その66
運動場ってスポッチャ的なものかと思えばただの総合体育館だったんだな、まぁそんな施設こんなとこにあるわけないか。
外のバスケのコートが使えたので佐原は男女分かれて勝負しようということになった。
「玄、あいつ……」
「だよな」
「ああ」
亮介と明が佐原の背中を見つめて俺に囁きかけてきた。 そうだな、あいつの目的は明解だ。
「「「目立つ気だ」」」
男女に分かれたのも最初のジャンプボール…… 恐らく速水がやるだろう、それを見越してあいつは速水にお触り出来ないかと考えていそうだ。
いやそう思うのは俺の願望も込みだからか。 いかんいかん、俺はさっき遥に好きと言われたばかりじゃないか、なのにまともに返事もまだしてないのに速水に気を取られるなんて佐原と同じだ。
「おーい、お前ら」
佐原は俺達を呼んだ。
「なんだよ?」
「お前らって然程バスケ出来るとかじゃなかったよな?」
「前に体育の授業でわかってるだろ」
「そうだよな」
佐原はそれを確認するとニヤリと微笑んだ。
「あ、あの野郎ワンマンプレーして更に目立つ気だぞ!?」
「亮介落ち着けよ、いくら佐原が上手いからってそんなに上手くいくわけないだろ? 俺だって見た目はいい」
「明…… お前も何か目立とうとしてるだろ? 玄、お前もじゃないよな?」
ダメだ、こいつら纏まりがねぇわ。
「ボール来たら適当に回してればいいだろ」
とは言ったものの佐原が活躍しても速水は特にピンとも来ないだろうけど釈然としない、邪魔してやる…… いいや、シュートを決めれるなら俺も入れとくか。
そしてジャンプボール、やっぱり速水が来た。 佐原がボールを上に投げるのだが…… 読めたぜ完全に!!
「きゃー! ダー様頑張って〜!」
「ええー? 男子は敵だよぉー。 まぁこっちは琴くらいしか頼れるのいないけど」
「大丈夫葎花! 私に任せといて!」
「美子…… ある意味凄いわ」
「でしょ! ねえー遥ちゃん」
「ふええッ、私にそんなでもないのに」
あっちでは相変わらず美子の勘違い炸裂してるな。
「じゃあ行くぜ」
「いいわよ」
「よっと」
「あ! ちょっと!?」
佐原が上に放ったボールは佐原寄りに投げられていた、これは取ろうとしたらもしかすると速水が自分にくっ付くかもしれないというなんとも小賢しい小細工……
「うはッ」
佐原の目論見が成功したのか佐原の声が喜んでる。 けど逆にそんな事したら速水の印象は……
「せこいのよ!」
ほら。 力が抜けたのかあっさりとボールは女子の方に回り栗田が受け取った。
「ちょっと!! 何してんのよデカ女! ダー様の活躍を!! ダー様パスッ」
「ええッ!?」
栗田は佐原にパスしてしまった。 これもうチーム成り立ってなくないか?
「このバカチビ! そっちこそ何してんのよ!?」
「知らない! 知らないったら知らない!」
「あちゃー…… ダメだこの2人」
「琴音ドンマイ! 安心して葎花、私と遥ちゃんが止めたげるよ」
「いや美子、そう言ってるうちにあんたの横佐原が通り過ぎてったけど?」
ドタバタしているうちに佐原が華麗にシュートを決めた。
ポンコツ過ぎるだろあっちのチーム、あ、こっちも似たようなもんか。
「ダー様素敵!」
「おう、ありがとな」
「このチビいらないわ、居ても大して役に立たなそうだからそっちにあげる」
「なんですってぇ!! デカいだけで邪魔なのはあんたよ、大体この大食いお化けと根暗だって居る意味ある!?」
「うえ〜ん、なんで私と遥ちゃん役立たず認定?」
「み、美子ちゃん頑張ろ?」
女子チーム崩壊の危機……
「ほらほら、まだ始まったばっかりなんだしさぁー、次はこっちから行かせてよ?」
「まぁ別にいいけど?」
かと思えば木村があっさりと立て直した。
「よぉーし! じゃ遥!」
「わ、私!?」
木村は遥にボールをパスした。 どうしようかとオロオロしている遥は……
「み、美子ちゃん」
ドリブルもせずにボールを美子に渡した。 ルール……
「玄ちゃーん、パス!」
「ちょっと美子! そっちは敵!」
「あ! そうだった」
アホな美子は俺にパスしてきた。 あいつもある意味栗田と変わらん。 とはいえボールを貰ったのでドリブルして女子チームのコートに攻め入りシュートをしようとすると速水がすかさず俺の目の前に立ち塞がってボールを弾かれた。
速ぇ…… やっぱ速水運動神経いいよな。
「あー琴音! せっかく玄ちゃんの活躍のチャンスだったのにー!」
「バカじゃないの大食いお化け! あっちは敵よ」
「お前が言うな!」
なんかもうグダグダじゃね?