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その54


「んじゃスッキリしたとこでウチは帰るわ」

「え、もう真っ暗だよ? ひとりで大丈夫??」



美子は速水にそう言った。 ふう、速水に対してもいつもの美子のようだ。



「あんたねぇ……」

「うん?」

「はあー、まぁいいわ。 じゃあそこら辺まで少し送って行ってくれる?」

「了解!!」



速水がチラッと俺を見た。 いいんだよな?



「わかった、じゃあ行くか」

「ゴーゴー!」

「さっきのはなんだったのよまったく……」

「つーか美子はなんで学校に居たんだ?」

「え? …… 帰ったと思わせてサプライズしようと思って葎花には先に帰っててもらってたの。 でもいつまで経っても来ないし篠田君が帰ったの見たからもう来るかなって思っても2人来ないし……」

「それって美子ずっと待ってたわけ? こんな時間までどこで?」

「校門の角から。 でもあまりに遅いから篠田君に聞いたら体育館じゃないかって。 でもこの時間だと閉まってて……」

「え!? じゃあお前扉の前まで来たのかよ? なんでそん時に叩くか何かしてくれなかったんだよ!」

「だって…… ずっと待ってたからサプライズしたいと思って」

「…… まぁある意味サプライズだったわね」

「あ、ああ……」

「ほんと!? 良かったぁ〜」



良くねぇよ!! と言いたかったがグッと飲み込んだ。



そうして美子と一緒に速水の家の近くまで送って歩いているなんてもしやなんだかんだで速水の家に行けるんじゃいか?



「あ、ここでいいから」

「え? もうちょっといいのに」

「悪いしいいわ。 あとは2人でゆっくり帰ってね」

「うーん、そっか。 気を付けて帰ってね!」

「美子と由比ヶ浜こそ。 じゃあね」



ガクリ…… 無念。 仕方ない、そんな上手く行くわけないし俺が居るから速水は結構手前でいいやと言ったのかもしれない。



「行こっか玄ちゃん」

「ああ」



美子はさっきのシリアスモードから一転、帰りはめちゃくちゃ話す。



「でね、ナオちゃんがさ〜」

「あれ? そういやお前こんな時間まで待ってたって事は夕飯とかどうするんだ?」

「ん? ああ、コンビニでなんか適当なもの買って食べようかと思ってたからお母さんにいいよって言っといたよ」



つまり俺と速水を待っててそうなったってわけか。 美子が勝手にやった事とはいえこんな暗くなるまで待たせて一瞬あんな落ち込ませたのもあるし俺がそれくらい奢っておいてやるか。



「美子俺が奢るよ、こんなに待たせて悪かったしさ」

「え?! いいよ、玄ちゃんと琴音を待ってるなら全然苦にならなかったしさ、それに玄ちゃんお金持ってなさそうだし」

「…… 何気にサラリと人を貧乏人扱いしたよな?」

「あわわッ、そんなつもりじゃないよ? さっきは玄ちゃんと琴音になんだか迷惑掛けちゃったし。 私1人だけアボンだったし」



アボンって…… 実際は俺も速水もかなり焦ってたけどな。



「まあ気にすんなよ、奢られとけ」

「えへへ、やったぁ! こんなに優しくしてもらって嬉しいなぁ」



ニコニコ笑う美子を見ていると俺の事を好きなんて凄く悪い気がしてくる、遥だってそうだ。 なんだか速水のために利用してるみたいで。



「ところで玄ちゃん」

「ん?」

「さっきはなんでハグしたの?」

「え? なんでって……」



美子の気分が直るかと思ってと言い掛けたがなんで俺がハグすると美子の気分が良くなるかと自問自答……



それじゃあお前って俺の事好きなんだろ? と恥ずかしい事言ってるみたいだし。



「ええと……」

「うん」

「姉貴がさ、俺が小さい頃泣いてた時にやってくれたんだ。 そしたらなんか涙が止まってって…… シスコンとかじゃないからな」



嘘ではない、幼稚園かそこらの頃の話だけどな。



「そっかぁー。 うん、お姉さん大好きなんだね!」

「だからそうじゃないって」

「でも玄ちゃんのお姉さんがやった事私にしてくれたんだ? うぷぷッ」

「なんだよ?」

「なんでもないよお兄ちゃん!」

「は?」

「アハッ、どうですかぁー? お兄ちゃんの気分は?」

「おちょくってんだろ? 奢るのやめようかな」

「えーッ!? 嘘だよお兄ちゃん!」

「よし聞いてないな」

「いつもお姉ちゃんだからたまにはね! お兄ちゃんってこんな感じなのかなぁー?」



その後帰るまでお兄ちゃん呼ばわりされて美子に揶揄われた。


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