その45
「あー食べた食べた」
「本当にな」
「今日は運動したから早くにお腹が空いちゃったの!」
「そういえばお前も大活躍だったもんな」
「え!? 玄ちゃん見てくれてたの? ね、私大活躍だったでしょ?」
あれで大活躍だったとは…… どう見ても速水に迷惑を掛けていただけにしか見えなかったが。
「良かったら今度私とバドミントンしようよ」
「それって勝負になるかな?」
「大丈夫! 手加減するから」
いや…… 見るにお前が下手そうだから勝負にならないんじゃないかと言いたいのだがどうやらポジティブな受け取り方をしているみたいだ。
「そぉいや遥もお前とどっこいどっこいだったな」
「うん、遥ちゃんはなかなか油断出来ない相手だねぇ〜」
どこまでおめでたい思考回路してんだこいつは?
「あッ!」
「ん?」
「ねぇ玄ちゃん、後で玄ちゃんのお家に遊びに行ってもいいかな?」
「俺の家に? なんで?」
「なんで!? なんでって必要?」
美子は何故か絶望したような顔になった。
「え? 俺なんか変な事言った?」
「だってだって! 私達お友達だよ? なんでって言わなくてもいいよって迎え入れてもらえると思ってたのに」
そんなもん? でも美子って一応女の子だし男子を家に遊びに来させるのとはわけが違うと思うが……
「玄ちゃんの薄情者! おたんこなす! …… おたんこなすってどういう意味だろ?」
そして何故か自分が罵倒を浴びせている言葉の意味を考え出し始めた。
「はあ、わかったよ。 来てもいいよ」
「んー…… え!? ほんと??」
「ほんとだよ」
「やったー! 私頑張るね!」
「頑張るって何を?」
「ふえ? ええと自分磨き? まぁいいや! 約束だよ」
「ああ」
そうして高校生活も1ヶ月が経とうとしてる頃……
「なあ玄、部活何入る?」
英二からそんな質問をされる。 部活かぁ、やる気ないので文化系の部活一択だろうな。
「そういう英二は何部に入るんだ? やっぱ野球部か?」
「やっぱってなんだよ? まあ野球部だけどな!」
「ほらな」
なんか野球青年って感じしたからそうだと思ったよ、中学でも野球部って聞いてたしな。
俺は中学の時は大して行かなくても問題にならないPC部に入っていた。 美子トリオは放送部に在籍していた(聞いた事ねぇけど)、遥は新聞部だった。
この高校は一体どんな部活があるのやら…… なんて大体把握したけどな。
「で? お前は何部?」
「行かなくてもいい部」
「かあーッ! 青春してねぇな玄は」
「別にただサボりたいわけじゃないよ、もうそろそろテストもあるし時間がゆっくり取れそうなとこがいいなって思っただけだ」
「ほーん」
まぁこれいつも言ってた謳い文句だけどな。 姉貴にも後でどこがいいかって聞いといた方がいいかもしれないな、姉貴帰ってくるの早いし。 友達と遊んでない時だけだけど。
「玄君……」
「ん、なんだ遥?」
珍しくいつも横で聴いてるだけの遥が会話に入ってきた。
「文化系なら良ければだけど私と一緒に見て回らない…… かな?」
「うーん、そうだな。 いいよ」
「ありがとう、ふひひ」
「宮野が笑った……」
「たまには笑うぞ?」
「玄ちゃん部活のお話?」
気付けば美子も部活の話題に入ってきた、あっちで女子と話してたと思ったら……
「七瀬はどこ入るんだ? 玄と同じところか?」
「うん! 私玄ちゃんと同じ部活でいいや。 見て回るなら一緒に行かない?」
「あ、いや…… 遥と見て回ろうかって言ってたんだけど」
「美子ちゃんも良かったら一緒に……」
「ほんと!? やったぁー!」
「てっきり速水達と見て回るのかと思ってたけど」
「え? そうだよ」
「じゃあ玄君、みんなで行こう?」
結局大所帯で部活見学をする事になった、俺はこの後に及んでも速水も来るんだラッキーと思っていた。




