子の事が好きだ」

「………… うん」

「散々速水の事言ってて今更だと思うかもしれないけど」

「ううん、玄君の気持ちわかった。 それに私、もともと玄君の事応援するつもりだったもん。 それでもし玄君が私を選んでくれたならって勝手な事思ってたし」



んな事言っても…… ああ、なんか凄く申し訳ない、遥の顔がまともに見れないぞ。 やっぱり言わない方が良かったのか?



「あ、あのさ、こんな事言う俺って最低だと思うけど言わないでおいてどんどん遥に……」

「うん、わかってるよ玄君の言いたい事、でも私の気持ちは変わらないよ」

「え?」

「言ったでしょ? 玄君の力になりたいって。 私が言うと何様だって思うかもしれないけど玄君と美子ちゃんならきっと上手くいくよ、だってお互い両想いなんだもん」



遥はそう俺にニコッと笑って言ってみせた。



「そ、そんな事……」

「玄君」

「ん?」

「美子ちゃん迎えに行こう?」

「へ?」



遥は俺の服の裾を摘んで道を引き返した。



「な、なんで?」

「だったら私より美子ちゃんと帰るべきだよ」

「いや、いいのか?」

「うん…… 玄君のほんとの気持ち言ってくれて嬉しかった」



少し心配になって遥の顔を見ようとすると遥は反対に顔を向けた、だけど泣いているんだと分かった。 遥の息遣いが少し震えていたから。



そうしてしばらく歩いて学校の方へ戻ると美子らしき姿が反対側から歩いて来るのが見えた。



「あれ? 玄ちゃんと遥ちゃん? なんで戻って来てるの、忘れ物? うふふ、まったくしょうがないなぁ」



そんな事があったなどまるで知らない美子はやれやれと言った感じになんとも見当外れで場違い的な事言ってる…… しょうがないのはお前だろ! まぁ俺もか。



「違うの美子ちゃん、玄君がやっぱり美子ちゃん迎えに行こうって」

「は?」



何を言い出すかとお前ば遥……



遥に視線を向けるとコクリと頷く、そういう事にしてくれって事なのか?



「え、そうなの? 玄ちゃんが?」

「お、おう…… みんなで帰ろうかなって」

「みんなって遥ちゃんは家逆方向だよねぇ? うん? あー! 遥ちゃんと私で玄ちゃんを家に送ってそれから私の家に私を送って遥ちゃんを遥ちゃんの家に送るって事だね!」

「何そのすげぇややこしくて無駄な帰宅コース……」

「…… ふふッ、それ面白いね! でも私はこのまま帰るから大丈夫だよ? わッ!!」

「ダーメッ! 遥ちゃんがせっかくここまで来たのに1人で帰らせるわけないじゃん、私と玄ちゃんで2人で送るから一緒に帰ろう?」

「美子ちゃん……」

「うん?」



遥はチラッと俺を見た、凄く申し訳なさそうに。 けど……



「そうだな、せっかくここまで戻って来たんだしな。 いいんじゃないか?」

「………… ありがとう玄君、美子ちゃん」




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