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44/95

その44


「玄ちゃん今日は大活躍だったねぇー!」

「お前本当に見てたのか?」

「見てた見てたッ! 玄ちゃんいつもより動いてたじゃん」

「動いてたって…… それじゃ俺以外の奴も大活躍じゃん」

「あれれー? ほんとだ、あははッ」



その日の放課後美子に無理矢理誘われ駅周辺に買い物に付き合わされていた。 別に買い物なんてないようでブラブラしているだけのような気もするが。



「大体大活躍したのは佐原だろ」

「佐原? 何君その人?」

「俺のチームの試合でディフェンス抜かしまくってシュートしまくってた奴」

「あーいたねぇ上手い人、黄色い声援浴びてたよね!」



なんだその印象?



「普通女子ってああいうの好きなんじゃないの?」

「へぇ、そうなんだ。 普通の女子はああいうのが良いのかぁー、 あ! でも玄ちゃんに言わせれば私ってズレてるみたいだから普通じゃないのかも!」

「笑っていうかそれ?」

「それにしてもお腹空いたねぇー、今日玄ちゃんにお昼に私のお弁当分けてあげたから足りなかったのかも」

「食い意地はってるお前がよく人に弁当のおかず分けたよな」

「あー! それ悪口だよぉ、罰として玄ちゃん何か奢って」



美子はそう言いマックを指差した。 奢るのは良いけどこいつの食う量…… 俺の財布は大丈夫だろうか?



「わぁー、中に入ったらますますお腹空いてきたぁー」

「うわぁ、中に入ったらますます財布が心配になってきた」

「え?」

「は?」

「アハッ」



美子は俺の目の前に来てニパッと微笑んだ。



「なんだよ?」

「にへへ、息ピッタリだね!」

「何がだよ?」

「早く並ぼー!」



俺の心配を他所に美子はレジへと並ぶ。 財布を確認すると千円ちょい、足りるのか……?



「ご心配なさらずに! 玄ちゃんは何か一品奢ってくれるだけでいいからさ」

「ホッ…… 安心した」

「むむッ! 私が玄ちゃんの予算オーバーするまで頼むと思ってたでしょ?」

「そりゃ前にお前の食う量見てればな、それによくそんなお金持ってるよな?」

「あーお父さんがね、美子がひもじい思いをしないようになんでも食べたい物食べなさいって多めにお小遣いくれるの、参ったなぁなんて」



ありえる、あの父さんなら大いにありえる。 こいつに対して過保護過ぎんだろが。



美子が選んだ物をひとつ奢り俺も適当なセットを注文した、もうお金ないわ。



「いただきまーす! 玄ちゃんも遠慮せずどうぞ」

「誰が遠慮するかよ」



美子の頼んだ物を見ると相変わらず多い。 ハンバーガー2つにポテトにコーヒーにナゲット、チョコパイ、シャカチキ、ツイスト…… 信じらんねぇ、これ全部食う気かよ?



「ん? 何?」

「お前だけひとりパーティ状態だなって思って」

「ふあッ! 私とした事が…… はい!」



美子は慌ててナゲットを俺に差し出した。 



「ひとつあげる! 奢ってくれてありがと!」

「ひとつ…… いや、こちらこそ」



そうか、これでも大盤振る舞いなんだな。 



「玄ちゃんのハンバーガーも美味しそうだね、ひと口頂戴? 私はソフトクリーム溶けちゃうから先にこっち食べちゃうから私が頼んだ新作のハンバーガーもひと口味見していーよ」



さらりと言うが…… 美子は俺からまだ開けたばかりのハンバーガーを取るとパクッと食べた。 ああッ! と思ったがひと口がデカい、またも3分の1持ってかれたぞ。



「んんーッ、おいひぃー」



何も感じでいないのだろうか? それとも俺が変に考え過ぎているだけなのだろうか? 美子がかじったところを見ていると……



「ヤバッ、もしかして食べ過ぎだとか思ってる!?」

「いや…… 食べ過ぎって思うところはお前のその並べられたやつ見てて思うとこだろ?」

「へ? だ、大丈夫! この後はもう食べないからッ! あ……」



美子は俺が見つめるハンバーガーを見てようやく察したのか顔を下げて小さくもぐもぐし始めた。



「ごめん、琴音達と居るノリでつい……」

「だと思ったよ」

「い、嫌だよね? 私の食べ掛けなんて、ちょっと待ってて! 同じの頼んでくる」



美子は椅子から立ち上がってレジに行こうとした。



「いいや」

「え?」

「もったいないだろ? これはこれで食べるからいいよ」



そう言うと美子は「エヘッ」と笑って椅子に座った。 



まぁ美子がそんな気だったら俺がいちいちなんか意識するのもバカらしいし何より恥ずかしくなってくるしな。



「それにしても食べ過ぎだよな」

「琴音と葎花にも言われる、でも逆にそれだけで足りるのっても思うけど」

「お前くらい食べる女の子初めて見たよ、女の子と飯食いに行くなんて事もあんまりないけど」

「んふふーッ、じゃあこれからいっぱい来ようよ?」

「お前と?」

「もっちろん!」


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