表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/95

その71


「あ、あれれ!? 終わってる?」

「あれれじゃねぇよ、まったく。 疲れてたんだろ?」

「あ、いや全然!」

「どうせチョコ作ってたの一昨日じゃないんだろ?」

「あははッ、バレちゃってた? せっかく遊んでたのに気を遣わせたら悪いかなぁと思って」



それじゃあチョコ渡すの最後にすれば良かったのにと思うが美子は思い付きで行動するタイプだからな。 そしてプラネタリウムから出ると……



「げッ!! またあんた達?」

「あ!」

「お前ら……」

「よく会うな」



佐原と栗田カップルと偶然鉢合わせしてしまった。



「あんた達もデート?」

「いやん愛菜ちゃんデートだなんて」

「いやくっつくな! 馴れ馴れしいわね大食いお化けは」

「お前ら前から仲良かったもんな、そのまま付き合えばいいじゃん」

「あ、あー……」



散々速水速水言っててすぐ美子に乗り換えるってか? ううーん…… それってなんか調子良くないか? いやでも速水も美子か遥どっちか選べって言ってるし。



「ほら、大食いお化けがジーッとあんたの事見てるわよ」

「へ!? み、見てないよ! 玄ちゃん面白い顔してるなって思ってただけだよ」



面白い顔…… ディスってんのかこの野郎。 まぁもう美子がなんて言おうとも慣れっこだが。



それにしても気になった事がある、佐原がなんというか栗田に対して自然なのだ。 普通はそうなんだけど二心あった佐原は栗田に対しては少し遠ざけた態度を取っていたはずだが。



「佐原、お前って栗田の事好きなのか?」

「は、はあ!? バカ、当たり前だろ!」

「ダー様に何言ってんのよ!? そうに決まってんでしょ!! 朴念仁にも程があるわよこのスカタン!」

「そうだよ玄ちゃん2人ともお似合いなのに失礼だよ!」

「なんかあんたに言われるとムカつくわ!」

「ええッ!?」



全員から非難されてしまった…… 何これ?



すると佐原が溜め息を吐いて俺の肩をポンと叩いた。



「俺さぁー、愛菜にマジで惚れちまったんだわ、これからは愛菜だけなんだよ」

「え?」

「きゃあああッ! ダー様嬉しい!! ん? これからって? その前までは違かったの?」

「あ、いや! 違う、その前から好きだったけど更に惚れ直したっていうか」



慌てて佐原は取り繕った、こいつも速水速水言ってたくせにいつの間に栗田にぞっこんになったんだ?



「いいなぁ仲良しこよし……」

「よだれ出して見たんじゃないわよ! 食いもんじゃないのよ!? ダー様こんな奴らほっといて行こう?」

「ん? そうだな。 じゃあお前らも仲良くやれよー」



行ってしまった、佐原の奴どういう風の吹き回しなんだ? まぁこれで速水からすれば余計な厄介ごとはひとつ消えたわけだが。



「ラブラブだったねあの2人」

「結果的にはな」

「結果的?」

「だってあいつ……」



いやこれは余計な事だな、佐原が真面目に栗田と付き合う事になったんだし。



もう夏だが暗くなってきたしそろそろ帰らないとな。 美子のお父さん今頃カンカンだろう。



「じゃあ俺達は帰ろうか? 美子のお父さんも心配してると思うし」

「え〜…… でもそうだね、プラネタリウムも体験出来たし!」



途中で寝た奴がよく言うな。



俺は美子を家の前まで送って行く事にした。 帰り道も美子はいっぱい俺とお喋りしていて家の前に来ると……



「玄ちゃんわざわざここまで送ってくれてありがとね! お礼に私も玄ちゃんの家の前まで送って行こうかな」

「それって意味なくないか?」

「ん〜? あれ、ほんとだ。 あははッ」

「考えなくてもわかるだろ、はぁ〜」



でもなんだろう? そう言ってくれる美子に暖かいものを感じた。



「次はお祭りあるね!」



美子が笑ってそう言うと俺はハッとした。 そう、いつも地元のお祭りには俺行ってない。 なぜならじいちゃんばあちゃんの家にその頃行っているから。



「それがさ……」

「ん?」



俺が説明すると美子は……



「えーー! そうなの!?」

「そうなんだ」



ガクッと肩を落として明らかにガックリしていた。 



「そんなぁ〜、楽しみにしてたのにぃー!」

「言うの忘れてた、ごめんな」

「遥ちゃんも今日誘ったのに玄ちゃんと同じで帰ってて来れなくて今度は玄ちゃんなんて。 いいもん! じゃあ遥ちゃんと琴音達と行くもん」



プイッと美子はそっぽを向いてしまうがそっと俺に向き直った。



「でも今日はいっぱい遊んだからいっか。 それにその前までもっと遊んでおけばいいんだもんね!」

「マジで?」

「マジです! ダメ?」



そんな寂しそうにしている仔犬の目で見られると……



「わかったよ」

「やったぁ! 言ってみるもんだねぇ」

「声が聞こえると思ったら帰って来てたんじゃないか美子!」

「わッ! お父さん」



美子が大声で喋るもんだから美子のお父さんが玄関を開けて俺達を見た。 あー、出来るだけ会わずに帰りたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ