その62
「なんだぁ〜? 2人で校内デートでもしてて遅れたか?」
「違うっつの」
2人揃って遅れてきたので仕方がない……
「玄君大丈夫?」
「ああ、心配掛けてごめんな」
そう言うと遥は察したのか「良かった」と小さく微笑んだ。 そして授業が終わると……
「玄ちゃん、仲直りの印に今日一緒に帰ろう?」
「え? あー勉強……」
「ん?」
「いいよ玄君」
「…… 遥」
「??」
「ありがとな、いろいろ心配させて気を使わせちゃって」
「う、ううん! 玄君だからいいの! む、寧ろこちらこそありがとうだよッ」
お礼を言われる事は特にしてないけどな。
「なんかこうして帰るの凄く久し振りな気がする!」
「そりゃあ拒否られてたからな」
「拒否ってない!」
「そぉいや昼休み言おうとした事ってなんだ?」
「え? なに?」
「なんで俺だけ避けられてたの? ってやつ」
「あー…… うぅッ、えーっとそれは…… あ!! そういえば例の約束あれやっぱり有効だからね!」
「約束?」
「ほら、私がもしミスコンで1番になれたらっての」
ああ…… 逆になれなかったらどうするつもりなんだろう?
「美子ってさ、可愛いけど……」
「可愛い…… けど?」
「速水とか遥…… 他のミスコン部の先輩も居るけど大丈夫か?」
「んー…… お腹いっぱい食べれる量は負けないよ!」
「いやなんもそれ勝算に繋がってないし大食いだって認めてるようなもんだぞ?」
「あれ!? ほんとだ、えへへ。 でもまだ先だしとりあえずそれは置いといて」
自分から切り出しといて置いとくとは。
「置いといてなんだよ?」
「テストヤバい…… じゃなかった! そろそろ夏休みだね!」
「テストの方が最初だろ?」
「テストも大事だけど夏休みも大事だよ、玄ちゃん何か用事とかある?」
「んー、その頃になってみないとよくわかんないけど」
「だったらみんなで遊ぼうよ? ほら、愛菜ちゃんとか佐原君誘ってさ」
「栗田? 佐原まで? お前あいつらとそんなに仲良かったっけ?」
「そこまで仲良くないけど仲良くはなりたいかなって。 愛菜ちゃんって琴音と同じで当たりが強いけど私が泣いてた時結構気遣ってくれて優しかったし」
そうだったな、言う事は酷いけど泣いてる美子にあたふたしながらも元気付けようとしていた気がする。
「杏樹ちゃん……」
「ん?」
「杏樹ちゃんともあんな感じじゃなくてもっと仲良くしたかったんだけど」
「お前あんな事されてまだ仲良くしたいのか?」
「うん、だって仲良くなろうとしないと仲良くなんてなれないし。 前に言ったじゃん、みんなと仲良くなりたいなって。 でも実際目の前にすると思い出して足がすくんじゃって。 でも玄ちゃんと遥ちゃんが居てくれたから心強かった」
「なんていうか…… 基本ポジティブだよなお前」
まぁそれが美子の良いところなのかもしれない。
美子と別れ家に着くと靴が1人分多かった。 お客さんかな? と思って靴を脱ぐとリビングから姉貴が顔を出した。
「玄帰ってきたんだ」
「見りゃわかんだろ、お客さん来てるの?」
姉貴が意味深にニヤリと笑った。 気持ち悪りぃな、なんなんだよ?
「にしし、紹介したげるッ」
姉貴がリビングに戻り次に顔を出した時誰かと腕を組んでいた。
「この人お姉ちゃんの彼氏!」
「え!?」
ニンマリ笑っていきなり俺に自分の彼氏を紹介した。
出来たのかよ…… いつの間に?
その人を見ると同じ学校の制服だが…… 姉貴の同級生だろうか?
「こんにちは玄君。 カヤから聞いてるよ、俺はカヤの同級生の寺嶋 哉太だよ、よろしく」
「姉貴がお世話になってます、弟の玄です」
「あらぁ〜、玄ったら畏まっちゃって。 お姉ちゃん取られたから寂しいのかな?」
「んなわけないだろ、こんな姉貴にも遂に彼氏が出来たんだなぁってちょっとビックリしただけだって」
「誰がこんな姉貴ですってー!」
姉貴からヘッドロックを食らっていると母さんが出てきた。
「カヤったらそんなとこ見せると哉太君に嫌われちゃうわよ?」
「おっとそうだった、失礼な弟でごめんね哉太」
「先輩には何も失礼な事言ってない」
「私に失礼でしょ! さあー、玄はほっといて部屋行こう?」
姉貴はとっとと先輩と部屋へ行ってしまった。
「マジか……」
「お母さんもいきなり紹介されたからビックリだったわ、そのうち玄もそうなるのかしら?」
「知るかよ」
そうしてテストも終わり終業式になるが…………
「由比ヶ浜」
「速水……」
「ウチ、あんたの事が好き」
「!! 速水、俺も……」




