その59
「ちょっと由比ヶ浜」
「あれ? 玄、速水が呼んでるぞ」
「聴こえてるよ」
ある日のこと移動教室のために速水のクラスを横切ると速水に呼び止められた。
「由比ヶ浜以外は用はないから行ってて」
「お、おう…… ?」
速水はなんかピリピリしている。 元々睨んでるような目付きなのだが今日は一段と迫力がありそんな速水に英二は圧倒される。
「じゃあ俺先に行ってるからな〜」
「ああ」
「行ったわね、ちょっとここじゃなんだしまだ時間あるからついて来て」
そう言われてついて行くとこの時間帯には人が居ない図書室に連れて行かれる、そしていきなり胸ぐらを掴まれた。
「あんたッ! 美子に何したの?!」
「何って…… 俺が美子に何かすると思うか!?」
「そうね、何もしないわよね? 美子が落ち込んでたってあんたは知らんぷりなんだから!!」
「落ち込んでる? そうなのか?」
なんてよそよそしく言うのはこれ以上美子に関わりたくなくなったからもある。 この前美子に言われたのは明らかな拒絶だったから。
「そのふざけた態度は何?」
「いや、なんでもない」
すると速水は俺を腕を引き俺に顔をグイッと近付けた。
怖いけど相変わらず綺麗だなぁ……
「変な事考えてるでしょ?」
「い、いえ……」
「まぁいいや」と言った速水は少し顔が曇った。 いつの間にか怒ったような顔が悲しそうな顔に変わっていることに気が付く。
「美子、あんたの事避けてるでしょ?」
「…… そうみたいなんだけどそれに一体何の意味があるかよくわからないんだ」
「美子の様子がおかしくなったのはあんたら3人で遊んで来たあと辺りからだった、その時何かあったんならウチに話して! ほっとけないしお願いよ」
こいつにそんな顔されたらな…… 言った方がいいか? 速水は本気で心配してるし。
俺は事の顚末を速水に話した。
「そっか、それが原因っぽいね。 あーでも美子の中学時代ってよくわかんないしなぁー」
「どんなだったって話した事ないの?」
「まあサラッとはあるわよ、けど昔も大事だろうけど昔があって今の美子があるわけだし今の美子を尊重してたしで。 なんか理由が理由だけに聞き辛いわねぇ。 ん?」
速水が俺の顔を見てピンと何か閃いたような顔をする。 あ、察し……
「由比ヶ浜が聞くのが1番効果ありそうね」
「ほらきたやったぱり」
「お察しで何より、美子はあんたの事になると目の色変わるから。 それにあんたを避けてるって事はあんたがガツンと行けば何か変わるかもしれないわ」
「いやいやいや、避けられてる張本人がガツンと行ったら逆効果じゃないのか?」
「ウチはそうは思わない」
「なら…… じゃあ俺速水の事前から好きだ!!」
「ごめんそれは無理」
「ああそう……」
流れるように華麗に即答…… ある意味似たようなもんだし速水自身がそうは思わないって言ったからガツンと言ってみたのに。
「美子とこのままでいいの? ウチはあんたに美子ほどの好意は持ってないしそんな美子から好かれてるなんて光栄に思いなさいよ。 ねえ、美子に避けられて平気だった? なんとも思ってないの?」
「…… なんとも思わなくないわけないだろ」
「そう思うんならキッチリ美子と話つけなよ、中途半端にするとまた同じ事になるから」
「わかった」
「わかったのはウチに言われたから?」
「それもあるけど…… でもどっかで放置すればそのうち元に戻るなんて思ってた、でもそれじゃみんな楽しくないよな? 美子も遥も速水だって」
速水に言われたから? 美子とこのままじゃいけないって思ったから?
そんな風に考えてもややこしくなるだけだ、行き当たりばったりみたいだけど俺は今自分自身でやっぱりこのままはダメだと思ったから行動する、もう出たとこ勝負だ。
「そっか。 なんだ由比ヶ浜! 結構男らしい顔出来るんだね! 好きじゃないけど」
「一言余計だろ」
「そうだねごめん。 まぁ…… 友達としてならね」
「え?」
「ほら、善は急げだし行ってきな」
その時キーンコーンカーンコーンと休み時間が終了した鐘の音が聴こえた。
「「あ……」」
「あんたって美子と同じく締まらないのね」
「知るかよ」
これは前進なのか後退なのかどっちか知らんがまずは美子と仲直りだ、一方的に拒否られてるんだけどな。




