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その57


「モールに行って何か買うのか?」

「んー、今のところ何も…… あ! 何か食べよう? きっと美味しいお店あるよ!」

「そうくると思った、飯代掛かるなお前は。 遥は大丈夫か?」

「そんなにはないけど大丈夫だと思う」



遥は財布を開いてお金を確認するとチラッと美子が覗いた。



「大丈夫だよ遥ちゃん、私に任せて!」

「え? あ、はい……」



こいつの小遣いは全て飯代に注ぎ込まれているような気がするからな、なのに栗田の言う通り大食いお化けを頑なに否定している……



駅に行き電車に乗ってそのまま隣街へと向かっている最中。



「ふんふ〜んふ〜ん♬」

「美子ちゃん楽しそうだね」

「うん! 着いたら何食べようかなぁって!」

「最早食い物の事しか頭にないのな。 モールじゃなくても良くないか?」

「あー! 私が食べる事しか考えてないと思ってるー!!」



美子が頬を膨らませて言うけどこいつに記憶力はあるのだろうか?



「別に俺ら3人じゃなくても速水と木村も誘えば良かったんじゃないか?」

「むふふ。 そうなんだけどさ、ねぇー? 遥ちゃん」

「へ? え?」



美子は遥にゴニョゴニョと耳打ちすると遥は真っ赤になった、そして美子の顔も若干照れている。 



何言ったんだ?



「美子に何言われたんだ?」

「ひえッ! な、なんでもないよ」



いやそんなに焦られるとなんでもないように見えないぞ?



遥は恥ずかしそうに俺に背を向けてしまった。 一応自分の身なりを確認した、まさかチャックが開いてるなんて事ないよな? なんて思いながら。



「あ、玄ちゃんここの駅で降りるよ?」

「そんなのわかってるんだけど?」

「せっかくリードしようと思ったのに〜。 ねぇ遥ちゃん」

「ふええッ、私がリードなんて……」



2人でなんかキャッキャと騒いでいるが……



「…… お前ら降りないの? ドア閉まるぞ?」

「わッ! ヤバッ」



美子は慌てて遥の手を引いて電車を降りた、これでリードとかって。



「危なかったねぇ遥ちゃん」

「いやお前だよ」

「オホン! では気を取り直して行きましょー! ていうかもう目の前なんだけどね」

「あー、やっぱあれか。 デカいな」



デカいモールを見てげんなりする、だってあそこの中歩き回るんだろ? 買う物もないのにめんどくせぇな。



「玄君どうかした?」

「いや見て回るの疲れそうだなって思ってさ」

「あはは、私もそう思ってた」



そんな中、美子が楽しそうに歩いていると足を止めた。



「うそ?! 美子じゃーん! こんなとこで会うなんて思わなかった」

杏樹あんじゅちゃん……」



美子の前から声が聴こえた、友達かな?



「美子、友達か?」

「あッ、う、うー…… ん」



振り向いた美子は美子にしては凄くぎこちない笑顔になっている。 どうしたんだ? と思い美子に声を掛けた女子に目を向けるとかわいいけどあまぁ普通の女の子だけど。



「隣の人、美子の彼氏?」

「え? ち、違うよ」

「えー!? そうなの? でもあんな事あったら作りにくいかー」

「うッ……」



あんな事ってどんな事? つかなんだよその思わせ振りな言い方は。



「ごめーん! もしかして思い出させちゃった? 久し振りに会ったから1番印象に残ってる事思い出しちゃった」



なんか聞いてると美子にとってはあまり良く思わない事を言われてるみたいだ。



「はは…… なんて事ないって。 杏樹ちゃんひとり?」

「んなわけないじゃん? ほら、あそこにみんな居るよ」



その杏樹とかいう奴が指を差すと少し離れたところに女子のグループが居て視線を感じたのかこちらに手を振っていた。



「ちょうどいいじゃん、せっかくこうして会ったんだし昔馴染みのメンバーとモール見て回ろうよ? そこの男子君と…… あら可愛い! そっちの子も一緒にさ」

「ええっと……」



明らかに美子は困っていた、仕方ないなと思い俺が声を掛けようとしたその時……



「あ、あの! 美子ちゃんは今日私達と一緒に遊ぶ予定だったので!!」



いつもはオドオドしていてあまり話に割り込んでこない遥がハッキリとものを言った、しかも相手の申し出を否定する発言を。



「ん? 見た感じそうみたいだね、でも私らも居た方が楽しいって。 ねえ美子?」

「…… ううん。 ごめん杏樹ちゃん、やっぱり私今日はこの2人と遊びたいから」

「酷いね、中学までずっと一緒だった同級生の誘いを断るの? それとも美子にとっては上辺だけだったのかなぁー?」

「ち、ちが」

「違うよ! 私はよくわからないけどそういう言い方ないと思う。 あなたは美子ちゃんが嫌がる事言ってた、本当にお友達なら久し振りに会ったのにそんな事言わない!」



どうしたんだ遥? って友達がああも言われてんだから当たり前なんだけどまさか遥がこういう事言うなんて意外だった。



「いやん、初対面でこんなに言われるなんて。 ちょっと可愛いからって調子に乗らないでよ部外者のくせに」

「部外者じゃないもん…… お友達だもん!!」

「遥ちゃん…… そうだね、私と遥ちゃんはお友達だもん」

「そっちを選ぶんだ? いやー、私ら眼中なしかショック〜」

「そ、そうじゃないよッ、その……」

「まぁまぁ。 そっちはそっちでこっちはこっちでさ、元々俺ら美子と見て回る予定だったから」

「あーら、それは失礼しました。 じゃあ美子は美子らで楽しめば?」



その子は友達の元へと戻って行った。 美子はずっとそれを見つめていた。








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