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67/95

その67


「ちょっとトイレ行ってくるわ」

「ああ」



めちゃくちゃなバスケが終わってトイレに向かっていると後ろからトタトタと足音が聴こえた。 こういうのって美子かなと思って振り返ると遥だった。



「遥、お前もトイレか?」

「え? あ、うん……」



違うだろ! 遥はさっきの返事を聞きに来たんだってのと自分にツッコミを入れる。



「ええとさ遥、俺……」

「玄君はやっぱり速水さんが好きなんだね」

「へ?」

「ううん、ずっとわかってたのにごめんね、私玄君を困らせるつもりで好きって言ったわけじゃないんだ、私が…… 玄君の事好きってわかってて貰いたかったから。 ちゃんと言葉にして言おうって思って。 あの時は勇気がなくて言えなかった、私は玄君がね、速水さんが好きなら応援する。 玄君がもしそれでダメだったんなら私が、私が玄君を慰める! そ、それでいてわ、私と居て玄君が落ち着けるような人になりたい」



遥はそう言ったあと唇をキュッと噛み締めた。 



応援する、落ち着く人になるってやっぱりあの時速水が言った通りだった。 それに対して俺は……



「遥…… お前の言う通りだよ、俺速水が好きなんだと思う」

「うん……」

「けど俺、初めてだったしそんな事言われたらその…… 揺らいじゃうような凄く優柔不断で」

「大丈夫だよ」

「へ?」

「私もこんな事言うの初めてだし…… 玄君の立場だったら私だってそうなるかもしれないし。 でも何より玄君には本当に好きな人に好きって言って欲しい、もし玄君が勇気が出なくてダメだって思う時は側にいて今度は私が玄君を勇気付けるから」



いつもはこんな場面だとオロオロして泣き出してしまいそうな遥なのに力強く言った。



「つ、つまりは…… それって」

「わ、私の気持ちは伝えた…… だ、だから満足しましたって…… 事で……」



あわわわッ、ま、マズい。 このままだとなんかマズい、だったら俺は本当に好きな速水との事を頑張る! そう遥に言ってしまえばいいんだ、いいはずなんだけど……



”好きです” 生まれて初めて言われた言葉が木霊している。



”ウチはあんたの事は好きじゃない”

”美子と遥はどう見てもあんたの事が好き”

”もし1番になれたら言う事ひとつ聞いて欲しい”



俺の脳内で速水の姿がボヤけて代わりに美子と遥の姿が浮かぶ。 美子? 美子もだって!?



つい今遥に速水の事が好きなんだと思うって言ったばかりなのに。



「玄君?」

「俺…… やっぱ遥みたいに真っ直ぐじゃない、遥に好きって言われたらそれだけで思ってた事とか全部覆るくらい動揺してる」

「………… 玄君」

「え!?」



気付いたら遥に頭を撫でられていた、恥

ずかしい、けどそれは嫌とかじゃなくて寧ろ心地良かったがハッとして離れてしまう。



「ごめんッ! 調子に乗りました」

「あ、いや、違うんだ」

「でも……」

「?」

「でもごめんねなんだけど凄く嬉しい…… 玄君にそう感じて貰えて。 あの、あのね! 玄君がそう思ったとしてもやっぱり私は玄君の味方だから! 

わ、私なんかじゃ頼りないと思うけど」



言った方ももじもじ、言われた方ももじもじ、このトイレの道中のもじもじ空間はなんだ? だが……



「遥」

「? は、はい!」

「俺ここまできたら言うよ、遥に好きって言われてわかった、てかバカだよな俺って……」

「??」

「呆れられても仕方ないと思う、俺…… 美子の事も気になってるんだってわかった」

「ふッ……」



遥は口を押さえて肩を震わせ静かに笑いを堪えていた。 これは無理もない、呆れるを通り越して失笑ものか。



「ごめんなさい、これはその変な意味じゃないの。 美子ちゃんが玄君の事好きだってずぅっと前から気付いてたから、ふふふッ、良かった」

「良かった?」

「うん、だって同じ玄君好きでも美子ちゃんは私にとって大切なお友達。 だから良かったって」



こういうのって普通凄く複雑な感じになるかと思ったら遥は心底良かったという顔をしている。



「あ! も、勿論ちょっとはあれ?って思うよ? けど玄君の気持ちが1番大事だから私は玄君が選んだ人なら…… ね?」



すると足音が聴こえたので俺と遥はサッと離れた。



「おーい玄、いつまでチンタラやってんだよ、あれ? 宮野も一緒なのか?」

「ちょうど出た時会ってさ」



亮介だった、俺トイレすらまだ行ってなかったのに出てきた体にしてしまった。



「次カラオケに行くってよ」

「またカラオケか」

「はははッ、宮野も同じような顔してるわ、前行った時思い出すか?」

「は、恥ずかしい……」

「どうせ七瀬が一緒に歌ってくれんだから心配すんなよ、さっさと行こうぜ?」

「あ、ああ」



亮介と一緒にみんなのところへ戻ると美子が手を振り寄ってくる。



「おかえり玄ちゃん」

「ああ」



急に美子に照れだすとは俺って都合良すぎだ。 




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