その46
「なんだ亮介も一緒か」
「ああ、木村に誘われてな」
「明は来なかったのか?」
「あははッ、西川ったらアタシらの事性的な目で見てくるからパスで〜」
放課後になって部活を見る事になったが速水は何部に入るんだろう? まさか体育会系な部活に入ったりするのかな? 運動神経いいし背も高いからバスケ、バレーなんかなんでも来いって感じだし。
「何よジロジロと」
「あ、速水は何部に入るのかなって。 運動系?」
「いえ、別になんでもいいわ。 入らなくてもいいけど便宜上入っておくようだから適当に。 由比ヶ浜こそ何部に入るの?」
「まあ俺もなんでもいいんだけどさ」
速水が良さそうと思った部活なら一緒に入ってみるのもいいかもしれない…… なんて言えない。 言ったら別行動されそうだもんな。
てか俺って速水っていいな程度しか思ってなかったのに告白したせいなのかいつの間にか速水に夢中になってないか?
くそ…… 亮介はそうそうに吹っ切れてたのにまさか俺がこんなに執着する事になるなんて。
つかなんで美子は体育館の方へ向かってんだ? みんな普通について行くし……
そのまま俺も美子について行くとやっぱり体育館だった。
「見て見てバスケ部! うわぁー部活って感じだね!」
「どこに行くかと思えばバスケ部を見に来たのね」
「あははッ、美子って自分の運動神経わかってる?」
「ほえ? なかなかいいセン行ってるくらい?」
「何気に自己評価高いわよね…… とりあえずいじめられるか放置されてるの目に見えてるからやめときなさいって」
「えッ!? ええーーッ! 酷いよ遥ちゃーん」
「へ? あ、ああ美子ちゃんに合った部活ちゃんとあると思うよ」
速水にほんとの事を言われた美子は遥に抱きついた。
「速水達は中学の時放送部だったようだけど1回もやってるとこ見た事ないよな?」
「あー、アタシが怠いから部活行くより遊びに行こうって琴達連れ回してたのよ、昼とかもダベッてたしね、まぁ美子にやらせたら面白そうだとは思ったけど」
うん、なんか変なの流しそうだもんな美子だし……
「葎花! それじゃあ玄ちゃんにダメな子みたいに思われちゃうからやめてよ」
それ…… もう遅いと思うが? 公園でよく話してみた感じでもうそう感じてたよ。
「琴だったらバスケ部もアリよねぇ」
「私は体育の授業でやるくらいがちょうどいいのよ、もっと時間的に融通が効くのが良いわ」
「うーん…… あ! そういえばここの高校ミスコン部があるから見てみようよ?」
「ミスコン部?」
「そうそう文化祭でね、ミスコン部に入った中から誰が1番可愛いかって発表するらしいんだ、琴と美子と遥入っちゃいなよ! いいとこまで行けるんじゃない?」
「マジか!? 速水と七瀬と宮野か、あれ? 木村は?」
「アタシはパスー! アタシも可愛い方だとは思うけど琴達には一歩劣るもん」
なんと…… そんな部活があるとは。
「ええ…… 何その自意識過剰な部活は?」
「わ、私なんてそんなの恐れ多くて……」
「私もそれより美味しいもの食べさせてくれる部活の方がいいかも」
「いやいや、この3人ならマジでいいとこ行けんじゃね、なあ玄?」
「う、うーん、そうかもな」
そんな事してもし速水が選ばれたりでもしたらますます遠い存在になりそうだ。
「でしょー? 部活内容もそんな頻繁に出なくてもいいらしいよ、たまに集まりあるみたいだけどやる事って言ったらその文化祭くらいだしね!」
「葎花〜、それって玄ちゃん入れるの? 私玄ちゃんと同じ部に入りたいのに」
「まあまあ! とりあえず行くだけ行ってみない? ほらほら!」
「あッ! 葎花!」
木村は美子と速水の手を引っ張って体育館を後にしたので俺らも追った。 なんか予想してない展開になってきてしまった。
「俺らもついて行こうぜ玄」
「…… あ、ああ」
「待って玄君!」
遥も俺らを追ってついてきた。 つーか遥なんてそんなミスコンなんかに出れるような性格してないだろうに木村の奴。 でも見た目は充分通用すると思うけど。
「あ! あそこみたいだぜ、文芸部の隣の……」
「本当だ。 あった」
美子達はその部室の目の前で止まっていた。
「おお! 来た来た、ここだよー!」
外から見れば教室の半分くらいの広さっぽいな、部員居るのかな? 自分で自分を可愛いとか思ってる奴らだろ?
「ねえ、やっぱやめようよ葎花? なんか恥ずかしいし…… 私やっぱり家庭科部とか見学してなんか食べさせてもらいたいよ」
食べさせてもらう気満々かよ……
「間食しないんじゃなかったの?」
「ウチも部室目の前にしたら面倒臭くなってきたわ」
「覗くだけ覗くだけ♬」
そんな事を部室の目の前で話していると扉がガラッと開いた。 そして扉を開けた人を見るとめちゃくちゃ美人の生徒だった、先輩かな?
「騒がしいと思ったらあなた達入部希望?」
その人は俺達を見てそう言った。