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その63


「ウチあんたの事が好き」

「速水、俺も……」









こうなったのはつい20分前の事、俺は終業式が終わり帰ろうと思って廊下に出た時突然誰かに腕を掴まれ力強く引っ張られた。



「ちょっとこっち来なさい、誰かに見られちゃうでしょ!」

「速水!? なんで?」

「いいから来なさいっての!」

「お、おい!」



どこまで行くのかと思ったら校舎を出て校舎裏に連れて行かれた。 こんなところに連れて来るなんてもしかしたらと思ってしまう。



人気がないことを確認すると速水は掴んでいた腕を離した。



「いきなりなんだよ? ビックリするじゃん」

「美子最近とっても機嫌がいいの、由比ヶ浜と上手くいってるみたいで何より」

「…… そんな事いうためにここに連れてきたのか?」

「違うわ、これから夏休みよね」

「まぁそうだけど?」

「美子からね、みんなで集まって遊ばないかって言われてるの」



言ってたなそんな事、速水達も誘ってって。 それは俺も少し楽しみなんだ。



「美子のお誘いなら行くわ、あのチビ女も誘いたいって言ってたけどウチが居るのに来るのかわかんないけど。 まぁ本題はそこじゃないわ」



速水は組んでいた腕を解き俺を指差した。



「いい機会よ、これを機にあんた美子か遥に告っちゃいなさいよ」

「はあああッ!?」



なんでそんな流れになるんだよ!!



「ちょっと待てよ、何言い出すのかと思えばまたそれかよ!?」

「こっちこそまたその反応? って言いたくなるわ、もう傍目から見てても美子と遥の2人とそんな感じの関係って見てて思うわ。 それに夏休みに告白しておけばお祭りやらなんやらに2人でデートしたりでいい事尽くめじゃない」

「ツッコミたいところはいろいろあるけど告白とかって……」

「じゃあウチで練習すればいいじゃん?」



な、何…… ? 速水で告白の練習だって? 俺にとっては練習じゃなくてガチなんだけどわかってんのかこいつ……



「そ、それは…… だって俺」

「あー大丈夫、ウチは何も感じないから」



はいバッサリ。 しかも何も感じないとは……



「ほら、美子か遥だと思って言ってみなさいよ」

「どう見ても速水は速水にしか見えない……」

「あんたねぇ…… でもそっか、何も由比ヶ浜から告白するとは限らないわよね、美子…… ううん、遥だってやるかもしれないわ」

「何を?」

「あんたが告られるかもしれないって事に決まってんじゃん!! ムカつく! ワザと鈍いフリしてんの!?」

「そんな声出したら目立つだろ!」



俺のリアクションに速水はキレるが速水を練習台にするなんて。 そりゃまぁ美子と遥は俺には勿体ないくらいの女の子なんだけどなんで速水となんだよ〜。



…… と、速水に仮想美子、遥として告白されたわけだが。



「だからウチじゃないっての!!」

「でも目の前に居るのが速水だしなぁ」



すると俺は思い付いてしまった、告白の練習って事は結構大胆な事をしてもいいのではないかと。 練習だし……



「わかった、次は真面目にやる」

「何よ急に? 真剣な顔になっちゃって」

「速水から言い出したんだろう?」

「まぁそうだけど…… じゃあ行くわよ、今度はちゃんと美子や遥っぽくね」



速水はすうっと息を吸っていつもの険しい顔付きから力が抜けて優しい表情になった、思わずドキッとする。



「私…… 玄ちゃんの事が好き」



美子っぽく速水は言ってみせた。 俺はここぞとばかりにその瞬間速水の両肩を掴むと速水はギョッとした顔になりそのまま壁に押しつけた。



「ちょッ……」

「俺も…… ずっと好きだった」

「いやキモ……」



はい撃沈〜…… 真顔でキモいと言われてしまった。 こうなるとは思っていたけど速水に言われると傷付く。 実際客観的に見なくてもキモかった事は事実だけど、



「調子に乗んな!!」



速水は両手で俺の胸を押して俺を払い除けた。 やっぱこうなるよな。



「ごめん速水、やっぱ速水は速水にしか思えないわってあれ? 速水?」



速水は顔を手で押さえて少し赤くなっている? ような気がした。



「うっさい!! こっち見んなバカ!ここまでしろなんて言った!? ウチだって自分からとか言ったことないんだからさ! それがなんとも思ってない奴からでも」 

「それってちょっとは響いた的な……」

「あーないない、勘違いするんじゃないわよ! やっぱウチだとダメか、でもちゃんと近いうちにハッキリさせなさいよ!?」

「あ……」

「何よ?」

「でもなんか美子がミスコンでもし1番になったら言う事ひとつ聞いて欲しいって言ってた」

「?? 1番になったら…… ふぅん」



それを聞いた速水は少し考えたような素振りを見せた。



「まぁいいわ、あんたはしっかり美子と遥と夏休み遊びなさい。 ウチは応援したげるから」

「あ、ああ…… つかなんか意地になってないか速水?」

「なってないわよ! 美子ったら中学の時に友達だと思ってた相手にそんな酷い事されてたんならウチは尚更ちゃんと美子にはハッピーになって欲しいの!」

「こら!!」

「うひゃあッ!!」

「うわッ!」



どこからか聴こえてきた声に俺と速水は驚いたがそいつの正体は木村だった。



「葎花脅かさないでよ!! マジでビビったじゃん!」

「あはは、琴ったら「うひゃあッ」だって。 美子も探してたよ、早く戻った方がいいんじゃない?」

「そうね、美子に誤解されるといけないし。 由比ヶ浜、わかってると思うけど内緒よこれは!」

「わかってるって。 はぁー……」



告白か、俺の人生初の告白は見事に大爆死だったしいい記憶はない。 美子か遥から告白されるかもしれないと速水に言われたがもしそうなったら俺は速水が好きだからとフッてしまうんだろうか? いやいやいや…… モテる奴みたいな思考回路やめろ俺。



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