その55
「玄君起きた方がいいよ?」
「んあ?」
遥に肘をシャーペンの頭で突かれた。 おっといけない、寝てしまうとこだったぜ。
亮介からゲームを借りてやってたら徹夜になってしまったんだ。 今は授業中、遥が起こしてくれなかったら注意されていたかも。
「玄君寝不足? お勉強?」
「宮野〜、こいつが勉強してるような奴に見えるか?」
英二が遥の話に割り込んできた。
「ひ、人は見掛けによらないから」
それは遠回しに勉強してない奴って言ってるようなもんじゃないのか?
「勉強…… と言いたいけどゲームしてたら朝になってた」
「ほらな」
「そんなに面白いゲームだったんだ」
「ありゃッ」
遥の返しに英二はずっこけそうになる。
「え?」
「はははッ、宮野と七瀬ならそうだよな、この野郎!」
「いてッ! なんで俺を小突くんだよ!?」
そして昼休みが終わりそうになり教室に戻ってきた俺に遥は何か言いたげだ。
「あれ? なんか俺についてる?」
「う、ううん! ええっと……」
「玄ちゃーん、期末前に遊ばない?」
その時美子が割り込んできた。
「期末前なのに遊ぶなんて余裕あるな美子は」
「余裕がないから今のうちに遊んでおくんだよ!」
「あ、あの!」
「遥ちゃんも一緒に遊ぼ?」
「いや、遥なんか言いたそうだったのにお前が遮るように現れたから」
「違うの…… 私も美子ちゃんと同じ要件だったの。 だから一緒に遊びたい」
「ほらー! 遮ってないじゃん、遥ちゃんとはやっぱり気が合うねぇ!」
「たまたま意見が一致しただけだろ?」
マジかー…… 美子ならともかく振り絞るようにして言った遥の誘いを断るのには少し罪悪感がある。
「もしかして玄君都合悪かった? ごめん、余計な事言って……」
「え? 何か用事あるの?」
「ちょっと……」
亮介から借りたゲーム進めたいんだけど。
「ちょっと?」
「ゲームしたい」
「はい決定ー! じゃあ行けるね!」
な、なにー!?
「ゲームはいつでも出来るでしょ? なんだったらナオちゃんと一緒にやればいいからさ。 ダメだよぉ〜、メッ!」
そういう事じゃないんだが…… つーかこの前お兄ちゃんとか言ってたくせに今度は姉気取りか。
「それって速水達も来るのか?」
「来ないよ? 私と玄ちゃんと遥ちゃんの3人!」
一瞬なーんだと思ったがそんな風に見せないようにしないと。
「楽しみだね玄ちゃん遥ちゃん!」
「お前が1番はしゃいでるだろ」
「ふふッ、私も楽しみ」
「ところでいつの話だ?」
「今日だよ?」
「は!?(え!?)」
こいつはまた急に……
「お前いつも急すぎるだろ……」
「ダメ?」
美子がウルッとした顔で俺と遥に迫った。
「七瀬それ可愛い、俺にも言ってくれ!」
「は?」
英二の何かのスイッチが入ったのか美子に懇願する。 何やらせたいんだこいつ……
「んー…… ダメ?」
「ち、ちがーう!! なんで俺には淡白なんだ!?」
「えッ? 同じように言ったつもりなんだけどダメ?」
「くそー、玄と宮野だけかよ」
「じゃあ玄ちゃん遥ちゃん、学校終わったら帰っちゃダメだよ?」
「はいはい」
「うん」
掃除の時間になり廊下に出ると速水と木村が居た。
「あー由比ヶ浜やっほー!」
「今日は美子と遥で遊びに行くみたいじゃん? いいじゃないの」
「美子から聞いたのか?」
「美子が嬉しそうに話してたよ〜? 良かったじゃん由比ヶ浜」
何が良かったんだか……
そうして美子と遥と学校が終わった後どこで遊ぶのかも知らないが遊ぶ事になった。
 




