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その6


「あれぇ〜? 玄ちょっと待って」

「なんだよ?」



姉貴が帰って来た俺の近くに来てスンスンと匂いを嗅ぐ。



「な、なんだよ? なんか匂うのか?」

「ん〜、玄らしくない甘い匂いが微かにする…… これは女もしやもしやの子の匂い?」

「は!?」

「あははッ! キョドり過ぎだって。 そっかぁ〜、玄ももうそういうお年頃かぁ」



姉貴の奴鼻がいいからな…… つーか想像してるほどの事じゃない、あれは多分俺以外の奴でもやってると思うし逆の立場だったら俺だって…… いやいや、深く考えるのはよそう。



「あらぁ〜? 急に押し黙っちゃってやっぱり?」

「んなわけないだろ!」

「ムキになっちゃう所が更に怪しいわねぇ。 でも良かったじゃない〜? 女っ気がないよりあった方がいいもんね、お姉ちゃんも女子だし何かアドバイスでもしてあげようか? あ、オシャレには気を遣いなさいよ、靴もちゃんと綺麗なの履くのよ? 女の子はそこら辺の身嗜み見てるからねぇ、まぁこれであんたに彼女でも出来ればちったぁ寂しい学校生活に華があるんじゃないかしら〜?」

「うるさいなぁー! ベラベラ御託並べやがって姉貴だってまともな経験ないくせに偉そうな事言ってんじゃねぇよ!!」

「な、なんですってぇ〜!!?」








以下略……




とここまでは俺の脳内シュミレーションだ。 こんなキモい妄想を繰り広げているのも美子と密着してしまったからだ、姉貴の顔でも見てげんなりするか。



だが玄関を開けるとそこには家では見かけないシルエットが……



「は…… ?」

「あッ」

「あら玄、おかえり」

「遅かったわね、あんた何すっとぼけた顔してんのよ?」



そこには母さんと姉貴、そして何故か宮野が居た。 



「お、お邪魔してます由比ヶ浜君」



宮野は驚いている俺にペコッと俺に頭を下げた。



「そんな改まらなくていいのよ、玄でいいからね? 遥ちゃん」

「そうそう、玄に女の子のお友達居るなんて母さんビックリよ」

「あ…… ええと、…… 玄君?」



な、なんだこの状況!? なんでここに宮野が? てかなんで俺の家知ってんだ?



「俺…… 宮野が家に来るなんて聞いてないぞ?」

「ごめんなさいッ! 勝手に来てしまって」

「コラ玄! あんたの落とし物をわざわざ届けに来てくれたんでしょーが!」

「落とし物?」



姉貴は俺に生徒手帳を見せた。 あれ?これ俺の生徒手帳か? いつの間に下ろしたんだ? 



まぁ俺の家わかったのはこれ見たからか。 てか学校で渡さずにわざわざ家に届けにくるとは。



「そうだったのか…… ここまで届けてくれてありがとな」

「い、いえ、席も近いですし」



それ何か関係あるか? とツッコミたい。



「良かったら遥ちゃんお茶でも飲んでかない? わざわざ届けに来てくれたのに何もなしじゃ悪いから」

「そうそう上がってきなよ? よく見れば遥ちゃん大人しそうだけどなかなか可愛いじゃない、やるわね玄」

「何がだよ? 宮野だってこの後予定とかあるかもしれないだろ、受験生なんだから」



チラッと宮野を見ると宮野もこっちを見ていて視線が合う。



「あの! ご迷惑お掛けしますので大丈夫です」

「ほら、本人もそう言ってるんだし」

「迷惑ならこっちが掛けたんだから心配しなくていいのよ? さぁ上がって」

「てことでほらほら」

「え?」



姉貴は宮野の手を引っ張って宮野は慌てて靴を脱いだ。 宮野が靴を並べる暇もなく連れて行かれたので玄関に雑に散らばる。



俺は溜め息を吐いて宮野の靴を直してリビングに行くと宮野はテーブルについていた。



「はいどうぞ〜」

「ありがとうございます」



コーヒーを出され宮野は母さんにお辞儀をした。 そして姉貴は宮野の隣に座った。



「それでそれで? 玄の奴学校ではどう?」

「どうって普通に決まってんだろ?」

「ジャラップ!! 私は遥ちゃんに聞いてるの」

「ええと由比ヶ浜君は……」

「玄!」

「…… 玄君は…………」



ま、まぁ何もないよな? 



「優しいです」

「え〜? 遥ちゃんに優しくしたの?」

「ま、前に修学旅行の時班からはぐれた私に見つかるまで付き添ってくれて……」



あ! そういやそんな時あったな、あの時俺もはぐれちまって携帯の充電もそんな時に限って2人とも切れてて仕方ないからどっちか見つかるまでバラバラに探すよりも2人で探そうぜって。



「ほぉほぉ、それから遥ちゃんはもしかして玄に首ったけとか!?」

「え!! い、いえ、それは……」

「んなわけあるかよ! 何グイグイ聞いてんなよ姉貴は! 図々しいな」



家族の前で他人から俺の話題とか聞いてらんないぞ……



それからあれやこれや余計な事を姉貴はズカズカ聞いてくるので何かと疲れた。



「今日はうちに来てくれてありがとね遥ちゃん」

「姉貴がウザかったからもう2度と来ないと思うぞ?」

「はぁ? ウザいんじゃなくてフレンドリーなだけじゃない、ねぇ遥ちゃん?」

「あはは…… そうですね」

「ほらね!」

「言わせてるだけじゃねぇか」

「ほら、あんたはお見送りして来なさいよ!」



姉貴にドンと背中を押され玄関を出た宮野にぶつかる寸前で止まった。 ふう、今度は当たらなかったぜ。



「だ、大丈夫…… ?」

「おう、今日はいろいろと悪かったな。 まさか生徒手帳落としてたとは。 学校で渡してくれても良かったのに」

「渡そうかと思ってたんだけどタイミング合わなくて。 私その…… こんなんだから。 それに七瀬さんも居たし私邪魔かなって思って」

「あー、そっか。 でもそんなん気にすんなよ? 宮野が邪魔とかありえねぇだろ?」

「え!?」

「へ?」

「なッ、なんでもない!! お姉さん綺麗だね!」

「そうか?」



そんな唐突に姉貴を褒められても……



「じゃあまた」

「ああ、またな」



小走りで俺の家を後にした宮野は数メートル進んだ後コケた…… つーかパンツ丸見え。



すぐに起き上がりバッとスカートを隠し俺の方を見たので俺は顔をそらしてまた宮野に視線を移し何かあったの? 的な顔をした。



「あ…… あうぅ」

「大丈夫か?」



宮野は膝を擦りむいていたので結局また俺の家に戻り絆創膏を貼って帰って行った。



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