その49
その後ミスコン部の活動内容などを出雲先輩がざっくりと教えてくれた。
別に毎日集まる事もないし基本文化祭が始まる少し前までは好きなようにしていていいとの事だ、文化祭でミスコン部は生徒から投票で毎回誰が1番かという事を決めるのが毎年恒例だそうだ。
体育館の舞台で着るドレス選びなどがあるから文化祭の1ヶ月くらい前に呼び出しされるようだ。 俺らは何をするかというと男子は主に照明担当などの裏方があるみたいなんだが。
「はい、という事で入部届け頂きました。 それじゃあ今日は解散! というかしばらく何もないので各々自由に過ごすように」
「そ、それだけですか?」
栗田が拍子抜けしたように質問した。 楽で良いんだけど気持ちはわからなくもない、速水との時間……
「はい、それだけですよ〜」
そして俺達は部室から出た。
「…… なかなか変わった部活ね! なんかこうもっとそれプラスサムシング的な事があるかと思ったら」
「はあ〜ッ」
栗田が部室から出て言葉を発すると今まで喋らないでずっと栗田の隣に居た斉藤が溜め息を吐く。
「あー、面倒臭かった。 推薦いるとか事前に調べてたのになくなったなんてついてきた意味ないじゃん」
「ごめーん亜里沙、後で売店で奢るからさッ!」
「忘れんなよー」
「はぁーい。 速水首を洗って待ってなさい! あ、亜里沙待って〜!」
斉藤が行ってしまったので栗田は慌てて追い駆けて行った。 その2人が行った後速水も盛大に溜め息を吐いた。
「まさか栗田が来てるなんてね」
「琴ったらショウゴが居た時みたいな剣幕だったね」
「あの突っ掛かってくる感じが似てるのよ。 なんでウチッてああいうのに絡まれるのかしら?」
「琴が喧嘩っ早いからでしょー?」
「もとあと言えばあんたがミスコン部なんて見学したいなんて言うからこんな事になったんじゃない!」
「あはは、悪い悪い。 栗田が来てるなんて想像してなかったわ、ねぇ美子?」
「ほえ? そうだね」
美子は貰ったお菓子を食べながらそう答えた。 美子にしてはさっきは唯ならぬ感じだったが今は夢中でお菓子を食べている。
「それで? 美子は琴に勝機ありなの?」
「んー……」
美子は速水を見つめて難しそうな顔をする。
「わ、私も出るのかな?」
「当ったり前でしょ! 遥も自分の意思で参加するって言ったんだから。 それとも部室から出て決心が鈍ってきた?」
不安そうにしている遥に木村はニヤニヤとして言った。 遥か…… ミスコンに出てるとこなんて想像つかん。
「大丈夫だよ、遥ちゃんこんなに可愛いもんッ!」
「み、美子ちゃんお菓子が……」
「わわッ」
お菓子を食べながら遥を抱きしめたのでポロポロと手からクッキーのカスが遥の頭に……
「でもまぁ確かに何もないとは拍子抜けよね、楽でいいっちゃいいけど」
「あのー、さっきから全部聴こえてるよ」
「げッ……」
部室の扉が開いて出雲先輩が顔を出してジト〜ッとした目でそう言った。
そしてそれから少し経った後の週末の事俺は公園で美子を待っていた。 いつか言ってた俺の家に行きたいと言うのを覚えていたらしい。
それよりよりにもよって中間テストが近い時に来るとは。 受験が近い時やもそうだったが勉強でもするのかな? 姉貴も居るから揶揄われそうで嫌なんだよなぁ……
「玄ちゃーん! お待たせッ!!」
「うわッ! 居たのかよ!?」
「うん、そこの茂みに」
公園の花壇の奥の茂みを指差した。 マジかよ? 俺が着く前から隠れてたのか?
そんな姿を思い浮かべると若干シュールだ。 無駄に凝った事するよなこいつ。
「じゃあ行こっか玄ちゃん」
「…………」
「ん? どうかした?」
「お前の肩にイモムシついてるけど?」
「うびゃあッ!! やだやだ取ってぇー!」
「嘘」
「へ?」
驚かさられたので仕返しをしてやった、そうすると見る見る美子の頬が膨らんできた。
「むむむッ! 騙したなぁ! 嘘付きは刑務所行ってシャリ上げされるんだからね!?」
「シャリ上げって……」
まるで刑務所行ってきたみたいな事言うな……
「玄ちゃんのバカバカァ〜ッ! うううッ」
美子は何か俺を驚かすネタがないかキョロキョロと探し始めた、その時点で別に耐性が出来てるので驚かされる事ないと思うけど。
「あ、琴音!」
「え!?」
「嘘……」
「は?」
「うぐぐぐッ…… 玄ちゃんのバカァーーーッ!!」
それは反則だろ!! まんまと引っ掛かってしまった。